仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

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平和な日常

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それからの数日間は俺にとって、実に気楽なものだった。

俺ってそういや一回寝るとなかなか起きないタイプだったっけ……って事を思い出すくらいによく寝れる。二日も寝倒したら目の下のクマなんかあっというまに消えてなくなったし、そうなってくるとメシも旨いし酒も旨い。大学の講義にもまあ身が入るようになった。

うん、めでたしめでたし、だな。

ありがとう、さくら!

ありがとう、神主さん!


「よっ! 雅人!」


今日は誰か誘ってなけなしの金をはたいてでも、ちょっと呑みに行っちゃおうかな~、とか浮かれていた俺に声をかけてくれたのは、あの時ありがたい白龍神社を教えてくれた聡だった。


「おっ、顔色良くなったじゃん!」

「聡! マジでお前のおかげだよ!」


俺がこんなに浮かれていられるのも、元はと言えば聡があの神社を教えてくれたおかげだ。よし、お礼に今日は俺のオゴリで呑み明かそう!


「は? だってお前、今月金ねぇだろ」


全財産をはたいてでも、お礼の気持ちを表そうと思ったんだが、身も蓋もない言葉で一蹴された。確かに動物病院代と神社への謝礼で、元々うすっぺらい俺の財布は極限ダイエット中ではある。


「でもさ、マジで助かったんだって」

「あーわかったわかった、俺も呑みてぇしさ。そんじゃビールとツマミ買ってお前ん家で家飲みでどうよ」

安あがりっしょ、と笑う聡に頭があがらない。あの神社の事やさくらの事も、聡になら話せる気がするし、そう考えるとむしろ本当に家飲みの方がいいのかもな。

いい友達を持ったなぁ……と感謝しつつ、二人して家の近くのディスカウントストアでビール……に見せかけた発泡酒をしこたま買って帰路についた。


「いやマジであの神社すげぇよ!」

「だろー?俺ん家はずーっと昔からあの神社の氏子?らしくてさ。なんか変な事あったらあの神社に相談する事になってんだ」

「あー、あの神主さんなんかすげぇもんな、仔狐見えるようにしてくれるって言われた時にゃ怪しい人かと思ったけど、マジで見えるようになるしさ」

「うっそマジで⁉」

「マジマジ、そこにちょこんってお座りしてるぜ?」

「あの神主さん、そんな事まで出来んの⁉」


大袈裟に驚いてみせるノリのいい聡に苦笑しつつ、気持ちよく発泡酒をあおった。毎日普通に寝れるだけでこんなにも楽しいって初めて知ったよ。

もはや憂いのなくなった居心地のいい部屋で、俺達は潰れるまで呑みまくり、どちらともなく撃沈した。





「起きろって‼」

ガツッとイヤな音がして、激痛が走った。

「痛ってぇ……」

なんなんだいきなり。

「お前……殴ったか蹴ったかしただろ」

「おめーが起きねぇからだ!」


だからって……暴力……反対……


「あほー‼ 寝るな!」


がくがくと揺さぶられる。なんなんだよ一体。

ちょっとだけ意識がはっきりしてきてよく見たら、聡は真っ青な上に涙目だった。


「あれ? どしたの?」

「どーしたもこーしたもねぇよ! 獣の唸り声、映画館レベルの大迫力サウンドで聞こえてんじゃねぇかよ!」


………………え?


「全力で暴れてる音するし! 仔狐って知ってても怖ぇよ!」

「え、嘘。暴れてる?」

「俺達の周り、走りまわってるだろーが!」

「え? 嘘、マジで?」


あ、本当だ。さくらメッチャ大運動会中だわ。


「……は? え? どういう事?」


俺達は顔を見合わせた。あれ? どうなってるんですかね、神主さん?
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