あなたのためなら

天海月

文字の大きさ
23 / 37

22

しおりを挟む
アメリアはセルヴィスの呪いの可能性についても調べたが、やはりそれらしいものは見つからない。

逃げようと思えば、全て投げ出して今の立場から逃げることもできた。

もしも、彼女がもっと軽薄な性質であったならば、事態は別の方向に転がっていたに違いない。

だが、アメリアの実直な性格は、あれだけの苦痛を受けても、問題からの逃亡を自身に許すことが出来なかった。

必然的に、彼女は膠着する現状と対峙し続ける、という苦難の道を自ら選択した。



アメリアは何の根拠もなかったが、どこか確信めいたものを感じていた。

もうセルヴィスは、呪いであろうが病であろうが、何をどうしようと笑ってくれないのかもしれない、ということに。

彼女自身の第六感のようなものが、もうこれ以上進まない方が良いという警告をしているような、何か嫌な予感がした。


それでも、彼女は原因を調べ尽くさずにはいられなかった。

仮にもし事実が明らかになったとして、誰も救われず、自身も更なる失望の底に落とされるかもしれないと感じていても。

知らないほうが良かった、と思うかもしれないとしても。


それは無駄な足掻きで、セルヴィスも望まないだろうということも解っていた。

だが、制動装置を失い半ば壊れかけた機械のようになったアメリアには、どうしても自分を止めることができなかった。


ここまで来るとそれが、セルヴィスへの愛からなのか、自身がただ事実を明らかにしたいという知への執念からなのか、アメリアは自分でもよく判らなくなっていた。





それは、アメリアの事が嫌いだからという理由でも、まだ過去の愛する人を思っているからという理由でも、何でもよかった。

ただ、彼が何をどう考えているのか、それを知りたかった。

のに蔑ろにされ続ける』という事実に対して、彼女は想像以上に堪えていた。

彼のために、自分は何かした方が良いのか、何もしない方が良いのか、それすら判らない。

セルヴィスと一緒に居る時、アメリアの心は何も身に着けていないのに、彼の心はいつでも素顔が見えない鎧を纏い、剣を構えたままだった。

彼を理解したいのに、彼は理解される事そのものを拒んでいるようだった。

彼がもうその気持ちを変えられないのだとしたら、蔑ろにされても受け入れる努力はするつもりだったが、それに対して何か納得できるだけの確かな理由が一つでも欲しかった。

ただ、それだけだった。

もしも、彼が自ら理由を話してくれていたとしたら、彼女はここまで頑なにはならなかっただろう。

現在のアメリアは出口の見えない苦痛によって、その精神を病みつつあったが、本来の彼女は理知的な女性だった。

当初からそれが伝えられていれば、戸惑いつつも彼女は受け入れたに違いなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結】有能外交官はドアマット夫人の笑顔を守りたい

堀 和三盆
恋愛
「まあ、ご覧になって。またいらしているわ」 「あの格好でよく恥ずかしげもなく人前に顔を出せたものねぇ。わたくしだったら耐えられないわ」 「ああはなりたくないわ」 「ええ、本当に」  クスクスクス……  クスクスクス……  外交官のデュナミス・グローは赴任先の獣人国で、毎回ボロボロのドレスを着て夜会に参加するやせ細った女性を見てしまう。彼女はパルフォア・アルテサーノ伯爵夫人。どうやら、獣人が暮らすその国では『運命の番』という存在が特別視されていて、結婚後に運命の番が現れてしまったことで、本人には何の落ち度もないのに結婚生活が破綻するケースが問題となっているらしい。法律で離婚が認められていないせいで、夫からどんなに酷い扱いを受けても耐え続けるしかないのだ。  伯爵夫人との穏やかな交流の中で、デュナミスは陰口を叩かれても微笑みを絶やさない彼女の凛とした姿に次第に心惹かれていく。  それというのも、実はデュナミス自身にも国を出るに至ったつらい過去があって……

婚約者の心変わり? 〜愛する人ができて幸せになれると思っていました〜

冬野月子
恋愛
侯爵令嬢ルイーズは、婚約者であるジュノー大公国の太子アレクサンドが最近とある子爵令嬢と親しくしていることに悩んでいた。 そんなある時、ルイーズの乗った馬車が襲われてしまう。 死を覚悟した前に現れたのは婚約者とよく似た男で、彼に拐われたルイーズは……

番認定された王女は愛さない

青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。 人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。 けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。 竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。 番を否定する意図はありません。 小説家になろうにも投稿しています。

彼女は白を選ばない

黒猫子猫
恋愛
ヴェルークは、深い悲しみと苦しみの中で、運命の相手とも言える『番』ティナを見つけた。気高く美しかったティナを護り、熱烈に求愛したつもりだったが、彼女はどうにもよそよそしい。 プロポーズしようとすれば、『やめて』と嫌がる。彼女の両親を押し切ると、渋々ながら結婚を受け入れたはずだったが、花嫁衣装もなかなか決めようとしない。 そんなティナに、ヴェルークは苦笑するしかなかった。前世でも、彼女は自分との結婚を拒んでいたからだ。 ※短編『彼が愛した王女はもういない』の関連作となりますが、これのみでも読めます。

あなたが残した世界で

天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。 八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

嘘だったなんてそんな嘘は信じません

ミカン♬
恋愛
婚約者のキリアン様が大好きなディアナ。ある日偶然キリアン様の本音を聞いてしまう。流れは一気に婚約解消に向かっていくのだけど・・・迷うディアナはどうする? ありふれた婚約解消の数日間を切り取った可愛い恋のお話です。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...