1 / 13
プロローグ 久美のこと
しおりを挟む1979年春のこと。久美は小学5年生だった。
夏生まれのため、新学期から誕生日までの3カ月は10歳である。
どちらかというと少数派の姓なので、個人の特定を避けるため、そこは省略したいと思う。
ちなみに面倒くさい子供だと思われるのが嫌で――というわけでもないが、「小学校5年生っていうと、11歳とか12歳だっけ?」みたいに大ざっぱに年齢計算をするオトナを見ると内心イライラするが、口には出さない。
例えば子供がいないとか、いてもすっかり成長してしまい、もう学校に縁がないから疎くなっているだけとか、人それぞれ事情があるのだから、多少の誤差はもちろん、大幅な間違いがあっても大目に見てやってほしいところだが、(自分だって小学生だった時代があったのに、そのとき「何歳」だったか思い出せないのかな?)と、子供特有の視野の狭さや傲慢さをもって軽蔑さえしていた。
なぜなら、久美はその手の大人は他人の話、特に子供の話はまともに聞かない傾向があるということを、何となく感じ取っていたからである。
そういう人はなぜ話を聞かないかも知っている。単純に興味がないからだ。
ポーズだけ興味を持って質問してきても、たった数秒のこちらの回答をまるっきり忘れている様子を平気で見せるし、それを恥ずかしいとも思っていないのが分かる――と、少なくとも久美は考えていた。
かといって、自分のむき出しのわがままを受け入れられないからと、「大人は分かってくれない」なんて利いたふうなことを言う自分以外の子供たちのことも、正直好きではなかった。
つまり大人も子供も嫌いで、大人になることにも、子供時代を楽しむことにも消極的な少女ということになるだろうか。
***
学校では国語と算数が得意で、理科と図工が苦手。
好きな食べ物はラムネ菓子、嫌いな食べ物は肉の脂身である。
かわいいもの、美しいもの、面白いものが好きで、歌と器械体操は割と得意である。
とはいえ、「好きなものを好き」と口にできる思い切りのよさに欠けるところがある。
その一方で、嫌いなものや苦手なものを聞くと割と饒舌になる――ただし、「内心」だけだが。
意地悪で偉そうなお兄ちゃん、お兄ちゃんばかり引き立てるお母さん、早寝早起き、家庭科のH先生(いじわる)、クラスのあのこ(チクリ魔)とあの子(マウント女)、ご飯の時間に見るニュース番組(意味が分からない)、「いい天気ねえ」って話しかけてくる、近所の親切なおばさん(どう返事していいか分からない)etc.
メロディーに乗せて、“My Favorite Things”ならぬ“Things I dislike”など歌っても、元気づけられるどころか落ち込む一方だろう。
ところで、図画工作が苦手な理由は、絵や造形が下手というよりも、「絵の道具を片付けるのがめんどう」という理由が大きかったりする。
自分の不器用さや間の悪さのせいで損したりしているなと感じる一方で、どの年頃にあっても、「あなたは個性がある」「将来はきっと美人になる」と、やたらちやほやする大人が何人かいたせいで、自分をフラットに冷静に判断する機会を逃してきた。
このように他責的なところも含め、傍から見ていると、本当にどこにでもいる子供の1人だ。
自分に自信がないくせに、何者かになれる未来を心のどこかで信じてもいた。
これからお話しするのは、そんな少女・久美の物語である。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる