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5.予期せぬ出来事
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賢治の鎖骨のほくろは冬の星座みたいだ。
ふとそんなことを思ったのも、電車が来ないせいかもしれない。
今朝、音信不通だった父親から連絡が入り、母親が亡くなったと報せを受けた。喪服は着てこなくてもいいと言われたから、ジャケットにスラックスという出で立ちで母の葬儀を終えてきたばかりだ。先程別れたばかりの父親と話した中で、些か疑問に思うところがあったのを思い出した。
「母さんの銀行口座を確認したら、二百万も預金してあったぞ、これはお前に相続させよう」
と、父親があっさりと言うものだから、春人は母親の借りていた部屋から銀行の通帳を見つけた。振込日は、春人が賢治と契約を結んだ翌日で、それから一度も引き落とされていない。もしかして例の親族に返していないのか、と良からぬ想像をしてしまう。それも、母親が晩年に一緒に暮らしていたおじいちゃんが香典を持ってきてくれた。春人がそれとなく問うと、
「いやぁ、お世話になりました、早くに亡くなって残念ですな、えっ? 財産贈与で親族と揉めたかって、ふざけたこと言わんといてくださいよ」
頬をつやつやとさせたおじいちゃんが豪快に笑ったのを思い出した。それならば、どうして母親が息子の自分に金の催促をしたのだ。それに手付かずのままだ。
それは賢治相手にも疑心暗鬼を生じる。春人は携帯電話を持つ手が震える。
「うん、電車で帰るから、大丈夫だよ」
『なんで手配した車で帰らないんだ、危ないだろうっ、お願いだから今すぐタクシーでもいいから』
通話先の賢治は不安げに声が揺れていた。
「だから大げさなんだよ、じゃあ、またね」
春人は一方的に通話を切った。賢治の見境ない嫉妬にはほとほと呆れる。一人の時間くらいいいだろうに。賢治との契約が続いているのなら、自分の行いは規約違反だろう。そもそも契約書なんて作成していない。全部、賢治がその場の気分で決めることばかりだ。いちいち付き合っていたら、こちらが参ってしまう。
「まじか」
通勤客の声がした。
駅員のアナウンスによれば、線路に不審物を見つけたことから運転停止となったそうな。各駅電車しか止まらない駅のホームでは、通勤や通学の客でごった返している。それぞれが緊迫した表情をさせて忙しなくホームを行き来する。当駅に停車した急行電車から乗客が吐き出される。互いにぎゅうぎゅうと肩で押し合いながらも、おもちゃの兵士みたいに整列して階段を下りていく。
春人は電光掲示板と睨めっこし、バスかタクシーを使うか考えていた。人の流れが横に動いた。線路に落ちるのが怖くて、自動販売機の横側に背を預ける。機械音の振動がしたからとっさに肩を丸めた。それでも、どうにか居場所を死守したことで、心のゆとりを持てた。
近くにいた青年は、このまま運転再開を待つのか、慣れた様子でスマートフォンのゲームを始めた。斜め前のスーツ姿の男性が駅員に向けて怒鳴っていた。その男性の苛立った声に、春人は恐怖し、反射的に肩を揺らしてしまう。
その男性が「もういい」と吐き捨て、こちらに顔を向けた。じろじろと見ていた後ろめたさから、春人は目をそらす。丁度近くにいた春人が、焦った顔で突っ立っているのが邪魔だったようで、男性が脇を通り抜ける際に舌打ちをした。それが自分に向けてなのか、ここにいる全員に向けてなのかは分からない。それでも、どうせ自分のことだから、と大人しい顔立ちで背もそう高くもない春人は、周囲を見渡さずに決めつけた。自己評価の低い自分にうんざりする。昔から人に甘く見られてきたから卑屈な性格になるのも仕様がない。しかし、それで自分の首を絞めているからこそ始末に負えない。
自分はここにいる人達と程遠い世界にいると達観する。選択権が己にあることは、生きているということだ。と、春人は下唇を噛んだ。
改札へと戻る道が自然と形成されていくのを物珍しい気持ちで眺めた。彼らは揃って疲れ切った顔をしており、スマートフォンに素早く何かを打ち込んだり重大事件のように電話をしたりしている。数年前の自分も同じことをしていた。生活の保障のために、居場所を失わないためにしがみついていた。その隙間時間が一秒でも惜しいと誰かの発信するニュースを追いかけた。数秒後先には忘れている話題でも、把握していないと気が休まらなかった。全人類が中毒になったみたいだ。
彼らが心底うらやましかった。あの日々こそ、世間でいう普通の生活なのだろう。毎日満員電車に揺られて会社に行き、仕事でミスした部下の代わりに上司に叱られて、誰もいない家の冷たいベッドで気絶するように寝る。そんな華のない暮らし振りも、今の自分からすれば眩しかった。あれこそバラ色の生活だ。いつ心身の不調が起きてもおかしくなかったし、もしも病院に担ぎ込まれでもしたら翌日には自分の席は無くなっている。そんな生き方でも、賢治との生活と比べたら健全だ。
「あっ、そう言えば」
賢治に何で遅くなったかと問い詰められるだろう。万が一を考えて改札前で駅員さんが配っていた遅延証明書をもらった。改札前の白く発光した床で滑りそうになった。うまく着地できなかったかかとを踏ん張る。結局、春人は電車を諦め、バスを乗り継いで帰宅した。幸いなことに賢治はまだ帰ってきていない。
風呂から上がり、夕食の用意をしようかと台所に立つ。ふと、自分はここで何をしているのだろうと思いに至る。相続手続きが終われば、賢治に貸しを返せる。そうなると、この生活は終わるのだろうか。賢治との疑似恋愛ごっこも、彼の粘着質なセックスにも付き合わなくてもいいということか。
「どうしよう」
この家に住まう大義名分がなくなる。あれだけ賢治との生活に適用しようとしてきたのに、今更一人の生活を選べと言われてもどうしようもできない。それは生活能力や家探しの問題とは違う。純粋に賢治の傍にいたいと願う自分がいた。
「ただいま」
玄関ホールから声が掛かる。咄嗟に返せずにいると、賢治が早歩きで台所に入ってきた。
「春人、今日は大変だったな、疲れていないか?」
賢治が春人を見つけると、即座に強く抱きしめてくる。背中に、腰に回された手は心なしか震えている。まるで春人を逃がさないように、しがみついているみたいだ。
「春人、どうした」
賢治はなぜ春人が台所にいると分かったのだ。春人は周囲を見渡す。そうか、照明が付いているのはこの部屋だけだからだ。
「賢治、おかえりなさい」
春人の方から唇を合わせた。
「は、春人」
賢治は泣きそうな顔で春人の名を呼んだ。よしっと、春人はその賢治の反応にご満悦だった。
「今日ね、驚いたことがあったんだ」
「うん、教えてくれ」
二人抱き合ったまま互いの声に耳を傾けた。世界に二人しかいないかのように、どっぷりと夜は深かった。
「賢治から借りたお金、母さんの口座にそのまま入ってたんだ、それを相続したら賢治に返したい」
「……いいのに、それは春人のものだ」
「ううん、僕の好きにさせて、それで」
春人は自分達が金銭で繋がった恋人なのを忘れていない。この設定はいつまで続くのか、賢治が忘れているのなら刺激しないようにしてきた。それでも、自分達の窮屈な関係が少しでも変わればと願ってしまう。
「普通の恋人になろう……」
「なろう」
賢治が即答するや、春人を横抱きにして二階の寝室に運んだ。
「ちょっ、ご飯は」
「無理だ、今日は春人のお母様の葬儀があったから我慢していたが、無理だ」
無理無理、と賢治は鼻血を出しながら叫んだ。
「っあ」
ベッドで春人を裸に剥いた賢治は、正面から耳に口づけをした。首筋に顔を埋めて、すんすんと動物のように鼻を鳴らす。
「春人の匂いがする、お日様の香りだ」
「賢治だって、すごく好きな香りだ」
その夜、二人ともたがが外れたように愛し合った。いつもより乱暴な手つきで腰を掴まれて、獰猛な腰使いで屈服された。互いに発情したように燃えた。
平日の午後に、仕事を休んだ賢治がベッドから起き上がる。
「すごいエッチだった」
春人は賢治の腰に腕を回して甘えた。優しく頭を撫でられると、まぶたが重たくなる。
「無理をさせたな」
「ううん、賢治なら、もっと酷いことをされてもいい」
頭上でゴクリと唾液を嚥下する音が聞こえた。
「そうか、次から少しずつ深いところで感じてもらおうな」
「……うん」
期待から、じわりと脇汗がにじんだ。春人が気絶していた間に、賢治が風呂に入れてくれたのだろ。股の間ががびがびしない。
「春人、食事を持ってくるよ」
「僕も手伝う、つ」
春人は起き上がろうとするも、腰が抜けてベッドに逆戻りした。
「無理はするな、春人は何もしなくていいから、休んでいてくれ」
そう言って、賢治は部屋を後にした。戻ってきたときには、色とりどりの果物がトレーに乗せてきた。それを賢治から口伝いで食べる。何度も繰り返し、もういいと春人が告げたら、賢治はトレーをベッドの下に置いた。次に春人の隣に寝て、賢治は春人の胸に顔を埋めて乳首を口に含んだ。賢治は愛撫するわけでもなく、ただ口でしゃぶったまま安心しきった顔で眠りについた。背中を撫でながら、恋人ってこういうものなのかなと、あるはずのない母性本能が芽生えた。
ここに住み始めてから、かれこれ二年がたつ。この家は大きな箱庭だ。もうここから出られないと思っていた。出たら賢治が悲しむからだ。自分は必要とされている。それに、彼への愛情が大きく育っている。それは多分彼と同等の重さではないと思うけれど、きっと彼を笑顔にさせる威力はあるはずだ。いつ賢治を好きになったのか覚えていない。彼との日々が続くと好きがどんどん増えていく。ここはあまりに居心地がいい。それだけで十分だ。
ふとそんなことを思ったのも、電車が来ないせいかもしれない。
今朝、音信不通だった父親から連絡が入り、母親が亡くなったと報せを受けた。喪服は着てこなくてもいいと言われたから、ジャケットにスラックスという出で立ちで母の葬儀を終えてきたばかりだ。先程別れたばかりの父親と話した中で、些か疑問に思うところがあったのを思い出した。
「母さんの銀行口座を確認したら、二百万も預金してあったぞ、これはお前に相続させよう」
と、父親があっさりと言うものだから、春人は母親の借りていた部屋から銀行の通帳を見つけた。振込日は、春人が賢治と契約を結んだ翌日で、それから一度も引き落とされていない。もしかして例の親族に返していないのか、と良からぬ想像をしてしまう。それも、母親が晩年に一緒に暮らしていたおじいちゃんが香典を持ってきてくれた。春人がそれとなく問うと、
「いやぁ、お世話になりました、早くに亡くなって残念ですな、えっ? 財産贈与で親族と揉めたかって、ふざけたこと言わんといてくださいよ」
頬をつやつやとさせたおじいちゃんが豪快に笑ったのを思い出した。それならば、どうして母親が息子の自分に金の催促をしたのだ。それに手付かずのままだ。
それは賢治相手にも疑心暗鬼を生じる。春人は携帯電話を持つ手が震える。
「うん、電車で帰るから、大丈夫だよ」
『なんで手配した車で帰らないんだ、危ないだろうっ、お願いだから今すぐタクシーでもいいから』
通話先の賢治は不安げに声が揺れていた。
「だから大げさなんだよ、じゃあ、またね」
春人は一方的に通話を切った。賢治の見境ない嫉妬にはほとほと呆れる。一人の時間くらいいいだろうに。賢治との契約が続いているのなら、自分の行いは規約違反だろう。そもそも契約書なんて作成していない。全部、賢治がその場の気分で決めることばかりだ。いちいち付き合っていたら、こちらが参ってしまう。
「まじか」
通勤客の声がした。
駅員のアナウンスによれば、線路に不審物を見つけたことから運転停止となったそうな。各駅電車しか止まらない駅のホームでは、通勤や通学の客でごった返している。それぞれが緊迫した表情をさせて忙しなくホームを行き来する。当駅に停車した急行電車から乗客が吐き出される。互いにぎゅうぎゅうと肩で押し合いながらも、おもちゃの兵士みたいに整列して階段を下りていく。
春人は電光掲示板と睨めっこし、バスかタクシーを使うか考えていた。人の流れが横に動いた。線路に落ちるのが怖くて、自動販売機の横側に背を預ける。機械音の振動がしたからとっさに肩を丸めた。それでも、どうにか居場所を死守したことで、心のゆとりを持てた。
近くにいた青年は、このまま運転再開を待つのか、慣れた様子でスマートフォンのゲームを始めた。斜め前のスーツ姿の男性が駅員に向けて怒鳴っていた。その男性の苛立った声に、春人は恐怖し、反射的に肩を揺らしてしまう。
その男性が「もういい」と吐き捨て、こちらに顔を向けた。じろじろと見ていた後ろめたさから、春人は目をそらす。丁度近くにいた春人が、焦った顔で突っ立っているのが邪魔だったようで、男性が脇を通り抜ける際に舌打ちをした。それが自分に向けてなのか、ここにいる全員に向けてなのかは分からない。それでも、どうせ自分のことだから、と大人しい顔立ちで背もそう高くもない春人は、周囲を見渡さずに決めつけた。自己評価の低い自分にうんざりする。昔から人に甘く見られてきたから卑屈な性格になるのも仕様がない。しかし、それで自分の首を絞めているからこそ始末に負えない。
自分はここにいる人達と程遠い世界にいると達観する。選択権が己にあることは、生きているということだ。と、春人は下唇を噛んだ。
改札へと戻る道が自然と形成されていくのを物珍しい気持ちで眺めた。彼らは揃って疲れ切った顔をしており、スマートフォンに素早く何かを打ち込んだり重大事件のように電話をしたりしている。数年前の自分も同じことをしていた。生活の保障のために、居場所を失わないためにしがみついていた。その隙間時間が一秒でも惜しいと誰かの発信するニュースを追いかけた。数秒後先には忘れている話題でも、把握していないと気が休まらなかった。全人類が中毒になったみたいだ。
彼らが心底うらやましかった。あの日々こそ、世間でいう普通の生活なのだろう。毎日満員電車に揺られて会社に行き、仕事でミスした部下の代わりに上司に叱られて、誰もいない家の冷たいベッドで気絶するように寝る。そんな華のない暮らし振りも、今の自分からすれば眩しかった。あれこそバラ色の生活だ。いつ心身の不調が起きてもおかしくなかったし、もしも病院に担ぎ込まれでもしたら翌日には自分の席は無くなっている。そんな生き方でも、賢治との生活と比べたら健全だ。
「あっ、そう言えば」
賢治に何で遅くなったかと問い詰められるだろう。万が一を考えて改札前で駅員さんが配っていた遅延証明書をもらった。改札前の白く発光した床で滑りそうになった。うまく着地できなかったかかとを踏ん張る。結局、春人は電車を諦め、バスを乗り継いで帰宅した。幸いなことに賢治はまだ帰ってきていない。
風呂から上がり、夕食の用意をしようかと台所に立つ。ふと、自分はここで何をしているのだろうと思いに至る。相続手続きが終われば、賢治に貸しを返せる。そうなると、この生活は終わるのだろうか。賢治との疑似恋愛ごっこも、彼の粘着質なセックスにも付き合わなくてもいいということか。
「どうしよう」
この家に住まう大義名分がなくなる。あれだけ賢治との生活に適用しようとしてきたのに、今更一人の生活を選べと言われてもどうしようもできない。それは生活能力や家探しの問題とは違う。純粋に賢治の傍にいたいと願う自分がいた。
「ただいま」
玄関ホールから声が掛かる。咄嗟に返せずにいると、賢治が早歩きで台所に入ってきた。
「春人、今日は大変だったな、疲れていないか?」
賢治が春人を見つけると、即座に強く抱きしめてくる。背中に、腰に回された手は心なしか震えている。まるで春人を逃がさないように、しがみついているみたいだ。
「春人、どうした」
賢治はなぜ春人が台所にいると分かったのだ。春人は周囲を見渡す。そうか、照明が付いているのはこの部屋だけだからだ。
「賢治、おかえりなさい」
春人の方から唇を合わせた。
「は、春人」
賢治は泣きそうな顔で春人の名を呼んだ。よしっと、春人はその賢治の反応にご満悦だった。
「今日ね、驚いたことがあったんだ」
「うん、教えてくれ」
二人抱き合ったまま互いの声に耳を傾けた。世界に二人しかいないかのように、どっぷりと夜は深かった。
「賢治から借りたお金、母さんの口座にそのまま入ってたんだ、それを相続したら賢治に返したい」
「……いいのに、それは春人のものだ」
「ううん、僕の好きにさせて、それで」
春人は自分達が金銭で繋がった恋人なのを忘れていない。この設定はいつまで続くのか、賢治が忘れているのなら刺激しないようにしてきた。それでも、自分達の窮屈な関係が少しでも変わればと願ってしまう。
「普通の恋人になろう……」
「なろう」
賢治が即答するや、春人を横抱きにして二階の寝室に運んだ。
「ちょっ、ご飯は」
「無理だ、今日は春人のお母様の葬儀があったから我慢していたが、無理だ」
無理無理、と賢治は鼻血を出しながら叫んだ。
「っあ」
ベッドで春人を裸に剥いた賢治は、正面から耳に口づけをした。首筋に顔を埋めて、すんすんと動物のように鼻を鳴らす。
「春人の匂いがする、お日様の香りだ」
「賢治だって、すごく好きな香りだ」
その夜、二人ともたがが外れたように愛し合った。いつもより乱暴な手つきで腰を掴まれて、獰猛な腰使いで屈服された。互いに発情したように燃えた。
平日の午後に、仕事を休んだ賢治がベッドから起き上がる。
「すごいエッチだった」
春人は賢治の腰に腕を回して甘えた。優しく頭を撫でられると、まぶたが重たくなる。
「無理をさせたな」
「ううん、賢治なら、もっと酷いことをされてもいい」
頭上でゴクリと唾液を嚥下する音が聞こえた。
「そうか、次から少しずつ深いところで感じてもらおうな」
「……うん」
期待から、じわりと脇汗がにじんだ。春人が気絶していた間に、賢治が風呂に入れてくれたのだろ。股の間ががびがびしない。
「春人、食事を持ってくるよ」
「僕も手伝う、つ」
春人は起き上がろうとするも、腰が抜けてベッドに逆戻りした。
「無理はするな、春人は何もしなくていいから、休んでいてくれ」
そう言って、賢治は部屋を後にした。戻ってきたときには、色とりどりの果物がトレーに乗せてきた。それを賢治から口伝いで食べる。何度も繰り返し、もういいと春人が告げたら、賢治はトレーをベッドの下に置いた。次に春人の隣に寝て、賢治は春人の胸に顔を埋めて乳首を口に含んだ。賢治は愛撫するわけでもなく、ただ口でしゃぶったまま安心しきった顔で眠りについた。背中を撫でながら、恋人ってこういうものなのかなと、あるはずのない母性本能が芽生えた。
ここに住み始めてから、かれこれ二年がたつ。この家は大きな箱庭だ。もうここから出られないと思っていた。出たら賢治が悲しむからだ。自分は必要とされている。それに、彼への愛情が大きく育っている。それは多分彼と同等の重さではないと思うけれど、きっと彼を笑顔にさせる威力はあるはずだ。いつ賢治を好きになったのか覚えていない。彼との日々が続くと好きがどんどん増えていく。ここはあまりに居心地がいい。それだけで十分だ。
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