仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

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社へおいで

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朝も早くからすでにジリジリと照りつける太陽。アスファルトからの照り返しはまだ日中ほどは高まっていないけれど、それでも十分に暑い。

俺と聡は目的の神社に向かうため、そんなクソ厚い中を汗水垂らしてテクテクと歩いていた。

そして、さくらは俺たちの前をしっぽをピーンと伸ばしたまま、一分の隙もない警戒っぷりで歩いていく。宿を出てからずっとこの調子なんだけど疲れないのかな。


「どーしたんだ、さくらちゃん。なんかピリピリしてない?」

「うーん。昨日の夜、なんかヤバいのが来てたっぽいんだよな。だから警戒してるんじゃないか?」

「まさか悪霊っぽいヤツ?」

「多分。まぁ、さくらが追い払ってくれたみたいなんだけど」

「へー、まったく気が付かなかったなー」

「お前はイビキかいて気持ちよさそうに寝てたからな。でも俺もちゃんとは見てないんだ。白い布っぽいのがひらっと……」


そんな他愛もない話をしていた時だった。

急に、目の前を歩いていたさくらの足がぴたりと止まって、全身の毛が逆立った。


「さくら?」

「急に唸りだした! さくらちゃん、なんかヤバいの!?」


さくらが唸ると聡もビビる。きょろきょろを落ち着きなくあたりを見回した聡は、次の瞬間「あっ!」と小さく声を上げた。


「やぁ、やっぱりウチに用事があったんだねぇ」


軽やかな声と共に、白い衣がひらりと頭上を越していく。その人影は、俺たちの眼前に舞い降りると、怪しい笑みを浮かべたまま空中でふわふわと浮いていた。

浮いてる時点で絶対に普通の人間じゃない。

真っ白な肌に真っ白な髪、真っ白な狩衣みたいな服を着たその人は、目だけが真っ赤で異様な光を放っていた。


「めっちゃイケメンだけどなんか怖い!」


聡、そういうのは心の中で叫んでくれ。


「君もそこの野狐ちゃんも失礼だなぁ」


そう言いつつ、その白い人は目を三日月のようにして笑う。確かになんか雰囲気が怖い。いや、雰囲気が怖いっていうか、これって単純に。


「すごい霊力……」

「そりゃあねぇ、君たちより随分と長いこと生きてるし、修行もしてるもの」


思わずつぶやいた言葉に、すんなりと答えが返ってきた。さくらは俺の足元で警戒心を露わにしてるけど、この人からは特に敵意は感じない。さっき、「ウチに用事があるんだね」的なことを言ってたし、件の神社の関係者なんだろうか。


「あの、もしかして江代白龍稲荷神社の縁の方ですか?」

「そうそう。縁も縁さ、いやぁ楽しみだな。久しぶりの客人だ、うちのお館様が喜ぶよ」


さらっと流されたと思ったら、その白い人は嬉しそうに空中でくるくると宙返りを披露する。とてつもない美形なのに動きは意外と子供っぽいな、なんて思わず見とれていたら、白い人はびしっと上を指さした。


「頑張ってその石段登って、早く上の社においで。ご褒美にちゃんともてなしてあげるから」
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