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徹志の買い物
徹志はさよりに何かアクセサリーを送りたいと思っていた。
誕生石を調べたらルビーだったから、何か小さな石のついたネックレスでもと考えたら、彼女に着けてほしいとか、自分自身がいいなと感じるようなものは、大分予算オーバーになる。
予算ベースで選ぶと、「ああ、予算でここ止まりだったんだろうな」と丸わかりの、いかにも安っぽいものしか買えない。
若いビンボー学生にとって、理想と現実の乖離はひじょーに激しいのだ。
さよりが当節はやりの「Tのハートモチーフのネックレス(※下記注)じゃなきゃ受け取らない!」と主張するような女子でなかったので、徹志は救われた。
もっとも、そんな好みだったら、そもそも2人が付き合うことはなかったろう。
さよりとの約束の2日前、徹志は、いつも通るバイト先までの動線上に生花店があるのに気付いた。
もちろん何年も前から――それこそ徹志のバイト先が開業されるより前から――そこで営業していたのだが、普段はほとんど意識することがなかった。
(花か…クリスマスの花ってあるのかな…?)
スマホやフィーチャーフォンのある時代なら、その場で「クリスマス 花」と検索すれば、何秒もかからず解決するが、徹志は時間を確認してから生花店に入り、「クリスマスの花って何かありますか?」と従業員に率直に聞いた。
「そうですね…。ポインセチア、シクラメン、バラなんかも意外と出ますが」
ポインセチアはクリスマスを代表する花だし、バラは花を代表するものだ(徹志の感覚)。
徹志は名前を聞いてピンとこなかった唯一の花について尋ねた。
「シクラメン…って、どの花ですか?」
「こちらです」
従業員が提示したところには、大小の鉢植えが鮮やかに並んでいた。
小さめの鉢植えならば部屋に置いておきやすいし、正直金額的にもかなり助かる。
クリスマスらしい真っ赤な花に目がいったが、少し濃いめのピンクの方が、さよりのイメージに合っている気がして、それを選んだ。
「あの、2日後にまた来ます。この花取っておいていただけますか?」
「え、ああ…はい」
「俺は佐竹といいます。そこのカフェでバイトしている大学生なんですが、2日後にカノジョにプレゼントしたいんで」
「ああ、そうなんですか。でしたらメッセージカードも添えられますが…」
「いえ、直接渡すんで大丈夫です!」
「はあ…」
従業員の女性はやや呆気にとられつつ、徹志の屈託ない笑顔と奇妙な礼儀正しさを思い出して、笑みがこぼれた。
若いっていいな、彼に愛される女性はきっと幸せだろうなと、何だか甘酸っぱい気持ちになった。
そしてメモ用紙に「サタケ様ご予約」と書いて、ピンクのシクラメンの鉢にセロハンテープで貼付した。
※ティファニーのオープンハート。何だか知らんけど、バブル期に非常に流行っておりました。
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