死亡賭博の殺し屋達

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プロローグ

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 二十一世紀も後半に入って、今や異星人エイリアンが地球に訪れている事は公然の秘密である。訪問は友好的なものではなく、むしろ悪意を持って、地球を荒らす事が目的とされていた。

 異星人は表立おもてだって行動しない。かげから人間をあやつり、時には科学技術を提供し、悪事をおこなうようにそそのかす。昔の小説で書かれていた、クトゥルフ神話の邪神じゃしん。ああいう存在に近い。



 この物語の舞台はアメリカ。二十世紀の頃からUFOの目撃証言が多かった国で、そのせいか宇宙人の訪問が多くなりがちなのも当然なのだろう。今のアメリカは治安が恐ろしく悪かった。超人的な能力を持つ、フリーの殺し屋が暗躍していて、その能力は異星人から与えられているらしい。

 らしい、という曖昧あいまいな表現になるのは、実際のところがからないからだった。彼らは逮捕されない。ある者はきりのように姿を変え、誰からも視認しにんされず現場を去ると言われている。正体不明の存在で、『吸血鬼ヴァンパイア』などと呼ばれて恐れられていた。

 地球外ちきゅうがい生命体せいめいたいから与えられる技術は、常に悪党へと手渡されていて、警察やアメリカ政府を歯噛はがみさせていた。何とか、殺し屋を一人でも捕まえられないものか。そいつを生きたまますれば、きっと対策も立てられる。

 人類への有意義な貢献。他国に先駆さきがけて異星からの科学技術をアメリカが実用化し、地球全体をアメリカの足元に置く。アメリカによる恒久的こうきゅうてきな世界平和の実現、それこそが理想である。アメリカ万歳ばんざい、アメリカ万歳ばんざい! ともかく、そういう考えがあるのであった。

 であるから、そういった超人的な殺し屋の一人が国内で逮捕された時、それはそれは政府も喜んだ事だろう。逮捕されたのは三十代前半の男。せぎすな体格で無精ひげの持ち主。正確な年齢と名前は不明。

 男は警察や同業者(もちろん殺し屋)から、『雀蜂ホーネッツ』と呼ばれていた。この男が、物語の主人公である。
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