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白龍様の目論見
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おやおや、うちの白龍様は随分とこの可愛い仔狐をお気に召したようだ。
白龍の姿のまま話すのは億劫らしく、いつも最低限の言葉しか発しない白龍様が懇切丁寧に仔狐ちゃんに説明しているのを、吹き出したいのを必死でこらえながら聞いていた。
「……野の狐、という意味だ。まだ狐霊と呼ぶのも憚られるほど霊力も弱いでな」
「ちなみに名はあるのか?」
「ふむ、その様子では名はもはや失くしたのだな」
仔狐ちゃんの返事は私には分からないものの、白龍様の言葉だけでなんとか話の内容は理解できる。本当に珍しい。
それにしても、二週間で名も忘れてしまうほど浄化が進んでしまうとは、純粋というか何というか。
「体を失い霊となれば、個であった頃の記憶は徐々に失われるものだ。そうして自然に還るが理よ。お前ほど弱い狐霊では完全に個が失われるのもそう遠い事ではあるまい」
あんな小さな子に、随分と酷な事を告げている、可哀相に……と思ったら、どうやら白龍様には別な意図があったようだ。
「そうだ。強くなりたいか」
「ふむ、ではあの若造の部屋に巣食う悪しきモノは、お前が見事祓って見せよ。幸いアレはさほど力を増していない、お前ほど弱い狐霊でも時間をかければ祓えるであろう」
なんとこんなに小さくか弱い狐霊に、悪霊退治をさせようというのか。個であった記憶はもちろん、そう遠くない未来に存在すら消える筈だったこの仔狐が長らえ、況してや悪霊を祓う力を得るには相応のサポートが要る筈だ。
そんな事は分かっていないだろう仔狐ちゃんは、勇ましく吠えた。これは確実に「やるぞ!」的答えだろう。なにしろ耳もしっぽも勇ましく立って、瞳もヤル気に充ち溢れている。
ああ、白龍様が重々しく、けれど嬉しさを隠しきれない様子で首肯いた。きっと仔狐ちゃんは満足いく答えを出したのだろう。
「良かろう。……斎、善きにはからえ」
重々しく言ったけど、まさか丸投げですか。
やること結構ありますよ?と思いつつ、仕方がないのでとりあえず目の前の若者……雅人君に事情を説明する事にした。元々は彼が持ち込んできた問題だし、これからあの仔狐ちゃんが成長したらどのみち知らなかった、では済まされないのだ。
「貴方の部屋、元々悪霊が居たようですね」
まずはショッキングなカミングアウトで先制パンチ。唖然とした隙をついて必要な説明を済ませていく。許せ若者、説明しないとならない事が山ほどあるんだ。
端折れる会話は端折らないとお互い疲れるだろうからね。ああ、でも一番の心配事だけは早目に払拭しておかないといけないか。
「そうですね、夜中に暴れる音が聞こえると眠れないでしょうから、音は遮断しておきます」
「あ、お願いします」
思わずお礼を言ったものの、悪霊を祓うと言われない事に若干不安そうな顔をみせている雅人君。悪いね、白龍様が祓えば一瞬なんだろうが、どうやらこの仔狐ちゃんを鍛えたいようなんだよ。
白龍様がそう判断したからには悪霊といってもまだそう力は増していないもののようだ、今しばらく我慢して欲しい。そのかわり、君を守る事になる仔狐ちゃんを君には見えるように可視化してあげよう。
可視化の印を結ぶと同時に、雅人君の肩からヒラリと飛び降りた仔狐ちゃんは、まるで忠犬のように彼の目の前でお行儀よくお座りした。
いや、可愛いものだね。
「貴方にとても感謝しているようです。貴方を全力で守ると息巻いていますからね、連れて帰ってあげてください」
その愛らしい姿に目尻を下げた雅人君を確認してから仔狐ちゃんを託す。驚きすぎて「ペット不可」とかゴニョゴニョ言ってはいたけれど、元々事故にあった仔狐を身銭を切って助けようとしたくらいだ、きっと可愛がってくれるだろう。
「仔狐ちゃんは貴方を守れて満足、貴方は眠れて満足、ですね」
笑って言えば、雅人君はまたも曖昧に首肯いた。
素直で何よりだけど、悪い人に騙されないかちょっと心配だよ、雅人君。
白龍の姿のまま話すのは億劫らしく、いつも最低限の言葉しか発しない白龍様が懇切丁寧に仔狐ちゃんに説明しているのを、吹き出したいのを必死でこらえながら聞いていた。
「……野の狐、という意味だ。まだ狐霊と呼ぶのも憚られるほど霊力も弱いでな」
「ちなみに名はあるのか?」
「ふむ、その様子では名はもはや失くしたのだな」
仔狐ちゃんの返事は私には分からないものの、白龍様の言葉だけでなんとか話の内容は理解できる。本当に珍しい。
それにしても、二週間で名も忘れてしまうほど浄化が進んでしまうとは、純粋というか何というか。
「体を失い霊となれば、個であった頃の記憶は徐々に失われるものだ。そうして自然に還るが理よ。お前ほど弱い狐霊では完全に個が失われるのもそう遠い事ではあるまい」
あんな小さな子に、随分と酷な事を告げている、可哀相に……と思ったら、どうやら白龍様には別な意図があったようだ。
「そうだ。強くなりたいか」
「ふむ、ではあの若造の部屋に巣食う悪しきモノは、お前が見事祓って見せよ。幸いアレはさほど力を増していない、お前ほど弱い狐霊でも時間をかければ祓えるであろう」
なんとこんなに小さくか弱い狐霊に、悪霊退治をさせようというのか。個であった記憶はもちろん、そう遠くない未来に存在すら消える筈だったこの仔狐が長らえ、況してや悪霊を祓う力を得るには相応のサポートが要る筈だ。
そんな事は分かっていないだろう仔狐ちゃんは、勇ましく吠えた。これは確実に「やるぞ!」的答えだろう。なにしろ耳もしっぽも勇ましく立って、瞳もヤル気に充ち溢れている。
ああ、白龍様が重々しく、けれど嬉しさを隠しきれない様子で首肯いた。きっと仔狐ちゃんは満足いく答えを出したのだろう。
「良かろう。……斎、善きにはからえ」
重々しく言ったけど、まさか丸投げですか。
やること結構ありますよ?と思いつつ、仕方がないのでとりあえず目の前の若者……雅人君に事情を説明する事にした。元々は彼が持ち込んできた問題だし、これからあの仔狐ちゃんが成長したらどのみち知らなかった、では済まされないのだ。
「貴方の部屋、元々悪霊が居たようですね」
まずはショッキングなカミングアウトで先制パンチ。唖然とした隙をついて必要な説明を済ませていく。許せ若者、説明しないとならない事が山ほどあるんだ。
端折れる会話は端折らないとお互い疲れるだろうからね。ああ、でも一番の心配事だけは早目に払拭しておかないといけないか。
「そうですね、夜中に暴れる音が聞こえると眠れないでしょうから、音は遮断しておきます」
「あ、お願いします」
思わずお礼を言ったものの、悪霊を祓うと言われない事に若干不安そうな顔をみせている雅人君。悪いね、白龍様が祓えば一瞬なんだろうが、どうやらこの仔狐ちゃんを鍛えたいようなんだよ。
白龍様がそう判断したからには悪霊といってもまだそう力は増していないもののようだ、今しばらく我慢して欲しい。そのかわり、君を守る事になる仔狐ちゃんを君には見えるように可視化してあげよう。
可視化の印を結ぶと同時に、雅人君の肩からヒラリと飛び降りた仔狐ちゃんは、まるで忠犬のように彼の目の前でお行儀よくお座りした。
いや、可愛いものだね。
「貴方にとても感謝しているようです。貴方を全力で守ると息巻いていますからね、連れて帰ってあげてください」
その愛らしい姿に目尻を下げた雅人君を確認してから仔狐ちゃんを託す。驚きすぎて「ペット不可」とかゴニョゴニョ言ってはいたけれど、元々事故にあった仔狐を身銭を切って助けようとしたくらいだ、きっと可愛がってくれるだろう。
「仔狐ちゃんは貴方を守れて満足、貴方は眠れて満足、ですね」
笑って言えば、雅人君はまたも曖昧に首肯いた。
素直で何よりだけど、悪い人に騙されないかちょっと心配だよ、雅人君。
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