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宣戦布告……?
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「うるせぇな。そう簡単に言えるかよ……」
「そんなでっかいナリして意気地がないな! 言っとくけど、僕は手加減しないからね」
「分かってる。手加減は無用だ」
「僕はちゃんと宣戦布告したからね。正々堂々、勝負だよ」
「のぞむところだ」
「あ、僕が言ってる正々堂々は、僕らしく戦うって意味だから騎士道とかよく分からないものは当てはめたりしないでよ」
「お前にそんなものは期待していない」
「今、僕の方が多分百歩くらいリードしてるから、せいぜい頑張ってね」
「フン、そう思ってるのはお前だけだ」
「ちなみに僕は短期決戦狙ってるから」
「……お前なぁ!」
目まぐるしい舌戦で、全然口を挟める隙間がない。とりあえず、宣戦布告と言うからには、二人が何か勝負しようとしているという事だけは理解した。
「レオニー!」
「!」
ルシャに突然声をかけられて思わず声が出なかった。だって今まで、完全に蚊帳の外だったんだ。
「……なんだ?」
とりあえず返事をしたら、ルシャがにっこり笑って言う。
「僕、頑張るから……レオニーも僕が困ってたら助けてね」
「? もちろん助けになれる事があれば言ってくれ。……だが、ルシャとダグラスの勝負だろう? 私が手を出したりしてもいいのか?」
「もちろん! レオニーの助けがなきゃ成り立たないよ」
ルシャは満面の笑顔のままそう言うけれど、大丈夫なんだろうか。ダグラスを見てみたら、ダグラスはなんだか今まで見たこともないような、もどかしそうな顔をしていた。
ううむ、腕っぷしでは間違いなくダグラスが圧勝だろうが、口げんかではルシャの方が断然優勢なようだ。
「勝負事で片方に加担するのも無粋だろうから、ダグラスも困った事があったら言ってくれ」
「……」
苦笑しつつダグラスにもそう声をかけたが、ダグラスはなんとも言えない微妙な表情をしたまま私をじっと見てくる。
「?」
何か言いたそうな顔をしているくせに、なかなか口を開かない。
いつもは歯切れ良く話す男なのに、今日のダグラスは本当にいつもの彼らしくない。結局は何も言葉にしないまま、ダグラスはフイと顔をそらし、ルシャをキッと睨んだ。
「お前、ちょっと来い」
ルシャに顎で向こうを指して、肩をいからせて足早に去って行ってしまう。不機嫌な声で、まるでダグラスじゃないみたいだ。
いつになく話しかけることができないような雰囲気に、私はその背中を見送るしか無かった。そんな私にルシャはにこっと笑って見せる。
「はいはい。じゃあレオニー、ちょっと行ってくるね」
「あ、ああ……」
はねるような足取りで、ルシャがダグラスの後を追う。短くなってしまった淡い若草色の髪が、軽く揺れるのが愛らしかった。
「そんなでっかいナリして意気地がないな! 言っとくけど、僕は手加減しないからね」
「分かってる。手加減は無用だ」
「僕はちゃんと宣戦布告したからね。正々堂々、勝負だよ」
「のぞむところだ」
「あ、僕が言ってる正々堂々は、僕らしく戦うって意味だから騎士道とかよく分からないものは当てはめたりしないでよ」
「お前にそんなものは期待していない」
「今、僕の方が多分百歩くらいリードしてるから、せいぜい頑張ってね」
「フン、そう思ってるのはお前だけだ」
「ちなみに僕は短期決戦狙ってるから」
「……お前なぁ!」
目まぐるしい舌戦で、全然口を挟める隙間がない。とりあえず、宣戦布告と言うからには、二人が何か勝負しようとしているという事だけは理解した。
「レオニー!」
「!」
ルシャに突然声をかけられて思わず声が出なかった。だって今まで、完全に蚊帳の外だったんだ。
「……なんだ?」
とりあえず返事をしたら、ルシャがにっこり笑って言う。
「僕、頑張るから……レオニーも僕が困ってたら助けてね」
「? もちろん助けになれる事があれば言ってくれ。……だが、ルシャとダグラスの勝負だろう? 私が手を出したりしてもいいのか?」
「もちろん! レオニーの助けがなきゃ成り立たないよ」
ルシャは満面の笑顔のままそう言うけれど、大丈夫なんだろうか。ダグラスを見てみたら、ダグラスはなんだか今まで見たこともないような、もどかしそうな顔をしていた。
ううむ、腕っぷしでは間違いなくダグラスが圧勝だろうが、口げんかではルシャの方が断然優勢なようだ。
「勝負事で片方に加担するのも無粋だろうから、ダグラスも困った事があったら言ってくれ」
「……」
苦笑しつつダグラスにもそう声をかけたが、ダグラスはなんとも言えない微妙な表情をしたまま私をじっと見てくる。
「?」
何か言いたそうな顔をしているくせに、なかなか口を開かない。
いつもは歯切れ良く話す男なのに、今日のダグラスは本当にいつもの彼らしくない。結局は何も言葉にしないまま、ダグラスはフイと顔をそらし、ルシャをキッと睨んだ。
「お前、ちょっと来い」
ルシャに顎で向こうを指して、肩をいからせて足早に去って行ってしまう。不機嫌な声で、まるでダグラスじゃないみたいだ。
いつになく話しかけることができないような雰囲気に、私はその背中を見送るしか無かった。そんな私にルシャはにこっと笑って見せる。
「はいはい。じゃあレオニー、ちょっと行ってくるね」
「あ、ああ……」
はねるような足取りで、ルシャがダグラスの後を追う。短くなってしまった淡い若草色の髪が、軽く揺れるのが愛らしかった。
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