仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

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パワーアップ!

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ブワッ! って、体中にバチバチが走ったみたいだった。

ママがお外から帰ってきた時に時々なる、バチバチっとかビリビリってするアレの、ずっとずっとスゴいヤツよ?

生気だか霊力だかわかんないけど、あの黒いヤツが雅人おにーさんから何か力を吸いとってるんだってことは、あたしすぐに分かったの。だからあたし、思いっきりアイツの腕に噛みついてやった。アイツ、ものすごい悲鳴をあげて雅人おにーさんから腕を離したの。

でも、許すもんか!

こんなに真っ青で、ヘロヘロになった雅人おにーさんなんか、あたし、初めて見たんだから!よくもこんなズルいマネ、してくれたわね!


「さ……くら……」


弱々しい、今にも死んじゃいそうな小さな声で、雅人おにーさんがあたしを呼ぶ。ごめんね、ごめんね、雅人おにーさん。

あたしがついていながら雅人おにーさんを酷い目に合わせてしまったのが悔しくて悔しくて、あたしはその悔しさをぶつけるように、黒いヤツの腕に改めてかぶりついた。

でもあたしの顎はちっちゃいし、牙だってまだママみたいに立派じゃない。悔しいことに、あたし程度が噛みついたところで致命傷になるようなダメージなんか、きっとムリだと思うの。

だからできるだけ深く深く牙をたてて、少しでもアイツに大きなダメージが与えられるように一心不乱に首を左右にふった。

でも。

いつもだったらそろそろ大人しくなる筈なのに、ヤツは全然弱ってくれない。もがいて、もがいて、あたしの牙の方が折れちゃいそう。暴れないでよ、顎が痛くなってきたじゃない。

最後のチャンスだと思って悪あがきしてるの? まさか……雅人おにーさんの力を吸って、パワーアップしたとか?

いやーな考えが浮かぶ。

のら犬みたいな品のないうなり声をあげて、ヤツがひときわ激しくのたうち始めた。

やめて、暴れないでったら!

もう……顎が……!

激しく暴れる黒いヤツのあまりの勢いに、弾きとばされるかと思った時だった。


「さくら……」


耳もとで雅人おにーさんの優しい声がしたと思ったら、全身があったかくなったの。雅人おにーさんが最初にあたしを抱っこしてくれた時みたいに、すっごくすっごくあったかい。

すっごくすっごく、幸せな気持ちになるあったかさ。

雅人おにーさんが、ギュッてしてくれてるんだ。そう思ったら、あたしの全身に闘志がみなぎってきた。

雅人おにーさん、あたし、絶対に守るから。

もし力を使い切ってあたしが消えちゃうとしても、雅人おにーさんだけは、絶対に守るからね。

決意して、震える顎にせいいっぱい力を入れたの。そしたら。

ブワッ!って。

体中にバチバチが走って、全身の毛が膨れ上がった。あったかい優しい力が一気に体の中に染み渡る。まるで、何日も食べてなくてペコペコのおなかに、あったかいごはんを入れた時みたい。

これって、雅人おにーさんの霊力だ。頭を撫でてくれる時に感じる優しい霊力……それがスゴい勢いであたしに流れ込んでくる。

その力は、あたしの中でどんどんどんどん大きくなって、体が三倍くらいになっちゃったんじゃないかと思ったの。そしたら、その膨れ上がった力が、ギュンっ!って牙からあの黒いヤツに向かってなだれこんだ。

パンっ!

小さな破裂したみたいな音が聞こえて。そうしたらあの黒いヤツ、あっけなく消えてしまった。

気配もカケラも残ってない。

これって、雅人おにーさんの力なの?
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