麗しの男装騎士様は、婚約破棄でどう変わる?

真弓りの

文字の大きさ
68 / 73

『可愛い』は進化する

しおりを挟む
「な……な……」

ばかみたいに口をぽかんと開けて、殿下が声にならない声をあげる。

私も同じくらい驚愕していた。

「一時的に肉体の時を早める『森の秘薬』を使ってみたんですけど……ご覧の通り僕、結構身長伸びるみたいなんで、そのうちレオニーともいい感じの身長差になれそうですよ」

殿下にそう言いながらにっこり笑ったルシャが、今度は私を見下ろしてくる。

可愛い、可愛いと思って見てきた淡い若草色の髪も、神秘的な薄いローズの瞳も、ただただ格好良くて私は声を出す事も出来なかった。

可愛いは、成長したら『格好良い』に進化するんだなぁ……なんて、思考が鈍った頭でぼんやりと考える。

「レオニー、待たせてごめんね」

「あ、ああ」

ハッとして周りを見回したら、男性陣は殿下みたいにポカンと口を開けていて、女性陣はポウッと頬を染めてルシャに見惚れていた。今までは可愛らしいものを見る微笑ましい瞳だったのに、今では惚れ惚れとした瞳なのだから面白い。

うん、分かる。格好良いものな。

ルシャはこれからモテるだろうなぁ、と思いつつ、もう一度殿下に深々と頭を下げてから、差し出されたルシャの腕をとってその場を離れる。

すっかり度肝を抜かれてしまったらしい殿下の元から首尾良く離れることができた私とルシャは、そのまま一気に距離をとった。

私達が近づくと頬を染めたレディ達がキャア、と可愛らしい声をあげて通してくれる。

そこへ、後ろから声がかかった。

「レオニー! ルシャ君!」

振り返ると、珍しく満面の笑顔なお父様だ。

「いや、痛快だったな。まさかあんな方法であの場を切り抜けるとは思わなかったぞ」

「えへへ、色々仕込んできて正解でした。レオニーから色々聞いてたんで、もしかしたらちょっかいだされるのかなぁとは思ってたんで」

お父様とルシャ、いつの間にこんなに打ち解けたんだ?

不思議に思っていたら、ルシャが私の困惑顔に気がついてくれたようだった。

「実はあれから納品とかで何回か話したんだよ」

「そ、そうか」

「しかし殿下達にも困ったものだ」

お父様が苦々しげに呟く。

「このような場であのような態度をとるとは、さすがに看過できんと思っていたが……事を荒立てずにすんで良かった。陛下からも殿下のあの態度については内々に策を講じるとお声がけいただいたから、今後はこういうことも少なくなるだろうが……」

「陛下が?」

「殿下があのような……非がない者に搦むような態度では、正常な感性がある者ほど離れていくからな」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた

桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、 婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が 部屋に閉じこもってしまう話からです。 自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。 ※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。

恩知らずの婚約破棄とその顛末

みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。 それも、婚約披露宴の前日に。 さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという! 家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが…… 好奇にさらされる彼女を助けた人は。 前後編+おまけ、執筆済みです。 【続編開始しました】 執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。 矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【受賞&本編完結】たとえあなたに選ばれなくても【改訂中】

神宮寺 あおい
恋愛
人を踏みつけた者には相応の報いを。 伯爵令嬢のアリシアは半年後に結婚する予定だった。 公爵家次男の婚約者、ルーカスと両思いで一緒になれるのを楽しみにしていたのに。 ルーカスにとって腹違いの兄、ニコラオスの突然の死が全てを狂わせていく。 義母の願う血筋の継承。 ニコラオスの婚約者、フォティアからの横槍。 公爵家を継ぐ義務に縛られるルーカス。 フォティアのお腹にはニコラオスの子供が宿っており、正統なる後継者を望む義母はルーカスとアリシアの婚約を破棄させ、フォティアと婚約させようとする。 そんな中アリシアのお腹にもまた小さな命が。 アリシアとルーカスの思いとは裏腹に2人は周りの思惑に振り回されていく。 何があってもこの子を守らなければ。 大切なあなたとの未来を夢見たいのに許されない。 ならば私は去りましょう。 たとえあなたに選ばれなくても。 私は私の人生を歩んでいく。 これは普通の伯爵令嬢と訳あり公爵令息の、想いが報われるまでの物語。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 読む前にご確認いただけると助かります。 1)西洋の貴族社会をベースにした世界観ではあるものの、あくまでファンタジーです 2)作中では第一王位継承者のみ『皇太子』とし、それ以外は『王子』『王女』としています →ただ今『皇太子』を『王太子』へ、さらに文頭一文字下げなど、表記を改訂中です。  そのため一時的に『皇太子』と『王太子』が混在しております。 よろしくお願いいたします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 誤字を教えてくださる方、ありがとうございます。 読み返してから投稿しているのですが、見落としていることがあるのでとても助かります。 アルファポリス第18回恋愛小説大賞 奨励賞受賞

処理中です...