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可愛いお客さん
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「客」
由緒正しき我が社の神である白龍様は、いつものごとく言葉少なに要件を告げた。しかし、客とは珍しい。
この社は普段は結界が張ってある。よほどこの白龍様の気が向かない限り見つける事さえ困難な筈なのに……お気に入りの氏子にでも何かあったのだろうか。
手早く準備し屋敷から出てみれば、社の前には見た事のない若者が所在無げに立っていた。
これは珍しい。一見さんを招き入れるとは。
「坂下の……聡の縁だ。面白いものも連れておるでな」
私の驚きを察したのか、白龍様は端的に理由を述べてくれる。なるほど、古くからの氏子である坂下家の縁なら分からないでもない。それに確かに、愛らしい仔狐を肩にちょこんと乗っけているし。
それだけ見るとほのぼのとした風情だが、彼の顔色は心配になるほど青白く、酷いクマができている。そして仔狐もしょんぼりとうなだれて、ものすごく悲しそうだ。
私は、彼を拝殿へと招き入れ、腹を据えて事情を聞き出す事にした。
「……成る程、二週間ほど前から」
「はい……それまでも毎日夜中の二時に目が覚めてて、ヤな感じだなぁとは思ってたんですけど、この二週間は特に酷くて……獣の唸り声とかするし」
彼の説明に、彼の肩の仔狐はいよいよ淋しそうに項垂れて、力なく伏せてしまった。ふさふさのしっぽに顔をうずめ、いかにも哀れだ。
「それで貴方は、その仔狐に祟られたと?」
「……タイミング的にそうかなぁと。夜眠れないのが結構こたえるんですけど、なんとか出来ませんか?」
彼がそう言った途端、仔狐が弾かれたように立ち上がった。猛烈な勢いでギャンギャンと吠えたてているが、申し訳ない事に私には何を訴えたいのかまでは把握できない。
「誤解だと喚いている」
煩そうに、白龍様が呟いた。
さすが神様、白龍様には仔狐の言葉も理解できるらしい。
「この若造の部屋に悪しきモノがおるらしい。この野狐は若造を守っているのだと主張しておるが」
おやおや、恩返しのつもりだったのに、怖がらせてしまったわけだね。それはさぞ切なかろう。思わず苦笑してしまった。
「その仔狐を祓いに来たんですか?」
きけば、彼は眠れさえすれば問題ないと言う。
こんなに白い顔で、巨大なクマを作っているわりに随分と鷹揚なものだ。仔狐もすがるように彼の肩から伸びあがって、彼の頬に一生懸命スリスリしている。
なんとも頬笑ましい。
「良かった、兎に角祓って欲しい、の一点張りじゃなくて」
思わず仔狐の頭を撫でた。
あ、触れないのか。まだまだ霊力も弱いヒヨッコ狐霊、彼の傍においても霊的な影響は与えられないだろう。
彼も今はただただ唸り声が聞こえているから怖がっているだけだ。まずはこの小さなヒヨッコ仔狐ちゃんのためにも、誤解をといてあげないとね。
なぜかさらに顔を白くした彼に、軽く真実を述べる。
「確かに可愛い仔狐ちゃんがいますね。ただこの子、どうやら貴方を守っているつもりのようですよ」
彼は、驚愕に目を見開いた。
由緒正しき我が社の神である白龍様は、いつものごとく言葉少なに要件を告げた。しかし、客とは珍しい。
この社は普段は結界が張ってある。よほどこの白龍様の気が向かない限り見つける事さえ困難な筈なのに……お気に入りの氏子にでも何かあったのだろうか。
手早く準備し屋敷から出てみれば、社の前には見た事のない若者が所在無げに立っていた。
これは珍しい。一見さんを招き入れるとは。
「坂下の……聡の縁だ。面白いものも連れておるでな」
私の驚きを察したのか、白龍様は端的に理由を述べてくれる。なるほど、古くからの氏子である坂下家の縁なら分からないでもない。それに確かに、愛らしい仔狐を肩にちょこんと乗っけているし。
それだけ見るとほのぼのとした風情だが、彼の顔色は心配になるほど青白く、酷いクマができている。そして仔狐もしょんぼりとうなだれて、ものすごく悲しそうだ。
私は、彼を拝殿へと招き入れ、腹を据えて事情を聞き出す事にした。
「……成る程、二週間ほど前から」
「はい……それまでも毎日夜中の二時に目が覚めてて、ヤな感じだなぁとは思ってたんですけど、この二週間は特に酷くて……獣の唸り声とかするし」
彼の説明に、彼の肩の仔狐はいよいよ淋しそうに項垂れて、力なく伏せてしまった。ふさふさのしっぽに顔をうずめ、いかにも哀れだ。
「それで貴方は、その仔狐に祟られたと?」
「……タイミング的にそうかなぁと。夜眠れないのが結構こたえるんですけど、なんとか出来ませんか?」
彼がそう言った途端、仔狐が弾かれたように立ち上がった。猛烈な勢いでギャンギャンと吠えたてているが、申し訳ない事に私には何を訴えたいのかまでは把握できない。
「誤解だと喚いている」
煩そうに、白龍様が呟いた。
さすが神様、白龍様には仔狐の言葉も理解できるらしい。
「この若造の部屋に悪しきモノがおるらしい。この野狐は若造を守っているのだと主張しておるが」
おやおや、恩返しのつもりだったのに、怖がらせてしまったわけだね。それはさぞ切なかろう。思わず苦笑してしまった。
「その仔狐を祓いに来たんですか?」
きけば、彼は眠れさえすれば問題ないと言う。
こんなに白い顔で、巨大なクマを作っているわりに随分と鷹揚なものだ。仔狐もすがるように彼の肩から伸びあがって、彼の頬に一生懸命スリスリしている。
なんとも頬笑ましい。
「良かった、兎に角祓って欲しい、の一点張りじゃなくて」
思わず仔狐の頭を撫でた。
あ、触れないのか。まだまだ霊力も弱いヒヨッコ狐霊、彼の傍においても霊的な影響は与えられないだろう。
彼も今はただただ唸り声が聞こえているから怖がっているだけだ。まずはこの小さなヒヨッコ仔狐ちゃんのためにも、誤解をといてあげないとね。
なぜかさらに顔を白くした彼に、軽く真実を述べる。
「確かに可愛い仔狐ちゃんがいますね。ただこの子、どうやら貴方を守っているつもりのようですよ」
彼は、驚愕に目を見開いた。
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