仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

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だって、怖がらせるつもりじゃなかったの

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「そんなに落ちこまないで」


なぐさめるような声に顔をあげたら、カンヌシさんがよしよしと頭を撫でてくれた。それでもあたしの気持ちは、そう簡単には幸せにならない。

……だって。

怖がらせるつもりじゃなかったの。

おせっかい聡のおかげでこのジンジャに来る事ができて、あたしは消えなくてすんだしママの事だって覚えていられる。雅人おにーさんもたくさん眠れるようになったし、あたしが見えるようになったからか、いっぱい撫でて遊んでくれるようになったんだもん。

ありがとう、って気持ちがとってもたくさんあったから、あたし、おせっかい聡に会えた時たくさんスリスリしたし、ビシッと臥せだって決めてみせた。

……見えなかったとは思うけど。

それなのに。

ゆうべ、雅人おにーさんもおせっかい聡も、纏めてあたしが守るんだ! ってせっかく気合いを入れたのに、気がついたら、おせっかい聡はブルブル震えてるし、雅人おにーさんは困ったみたいに笑ってた。

あたし、また、やらかしちゃったんだ。

悲しくて悲しくて、雅人おにーさんが優しく撫でてくれたって元気が出なかったくらいなんだもん。


「悪かったね、私がもっと違う処置をしておけば良かったね」


カンヌシさんが言ったその時。


「うおおっ⁉」


いきなり、おせっかい聡が大っきな声を出した。

あたし、びっくりして飛びのいちゃったけど、聡もびっくりしたみたいにあっちに飛びのいたからおあいこだよね。


「な、な、な、何これっ⁉」

「仔狐のさくらちゃん。君をゆうべ恐怖に陥れたかも知れないけど、視えれば可愛いでしょう?」

「そ、そーいうのはっ! やる前に言って下さいよ!」

「ごめんごめん」


絶体分かってねぇ! って聡はまたプリプリ怒ってる。


あたしは、おずおずと聡に近付いた。あたしの事が見えるようになったんだったら、やっぱりちゃんと謝りたいもん。

ねぇ、まだ昨日の事怒ってる?

聡の足元で見上げてみるけど、聡はカンヌシさんに文句をいうのに大忙しで、あたしの方なんか見ちゃいない。

スリスリしても、いいかなぁ。

雅人おにーさんをチラッと見たら、うんうんって首肯いてくれた。頑張れって言われてるみたいで、心がほわっとあったかくなる。

うん、あたし頑張るね。聡にちゃんと、謝るんだ。


思い切って、聡の足にスリスリした。

じーんずとかいう布は、雅人おにーさんのと一緒でやっぱりちょっとごわごわする。

聡は、ちょっとだけビクッとして、ゆっくりとあたしを見下ろした。


「………………」


目が合ったから、ごめんなさいの気持ちを込めて、もう一回スリスリする。あのね、本当に怖がらせるつもりなんてなかったの。

ごめんね?


「うっわ! 何これ、可愛い!」

「だろー!」

「お手! マジ? 狐ってお手とか出来るの⁉」

「うちのさくらは賢いからな!」


さっきまでプリプリしてたのが嘘みたいに、聡は機嫌がよくなっちゃった。あたしに臥せとかさせてみては雅人おにーさんと盛りあがってる。……もう、怒ってないって事だよね?

良かったぁ。


「さくら」


ホッとした途端に、綺麗な白龍が威厳たっぷりにあたしを呼ぶ。

なぁに? もしかしてお小言?


「少しは力が増したようだ。我の言いつけを守り、よく精進しておる」

「!」


ほ……褒められた⁉

うん、あたし、毎日毎日、雅人おにーさんを守るために本当はスッゴク頑張ったの。あの黒いイヤなヤツだって、なんだか少し小さくなったみたいなの。

分かって貰えるなんて、思わなかったよ……!

ふわっと気持ちが浮き上がったのは一瞬だけで、白龍はそのあとすぐに、背なかがぞぉ……っと、寒くなるような事を言ったの。


「だが気をつけるがよい。敵も怒りを増しておる、これまでにない抵抗を見せるやも知れぬ。お主が負ければ雅人に災厄があると心得よ」
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