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帰って貰いなさい!

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「おいおい、まさかお前パーティーを抜ける気か?」


コーチがちっこい目をまん丸に開けて、あたしをびっくり眼で凝視する。

まさか!!!

まさかだよ!!!

あたしは必死で平べったくなった。

これでもか、これでもかと地面と仲良くしていたら、どうやらコーチにも伝わったらしい。


「なんだ、違うのかよ。びっくりさせやがって」


と息をつく。


「そんなチビっちぇえの連れて来やがるから、てっきり一緒に巣? に帰るとか言いだすのかと思ったじゃねえか」


紛らわしいことしやがって、と不服そうな顔を隠しもしないコーチとは真逆に、ニコニコ嬉しそうなのはリーナさん。やだ、ちっちゃい可愛い、と触りたそうにモジモジしている。


「じゃあお見送りに来てくれたのかな? ちっちゃいのに偉いわねえ」


怖がらせないように気をつかってくれたのか、いつも以上に優しい声でおっとりと話しかけてくれるけど、残念ながらそうじゃないんだ。


「お、違うらしいぞ」

「え? じゃあ何かしら」


コーチとリーナさんの会話に渋い顔をしているのは、アルマさん。


「まさか」


メガネをクイッと上げて、あたしを見つめる。


「その子達も僕らと一緒に行きたいなんて言わないだろうね?」


さすが!

さすがです、アルマさん!

素晴らしい洞察力を劇的ジャンプで讃えたいところだけど、空気を読んであたしはちょいっと軽くジャンプした。


「マジか~~~」


頭を抱えるアルマさんの横ではリーナさんが「えっ♪」と嬉しそうに頬を染め、ジョットさんは「一人に一スラ?」と呟いている。


「ダメ! ダメだよスラちゃん、帰って貰いなさい!」

「え~」

「え~、じゃない! スラちゃんだって危ないんだよ? そんなちっちゃい子責任持てないでしょ」


不服げなリーナさんに、アルマさんがビシリと正論を説く。ですよねーあたしだってそう思うもん。


「僕はスラちゃんで手一杯だし、皆は戦闘の時動き回るんだからもっとダメ。絶対に、無理だから!」

「そうだけどお」

「ダメです。スラちゃん、その子達には帰って貰いなさい」


ですよねー。

ねえ聞いたでしょ? ほらやっぱりダメだって。

あたしはチビちゃん達にパパ&ママのところに帰って貰おうとグイグイ押してみた。だってアルマさんが言う事はもっともなんだもの。

アルマさん達が戦おうとする敵は、あたし達スライムなんか逆立ちしたって敵わないような敵ばっかりなはず。だってこの前はゴブリン討伐だったけど、あれだって数が尋常じゃなく多いんじゃないかっていう前情報があったからアルマさん達が担当しただけなんだって。

危険すぎるよ。

あたしだって、まだ小さなお隣のチビちゃん達が自分のせいで大人にもなれないまま死んじゃうなんていやなんだもの。

それでもチビちゃん達は一生懸命に粘る。ホントこの年頃の子供って言い出したら聞かないんだよね。しかも遠く丘の上からはパパ&ママが心配そうに見てるし。


仕方ない……やるか。

覚悟を決めて、あたしはチビちゃん達に合図を送った。

チビちゃん達が、一斉に体の水を吐き出していく。みるみる萎むチビちゃん達を見て、アルマさん達は固まった。
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