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コーチとチビちゃん達の攻防

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ええ? さあ、どうだろう。


「おらチビども、俺の言葉がわかってんなら、スラ吉の中からとっとと出て来い!」


コーチの乱暴な言葉と共に、チビちゃん達が一斉にスポーン!とあたしの体から飛び出した。

あ、みんな人間の言葉ってわかるのね。


「わ、すごい! 言葉通じてるんだ」


興味津々で目をキラキラさせてチビちゃん達をのぞき込むリーナさん。身をかがめてなでなでしたそうに手を出したりひっこめたりしている。対照的なのはコーチで、威圧的な仁王立ちでチビちゃん達を見下ろしていた。


「あそこの丘の上にちまっといるスライムはお前たちの親か? そうなら軽くジャンプしろ」


揃ってぴょん! と跳ねるチビちゃん達。すごい、早速コーチの指示に完全に従ってる……けど、色が若干白っぽいのは恐怖ゆえだろうか。

うんまあ、コーチ見た目でかくてゴツくて怖いもんね。確かにがさつで乱暴だけど、でも実はいい人なんだよ?


「じゃあ、待っててやるからここに連れて来い! 話がある」


コーチの檄にぴょん! と飛び上がってから、一目散にパパ&ママの元にかけていくチビちゃん達。あっという間に辿りついて各々跳ねながら一生懸命に事情を説明しているっぽいけれど。

もし一緒に行くとして、あんなにコーチにビクついてたら道中で疲れちゃうんじゃないかしら。

チラリとコーチを見上げたら、いつになく厳しい顔でチビちゃん達を見つめていた。

あんまりこんな真剣な顔見ないのになあと不思議に思っていたけれど、丘の上から転びそうな勢いで五つの若草色がかけてきて、あたしの意識は一気にそっちに持っていかれた。


「このチビ達が俺たちについてきたがってんだが、本当にいいのか?」


さっき「はい」ならジャンプ、「いいえ」ならぺたっとなるという、あのルールを教えられたばっかりのパパ&ママが、間髪入れずに飛び上がる。

緊張のあまりかパパさんはコーチの頭を跳び越すくらいの大ジャンプをかましていた。

パパさんの方がビビリだったんだね……。


「言っておくが、俺たちはかなり危険な魔物と戦っている。ついてきたら死ぬぞ」


なんとストレートな。でも、事実だ。

だってあたしたちがこれから向かうのは遠くに見えている海なんだもの。青くてきれいだけど、あたしたちにとっては多分とっても危ないところ。最弱と名高いあたし達スライムは、あの草原から出たら生きてはいけないと子供の時から教え込まれていた。


「このチビ達を助けながら戦ったら俺たちが死ぬ。だからついてくるなら死を覚悟しろ。ガキどもも、親のお前たちも、本当にそれでいいのか」


見上げた仁王立ちのコーチの顔は、今まで見たことがないくらい、怖かった。
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