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お茶が冷めるから
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富と才能の差という物を意識し始めたきっかけは、カイと出会ってから直ぐ。邸宅に招かれた日は、何故カイは自分と同じ学校に通っているのだろうと疑念の渦に陥った。嫉妬という物ではない。建築に興味を持っていたユイトにとって、それは素晴らしい近代洋風建築で、そこに住まうカイが純粋に羨ましかった。
「もういいかな、お茶が冷めるよ」
外観からは想像できない、シックに統一されたカイの部屋。
余裕で大人が三人は寝られるのではないか。キングサイズのベットと、テーブルとコンポが置かれただけの部屋は、どこか空虚であった。
贅を凝らした室内に圧倒されていたユイトに、部屋の主人は優しく微笑む。
「有り難う、頂きます」
ユイトが好きな香りの紅茶を差し出すカイの機嫌は、自宅に着いてから上がる一方だ。一言お礼を言い、口に含む、ああ美味しい。カイの自宅に遊びに来ては、毎回振る舞われる紅茶は決まってユイトの好きな香りの物であった。目を蕩かせては、芳しい琥珀色の液体を口に運ぶ。
美味しそうに紅茶を飲むユイトの姿が、微笑ましいのか絶えずカイは笑顔を浮かべていた。不気味に思えるほど笑みで頬が盛り上がり口角が上がっていた、カイの機嫌は天井を知らない。
ふと今なら、先程の嘘を訂正できる気がした。勇気を持てと紅茶を嚥下し、テーブルに陶器のカップを置くと、さり気なく視線を合わせる。優しいカイなら、許して貰えるのではないか。
「今日・・・・・・」
ティーカップの持ち手に触れていた手が震えた。先程の怒ったカイを見た時と同じだ。今になって漸くユイトは気がついた。完璧に笑みを作るカイ。違う、目が一切笑っていない。
「判ってるよ、俺のための嘘なんでしょ、ね?」
(カイのための嘘? なにそれ、僕はただ)
距離感がうまく掴めない。突然現れて急接近してきたカイと親しくなるに連れて、彼は学校内でユイトの行動に対して目を光らせていた。軽い口ぶりで「ユイトが俺以外と話すの嫌いなんだ」クラスが違う事で、カイの暴走に拍車がかかった。毎日「誰と話した」同じ事を聞いてくる。
「違う、ただの嘘だよ・・・・・・ごめん、そもそも僕が誰と話したかなんてっ」
「話したんだね! やはりそうだ。なんて残酷な人なんだろうか、哀願しても遅いよ」
カイの顔が能面のように表情が失せ、目がつり上がった。血の気が引いた、鈍感なユイトが見ても手に取るように彼の機嫌が急降下したと分かった。
初めてカイに怒りの色が深まる眼差しをぶつけられた。己は一体なにを弁解しようとしたのか、言葉を成さない口は開いたままでユイトは咄嗟にテーブルから離れる。
そこからカイの行動は速かった。自分から少しでも逃げようとしたユイトの細い腕を掴み、たくましい胸板に抱き寄せる。
サラサラとした細い髪がユイトの頬に触れた。突然の行動に目を丸くするユイトを、震える身体でカイは包み込んだ。抱きしめてくるカイの表情が見えない。
「な、なに! カイ、離して、え、どうしたのっ」
カイに抱きしめられている。気が動転したユイトの口からは、意味不明な台詞しか出てこない。先程から体の奥底からふつふつと熱が渦巻いていた。腹部から下肢の付け根にかけて、ドクドクと感じたことのない激しい熱が集中した。痛みはないのに、自分の身体に突如襲いかかる発作に腹を抱える。舌っ足らずな言葉しか出せない、舌がもつれる、唾液が口腔で溢れる。熱い。
「や、なぁ、にぃ、これ」
だからカイに抱きしめられた時から心臓が爆発しそうだ。何かの病気だろうか、助けを求めようと頭を動かし、抱擁を強めるカイを見上げる。口からよだれを垂らしながら、縋った。
「ふふふ、可愛い反応して、心臓の音が凄いね? ユイト、教えてあげる、聞いて」
妖艶に微笑むカイが抱擁を少し緩めた。すると拘束されていた上半身がよろめき、ユイトは必死にカイの腕を掴んだ。手を離したら崩れ落ちそうだ、下半身が鉛のように重い。ガクガクと膝が笑い、腹に当たる硬い存在にユイトの視界が滲んだ。頬を濡らす涙をカイが熱い舌で舐める。
「俺はね、ユイトが誰かに触れられるだけで気が狂いそうなんだよ、それを教えて ”くれるだけ” で良いといったんだよ、可哀そうに、さあ、今までの親友ごっこは終わりだよ」
「もういいかな、お茶が冷めるよ」
外観からは想像できない、シックに統一されたカイの部屋。
余裕で大人が三人は寝られるのではないか。キングサイズのベットと、テーブルとコンポが置かれただけの部屋は、どこか空虚であった。
贅を凝らした室内に圧倒されていたユイトに、部屋の主人は優しく微笑む。
「有り難う、頂きます」
ユイトが好きな香りの紅茶を差し出すカイの機嫌は、自宅に着いてから上がる一方だ。一言お礼を言い、口に含む、ああ美味しい。カイの自宅に遊びに来ては、毎回振る舞われる紅茶は決まってユイトの好きな香りの物であった。目を蕩かせては、芳しい琥珀色の液体を口に運ぶ。
美味しそうに紅茶を飲むユイトの姿が、微笑ましいのか絶えずカイは笑顔を浮かべていた。不気味に思えるほど笑みで頬が盛り上がり口角が上がっていた、カイの機嫌は天井を知らない。
ふと今なら、先程の嘘を訂正できる気がした。勇気を持てと紅茶を嚥下し、テーブルに陶器のカップを置くと、さり気なく視線を合わせる。優しいカイなら、許して貰えるのではないか。
「今日・・・・・・」
ティーカップの持ち手に触れていた手が震えた。先程の怒ったカイを見た時と同じだ。今になって漸くユイトは気がついた。完璧に笑みを作るカイ。違う、目が一切笑っていない。
「判ってるよ、俺のための嘘なんでしょ、ね?」
(カイのための嘘? なにそれ、僕はただ)
距離感がうまく掴めない。突然現れて急接近してきたカイと親しくなるに連れて、彼は学校内でユイトの行動に対して目を光らせていた。軽い口ぶりで「ユイトが俺以外と話すの嫌いなんだ」クラスが違う事で、カイの暴走に拍車がかかった。毎日「誰と話した」同じ事を聞いてくる。
「違う、ただの嘘だよ・・・・・・ごめん、そもそも僕が誰と話したかなんてっ」
「話したんだね! やはりそうだ。なんて残酷な人なんだろうか、哀願しても遅いよ」
カイの顔が能面のように表情が失せ、目がつり上がった。血の気が引いた、鈍感なユイトが見ても手に取るように彼の機嫌が急降下したと分かった。
初めてカイに怒りの色が深まる眼差しをぶつけられた。己は一体なにを弁解しようとしたのか、言葉を成さない口は開いたままでユイトは咄嗟にテーブルから離れる。
そこからカイの行動は速かった。自分から少しでも逃げようとしたユイトの細い腕を掴み、たくましい胸板に抱き寄せる。
サラサラとした細い髪がユイトの頬に触れた。突然の行動に目を丸くするユイトを、震える身体でカイは包み込んだ。抱きしめてくるカイの表情が見えない。
「な、なに! カイ、離して、え、どうしたのっ」
カイに抱きしめられている。気が動転したユイトの口からは、意味不明な台詞しか出てこない。先程から体の奥底からふつふつと熱が渦巻いていた。腹部から下肢の付け根にかけて、ドクドクと感じたことのない激しい熱が集中した。痛みはないのに、自分の身体に突如襲いかかる発作に腹を抱える。舌っ足らずな言葉しか出せない、舌がもつれる、唾液が口腔で溢れる。熱い。
「や、なぁ、にぃ、これ」
だからカイに抱きしめられた時から心臓が爆発しそうだ。何かの病気だろうか、助けを求めようと頭を動かし、抱擁を強めるカイを見上げる。口からよだれを垂らしながら、縋った。
「ふふふ、可愛い反応して、心臓の音が凄いね? ユイト、教えてあげる、聞いて」
妖艶に微笑むカイが抱擁を少し緩めた。すると拘束されていた上半身がよろめき、ユイトは必死にカイの腕を掴んだ。手を離したら崩れ落ちそうだ、下半身が鉛のように重い。ガクガクと膝が笑い、腹に当たる硬い存在にユイトの視界が滲んだ。頬を濡らす涙をカイが熱い舌で舐める。
「俺はね、ユイトが誰かに触れられるだけで気が狂いそうなんだよ、それを教えて ”くれるだけ” で良いといったんだよ、可哀そうに、さあ、今までの親友ごっこは終わりだよ」
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