仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

文字の大きさ
41 / 96

霊気と瘴気

しおりを挟む
攻めあぐねてるっぽいさくらが足元でスリスリするから怖くなったのかと思って抱き上げたら、頭と尻尾をブンブン音がするくらい全力で振って否定された。

とすると。


「あ、霊気か!」


正解らしい。花が飛びそうなくらいパアッと嬉しそうなオーラが満ちる。耳も尻尾もピンっと立って可愛いんだよな、ホント。

おっと、なごんでる場合じゃなかった。あの黒髪の悪霊があの場所から動かないからいいようなものの、本来戦闘中に意思の疎通が今一つだったりすると命に係わるんだよな。

さくらの背中に手を当てて、霊気を送り込みながら考える。

合図を決めたほうがいいかもしれない。


「さくら、霊気がほしい時は尻尾を大きく振ってくれ。そしたら、遠くにいても必ず届ける」


実際、直接こうして手を当てて送り込んだほうが素早くより多く質の高い霊気を受け渡せるけれど、霊気を飛ばす修行だってやってきた。コントロールにだってそれなりの自信はあるんだ。

俺の意思を理解したらしいさくらは、俺をしっかりと見つめた後、身を翻して黒髪の悪霊に向かっていった。

さくらの体からは溢れそうなほどの眩い霊気が満ちている。小さな体が一回りも二回りも大きく見えて、急に頼もしく見えるから不思議なもんだ。

安心感を持って見守れば、さくらはひらりひらりとヤツの腕を躱しながら悪霊に近づいていく。

一番威力があるのは直接霊気を流し込む方法だ。でも今のさくらなら、若干の距離があっても十分に有効打になるような攻撃ができるだろう。

そう思って固唾をのんで見守っていた時だ。

さくらの口から、眩い光の塊が飛び出した。


「グギャァァァァッ!」


耳を覆いたくなるような金切り声と共に、腕が、黒髪が撒き散らされていく。

ボトボトボトッと嫌な音を立てて落ちた肉片や髪の束が、ジュウジュウと焼けるような音とにおいを撒き散らしながら蒸発し、あたりには嫌な気が充満した。

なんだこれは。

確かに本体のパワーは格段に落ちた。

でも、この蒸発した気が充満した空間は、異様なほど瘴気に満ちている。

さっきの女の人がふらふらしながらでも、この場を離れてくれていてよかった。こんな濃い瘴気にあたったら、たとえ健康な人でも吐き気やめまいを覚えるだろう、そんな濃い瘴気だった。

動かないから楽勝だろうと思っていたら、こんな隠し玉があったとは。

放っておくと周囲の良くない気や霊まで呼び寄せてしまいかねない。なんせそんな気は意外なほどどこにだってあって、似た性質のものは集まりやすいという特性があるからだ。


「雅人」


大丈夫、ウメさん。わかってるよ。

この瘴気を何とかするのは俺の仕事だって言いたいんだろう?

俺は、忍ばせていた経典を素早く取り出し、勾玉を握りしめる。

祝詞がよどみなく口から溢れ、自分の体の中の霊気が一気に高まっていくのを俺は感じていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...