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『可愛い』は進化する
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「な……な……」
ばかみたいに口をぽかんと開けて、殿下が声にならない声をあげる。
私も同じくらい驚愕していた。
「一時的に肉体の時を早める『森の秘薬』を使ってみたんですけど……ご覧の通り僕、結構身長伸びるみたいなんで、そのうちレオニーともいい感じの身長差になれそうですよ」
殿下にそう言いながらにっこり笑ったルシャが、今度は私を見下ろしてくる。
可愛い、可愛いと思って見てきた淡い若草色の髪も、神秘的な薄いローズの瞳も、ただただ格好良くて私は声を出す事も出来なかった。
可愛いは、成長したら『格好良い』に進化するんだなぁ……なんて、思考が鈍った頭でぼんやりと考える。
「レオニー、待たせてごめんね」
「あ、ああ」
ハッとして周りを見回したら、男性陣は殿下みたいにポカンと口を開けていて、女性陣はポウッと頬を染めてルシャに見惚れていた。今までは可愛らしいものを見る微笑ましい瞳だったのに、今では惚れ惚れとした瞳なのだから面白い。
うん、分かる。格好良いものな。
ルシャはこれからモテるだろうなぁ、と思いつつ、もう一度殿下に深々と頭を下げてから、差し出されたルシャの腕をとってその場を離れる。
すっかり度肝を抜かれてしまったらしい殿下の元から首尾良く離れることができた私とルシャは、そのまま一気に距離をとった。
私達が近づくと頬を染めたレディ達がキャア、と可愛らしい声をあげて通してくれる。
そこへ、後ろから声がかかった。
「レオニー! ルシャ君!」
振り返ると、珍しく満面の笑顔なお父様だ。
「いや、痛快だったな。まさかあんな方法であの場を切り抜けるとは思わなかったぞ」
「えへへ、色々仕込んできて正解でした。レオニーから色々聞いてたんで、もしかしたらちょっかいだされるのかなぁとは思ってたんで」
お父様とルシャ、いつの間にこんなに打ち解けたんだ?
不思議に思っていたら、ルシャが私の困惑顔に気がついてくれたようだった。
「実はあれから納品とかで何回か話したんだよ」
「そ、そうか」
「しかし殿下達にも困ったものだ」
お父様が苦々しげに呟く。
「このような場であのような態度をとるとは、さすがに看過できんと思っていたが……事を荒立てずにすんで良かった。陛下からも殿下のあの態度については内々に策を講じるとお声がけいただいたから、今後はこういうことも少なくなるだろうが……」
「陛下が?」
「殿下があのような……非がない者に搦むような態度では、正常な感性がある者ほど離れていくからな」
ばかみたいに口をぽかんと開けて、殿下が声にならない声をあげる。
私も同じくらい驚愕していた。
「一時的に肉体の時を早める『森の秘薬』を使ってみたんですけど……ご覧の通り僕、結構身長伸びるみたいなんで、そのうちレオニーともいい感じの身長差になれそうですよ」
殿下にそう言いながらにっこり笑ったルシャが、今度は私を見下ろしてくる。
可愛い、可愛いと思って見てきた淡い若草色の髪も、神秘的な薄いローズの瞳も、ただただ格好良くて私は声を出す事も出来なかった。
可愛いは、成長したら『格好良い』に進化するんだなぁ……なんて、思考が鈍った頭でぼんやりと考える。
「レオニー、待たせてごめんね」
「あ、ああ」
ハッとして周りを見回したら、男性陣は殿下みたいにポカンと口を開けていて、女性陣はポウッと頬を染めてルシャに見惚れていた。今までは可愛らしいものを見る微笑ましい瞳だったのに、今では惚れ惚れとした瞳なのだから面白い。
うん、分かる。格好良いものな。
ルシャはこれからモテるだろうなぁ、と思いつつ、もう一度殿下に深々と頭を下げてから、差し出されたルシャの腕をとってその場を離れる。
すっかり度肝を抜かれてしまったらしい殿下の元から首尾良く離れることができた私とルシャは、そのまま一気に距離をとった。
私達が近づくと頬を染めたレディ達がキャア、と可愛らしい声をあげて通してくれる。
そこへ、後ろから声がかかった。
「レオニー! ルシャ君!」
振り返ると、珍しく満面の笑顔なお父様だ。
「いや、痛快だったな。まさかあんな方法であの場を切り抜けるとは思わなかったぞ」
「えへへ、色々仕込んできて正解でした。レオニーから色々聞いてたんで、もしかしたらちょっかいだされるのかなぁとは思ってたんで」
お父様とルシャ、いつの間にこんなに打ち解けたんだ?
不思議に思っていたら、ルシャが私の困惑顔に気がついてくれたようだった。
「実はあれから納品とかで何回か話したんだよ」
「そ、そうか」
「しかし殿下達にも困ったものだ」
お父様が苦々しげに呟く。
「このような場であのような態度をとるとは、さすがに看過できんと思っていたが……事を荒立てずにすんで良かった。陛下からも殿下のあの態度については内々に策を講じるとお声がけいただいたから、今後はこういうことも少なくなるだろうが……」
「陛下が?」
「殿下があのような……非がない者に搦むような態度では、正常な感性がある者ほど離れていくからな」
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