仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

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雅人おにーさんの事情説明

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「うわー、すげえマンガみたいに見事に転がったな」


目をまん丸にして、雅人おにーさんがつぶやく。

うん、なんか凄かったもんね。ゴロゴロゴロゴロって転がって、壁にドーンとあたって、「ぎゃふっ」って呻いた時はちょっと面白かった。楽しそうであたしもつい飛びかかりそうになっちゃったもん。


「いってぇ……」


頭を打っちゃったのか、さすりさすりしながら聡が立ち上がる。キョロキョロと辺りを見回して、なんだか小首を傾げた。


「ばあちゃん、なんも変わんねえけど」

「当たり前だろ、この家の中に霊がいるわけないじゃないか」

「わっちと百合香が守っているんだよ?そうおいそれとは悪しきモノは入っては来れないだろうねえ」


百合香おばあちゃんが胸を張れば、猫又ウメさんもお手手を舐めながら相槌を打つ。


「うっわ、うーちゃん、一人称『わっち』なの!?いつの時代よ!」

「な、なんだい……おかしいのかい?」


なんだかわあわあと煩い聡と猫又ウメさんの影で、百合香おばあちゃんがおいでおいでと手招きしている。雅人おにーさんと二人、おずおずと近づけば、百合香おばあちゃんはニッコリと笑ってくれた。


「聡は暫く興奮してるだろうから、とりあえずウメに任せて、あたしらは早速本題に入ろうかね」


聡がお祈りを受けた部屋の紙のドアを横に開けたら、お隣にはフカフカのクッションみたいなのがいくつも置かれた、気持ちのいいお部屋があった。聡おにーさんのお部屋とは全然違って、床も木じゃなくってちょっとフワッとするの。

なんだかゴロゴロって転がりたくなる感じ。ああ、そう。なんかこう、草の中に居る感じ。


「さ、お座り。聡の友達なんだってねえ、いつも世話になって悪いね、茶くらいは淹れてあげるよ」

「失礼します」


あたしはなんだかとっても癒される感じがするのに、雅人おにーさんは緊張しているみたい。いつもよりずっとかたい姿勢で、背中をピンと伸ばして座っていた。


「で?白龍様からは『修行させてやってくれ』としか聞いてなくてね、詳しくこれまでの経緯を話しちゃくれないか?」

「あ、はい!」


背中をますますピーン!と伸ばして、雅人おにーさんが一生懸命に説明する。あたしは何故か百合香おばあちゃんに背中をモフモフと撫でられながら、雅人おにーさんの優しい声を聞くともなく聞いていた。

あたし、雅人おにーさんの声、好きだなあ……そういえば最初に抱っこしてくれた時、血がいっぱい出て死にかけてるあたしに、一生懸命話しかけてくれたっけ。

あたし、その声を聞いてなんだかとっても安心したの。

あの時みたいにとっても気持ち良くなって、ついついウトウトしちゃった時だった。


「なるほどねえ、それでこのさくらちゃんともども、修行したいってわけだね?」

「はい」


名前を呼ばれてハッとした。

いや、寝てない!寝てないよ?
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