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22(side オスカー)
しおりを挟む近衛騎士であった彼の父の紹介で、騎士志望だというマリオンに初めて会った時、同性ながらその美しさに目が離せなくなった。
亜麻色の髪に、薄青の瞳。
剣を握るには華奢な身体に、少し翳を感じさせるような佇まい。
自分と同じ色を持っているにも関わらず、全く別の生き物のような、不思議な魅力を感じさせる妖精のような少年だと思った。
それでいて、稽古をすれば、その折れそうな腕から繰り出される剣技は信じられないほど鋭かった。
そして、彼はとてつもない努力家で負けず嫌いだった。
百回素振りをしろと言ったら、千回でも二千回でも、日が暮れても、手のひらの皮が破れて血塗れになるまでそれを止めない。
どうしてそこまでするのかと訊けば、彼は「誰よりも強くならなくてはいけないのだ」と言った。
俺はそんな彼の不均衡な魅力にあっという間に虜になった。
社交界に出るようになって、美しい令嬢を幾人も紹介されたが、その誰にも心が動くことはなかった。
実際、交際すれば気分が変わるかもしれないとも思ったが、結局どの女性とも長続きしなかった。
自分でもどうなのかと思うが、マリオンの事が忘れられなかったのだ。
気づくと、マリオンに似た女性はいないかと彼と比較してしまっていた。
そして、やっとこの気持ちの正体に気づいたのだった。
その時、彼が女だったら良かったのに・・・と思った。
そうすれば、こんな不毛な思いはせずに、正面を切って婚約者に名乗り出て、自分のものにしてしまえるのに・・・。
けれど、そんな夢物語のようなことはあり得ないのだから、この思いには一生蓋をして生きていく他ないと思った。
彼は無事に騎士になり、同僚となった。
ただ、いつでも顔が見られる、その声が聞ける、それだけで十分じゃないかと思うことにした。
そうこうしている間に、彼は無事に結婚した。
なのに、先日妙な話が降って湧いたように出てきて困惑した。
彼の結婚を機に、そろそろ自分も誰か適当な女性を見つけて腰を落ち着けなければと思っていた矢先だった。
だが、幸い彼の妻と話し合う機会を得て、最悪の事態は免れることが出来た。
それにしても、マリオンが何を考えているのか・・・彼の妻も訳が分からないと言っていたが、俺にも理解できそうにない。
かと言って、それを掘り下げて訊く勇気も無い。
本当に、俺はどうしようもない男だと思う・・・。
◇
彼の妻のクリスティーナから、一週間後にクラークの屋敷に来いと呼び出された。
また妙な事に巻き込まれるのではないだろうか・・・。
何でも、今の時期に用意することが出来る限りの最高の花束と、俺の瞳と同じ色の石が付いた最高級の宝飾品を用意して持参しろ、という訳のわからない条件を付けられている。
絶対に妥協は許さないと。
「オスカー様自身のためです」とも言われた。
何に使うのか、まったく意味が分からない。
そんな高級な宝飾品が急に必要だなんて、クラーク家は実は財政が困窮していて、援助を必要としているのだろうか?
マリオンはそんな素振りは全く見せないので、分らなかったが・・・。
つまり、これを機会に高額の援助をして、マリオンに恩を売っておけという事なのだろうか。
それにしても、今は真冬なのだから、そんな大層な花束など用意出来そうにない。
ふと屋敷の温室で育てている薔薇があったことを思い出した。
昔、マリオンが紅い薔薇を見て綺麗だと言っていた・・・。
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