仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

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あたし、どうしたらいいの?

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女の子が泣き出しちゃって、あたし、いよいよどうしたらいいのか分かんなくなっちゃった。

ウメさんはやっつけちゃえって言うし、雅人おにーさんは止めるし。

それに。

だってあの子、赤ちゃんみたいにちっちゃな猫を必死で抱きしめてるの。

赤ちゃん猫は白い毛が真っ赤になるくらい傷ついてて、ずっと両手でお空を掻きながら必死で泣いてる。

痛いの?

苦しいの?

寒くはない?

まるで……まるで、自分を見てるみたい。

だって、あたしもあんなだった。ぼろきれみたいになって、雅人おにーさんに抱っこされたままどこかに運ばれたんだもの。


「道に、白い仔猫がいたの」


女の子がぽろぽろと涙をこぼす。


「かわいいって思ったのに、くるまがはねちゃったの」


ああ、この女の子はきっと、雅人おにーさんと同じ。傷ついた仔猫を放ってはおけなかったんだ。


「血がたくさん出て、かわいそうで。だっこしてあげたくて走ったのに、何かがドーンってぶつかってきて……すごく、いたくて」


仔猫を抱き上げるために道路に飛び出しちゃったのかも知れない。見上げたら、雅人おにーさんまでとってもとっても痛そうな顔をしていた。

口元をきゅっと引き締めた雅人おにーさんは、一歩、一歩、ゆっくりと女の子に近づいていく。


「やっと抱っこできたのに、血がいっぱいでてチビちゃんの体がどんどん冷たくなるの」


うん、わかる。わかるよ。血がたくさん出たらね、寒くなるもの。あんなに寒かったらきっと、外から触れば冷たく感じるに決まってる。


「私、ちょっとでもチビちゃんをあったかくしてあげたくて」


通り過ぎる人からあったかさを貰ったんだと、女の子は言った。雅人おにーさんが小さく息を吐いて、悲しそうに目を閉じる。


「でも、チビちゃんがどんどん黒くなっちゃうの。苦しそうで……ねえ、どうしたらいいの?」


命と器を失ってしまったあたし達の言葉は、普通の人には聞こえない。どうしたらいいのかわからなくってきっとすごくすごく不安だっただろうに、目にも留めてもらえなかったこの女の子は、それでも仔猫をなんとかしようと頑張ったんだ。

この子のいう「あったかさ」はきっと生命力。

それを悪気無く奪っていくうちに、力は増すけれど、淀んでしまう。

だってこの仔猫の中身は「痛い」「悲しい」「どうして」「近寄らないで」って、そんな気持ちでいっぱいだもの。はねられて、痛くって苦しくって、憤りと疑問と逃げたい……他を寄せ付けない感情で溢れてる。

女の子が送り込む生命力は、仔猫の感情を受けてどんどん黒く育っていったんだろう。


あたしには、そんな仔猫の感情だってものすごく分かっちゃうんだ。
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