仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

文字の大きさ
63 / 96

応援したくなる二人

しおりを挟む
「ただ、その代わりにちょっとお使いを頼まれてほしいそうですが」


私がそう告げた途端、明らかに雅人くんの顔が強張る。きっと、とんでもない要求をされると心配しているのだろう。思わず笑ってしまった。


「大丈夫ですよ、そう警戒しなくても」


安心してもらえるように、できるだけ柔らかい笑みを浮かべて、私は自分の袂に手を入れる。指先にあたったお守りを取り出して、雅人くんに手渡した。お守りからは強烈な神気が漂っている。


「このお守りを、大分のとある神社まで持っていって欲しいそうです」

「それだけ?」

「ええ、それだけです。もちろんちゃんと旅費も出しますよ。ただ、目的地の神社に到着するまで、このお守りを肌身離さず持っていないとなりませんが」

「それは別に……小さいし」


ホッとしたように雅人くんが頷く。小さくてもこのお守りに込められた神気はとても強大だから、きっと道中、雅人くんを守ってくれるだろう。


「大学は大丈夫ですか?」

「一日、二日くらいなら別に。これまでそんなに休んでないし。なんなら土日でも行けるくらいですし」

「なら、良かった。あちらの神社の神気が少し落ちてきたようで、このお守りにこめられた神気をお届けするのがお仕事なんですよ」

「すげえ、神様っぽい。神様のおつかいで大分まで旅行って、なんかスゴイっすね」


ようやく雅人くんに笑顔が戻る。

確かに大分までだなんて、ちょっとした旅行だ。なんなら私が行きたいくらいだけれど、白龍様によると、雅人くんがこのお守りを身に着けて、その神社までいくことが重要なんだそうだ。

道中ずっと強大な神気を身にまとうことで、今は乱れている雅人君の力も整えられるうえ、これから雅人くんたちがむかうのは白龍様と稲荷を両方祀っている神社だ。

さくらちゃんの顔をつなぐにもちょうどいいらしい。


「でも俺、このとこずっと家にこもってばっかりだったから、嬉しいかも」


嬉しそうに破顔して、それから雅人くんはハッとしたように、自分の足の近くに丸まっているさくらちゃんを見る。


「さくらは、それでいいか?」


必ずさくらちゃんの意思も尊重しようとする雅人くんは、本当に優しい。

バッと立ち上がって、嬉しそうに雅人くんの周りを跳ね回り、嬉しいという気持ちを目いっぱいアピールするさくらちゃんも可愛いし。本当に応援したくなる二人だ。

だからこそ白龍様もいつになく、こうして頻繁に面倒を見てあげているのだろう。

すっかり行く気満々になったらしい二人に、私は念のため助言する。


「でも、百合香さんにはひとこと報告してから出発したほうがいいでしょうね」


あとで二人が百合香さんに怒られる羽目になったら、かわいそうですからね。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...