【18歳以上向け】ハンバーグとシクラメン 

あおみなみ

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徹志の買い物



 徹志はさよりに何かアクセサリーを送りたいと思っていた。
 誕生石を調べたらルビーだったから、何か小さな石のついたネックレスでもと考えたら、彼女に着けてほしいとか、自分自身がいいなと感じるようなものは、大分予算オーバーになる。
 予算ベースで選ぶと、「ああ、予算でここ止まりだったんだろうな」と丸わかりの、いかにも安っぽいものしか買えない。

 若いビンボー学生にとって、理想と現実の乖離はひじょーに激しいのだ。

 さよりが当節はやりの「Tのハートモチーフのネックレス(※下記注)じゃなきゃ受け取らない!」と主張するような女子でなかったので、徹志は救われた。
 もっとも、そんな好みだったら、そもそも2人が付き合うことはなかったろう。

 さよりとの約束の2日前、徹志は、いつも通るバイト先までの動線上に生花店があるのに気付いた。
 もちろん何年も前から――それこそ徹志のバイト先が開業されるより前から――そこで営業していたのだが、普段はほとんど意識することがなかった。

(花か…クリスマスの花ってあるのかな…?)

 スマホやフィーチャーフォンのある時代なら、その場で「クリスマス 花」と検索すれば、何秒もかからず解決するが、徹志は時間を確認してから生花店に入り、「クリスマスの花って何かありますか?」と従業員に率直に聞いた。

「そうですね…。ポインセチア、シクラメン、バラなんかも意外と出ますが」

 ポインセチアはクリスマスを代表する花だし、バラは花を代表するものだ(徹志の感覚)。
 徹志は名前を聞いてピンとこなかった唯一の花について尋ねた。

「シクラメン…って、どの花ですか?」
「こちらです」

 従業員が提示したところには、大小の鉢植えが鮮やかに並んでいた。
 小さめの鉢植えならば部屋に置いておきやすいし、正直金額的にもかなり
 クリスマスらしい真っ赤な花に目がいったが、少し濃いめのピンクの方が、さよりのイメージに合っている気がして、それを選んだ。

「あの、2日後にまた来ます。この花取っておいていただけますか?」
「え、ああ…はい」
「俺は佐竹といいます。そこのカフェでバイトしている大学生なんですが、2日後にカノジョにプレゼントしたいんで」
「ああ、そうなんですか。でしたらメッセージカードも添えられますが…」
「いえ、直接渡すんで大丈夫です!」
「はあ…」

 従業員の女性はやや呆気にとられつつ、徹志の屈託ない笑顔と奇妙な礼儀正しさを思い出して、笑みがこぼれた。
 若いっていいな、彼に愛される女性はきっと幸せだろうなと、何だか甘酸っぱい気持ちになった。

 そしてメモ用紙に「サタケ様ご予約」と書いて、ピンクのシクラメンの鉢にセロハンテープで貼付した。



※ティファニーのオープンハート。何だか知らんけど、バブル期に非常に流行っておりました。
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