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十円玉のおみちびき
ハミちゃんとの再会
しおりを挟む高校卒業後、私は地元の短大に行き、自宅から通える企業に就職した。
ハミちゃんは東京の大学に行って、やはり東京で就職したけれど、連絡は割とまめにとっている。
お互いにカレシもでき、時々ノロケや愚痴を言い合ったけれど、離れて暮らしているため、お互いのお相手に会ったことはなかった。
多分そんなことをしているうちに、お相手も替わったりしていたろう。
私自身は28歳でお見合い結婚した。
一方のハミちゃんはというと…お互いが30歳になった年、驚くべきネタを仕込んできた。
「私、結婚したい人がいるんだ。今度2人で挨拶のために帰省するから、そのとき会わない?」
「えー、おめでとう!どんな人?」
「それは会ってのお楽しみ」
私は妊娠中期に入っていて、月数の割に大きなお腹と体重増加が心配される以外、結構幸せにやっていた。
お見合いとはいえ初対面から気が合う人だったし、今も仲良くけんかし合える良い関係だと思う。
東京に行ってキレイに洗練された(であろう)ハミちゃんが、どんなかっこいい(かもしれない)フィアンセを連れてくるのか。
こんなぽってりした田舎の妊婦じゃ見劣りするだろうな…とか、正直なところ心配ではあったんだけど、「ええい、幸せ太りみたいなもんだ。それにハミちゃんの引き立て役ならそれも悪くない」程度に開き直ったら、会うのが楽しみになった。
待ち合わせは、高校時代から2人で時々来ていたカフェ。
先に着いた私は、お腹の赤ちゃんのためにコーヒーを我慢し、トマトジュースなど注文した。
すると、つかつかと軽快な靴音を立てながら近づいてきた女性に声をかけられた。
「さすがは妊婦さん。体にいいもの飲んでるね」
「あ、ハミちゃん。久しぶりー」
思ったとおり、ハミちゃんはとてもキレイになっていた。
セミロングの髪も白い肌もつやつやしているし、カットソーとタイトスカートという、シンプルだけれど意外とごまかしの利かない組み合わせも、すんなり着こなせている。
隣にいるのは――身長160センチのハミちゃんと頭1つ違うか違わないかという身長差なので、180くらい?服装はラフだけど、清潔感があって誠実そうな男性で、なぜか顔にも見覚えがあった。
2人は私の対面に並んで座った。
「では、改めて。こちら婚約者の中澤さんです」
「こんにちは、中澤英雄です――お久しぶりです」
「…って、えー!」
私はハミちゃんに「ちょっと声おっきいよ…」とたしなめられるレベルの絶叫をしてしまった。
「だって…まさか…」
「でしょ?私自身びっくりしているんだけどね」
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