forget-me-not メグと大輔 かわいいベイビー

あおみなみ

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キュウリグサ

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 あれはたしか、実家の庭の草抜きを手伝いにいったときだった。

 3月のうららかな日で、私ことひのき千弦ちづるはまだうら若き20代。当時の姓は「桜井さくらい」だった。
 4歳になる前くらいだった芽久美めぐみは、「わたしもやるー」と言いながら、おばあちゃんの大きな園芸用サンダルに足を入れ、よちよち歩み寄ってきた。

「ママァ、このお花かわいい!」
「花…? うわ、随分小さいね?」

 よく目を凝らさないと、それが花であることが認識できないほど小さい。直径はせいぜい3ミリ程度だと思われる。

「でも形はワスレナグサそっくり。かわいいね」
「ワスレナグサ?」
「このお花を大きくしたみたいな花だよ。色も似てる。何て花だろう?」
 
 軍手を脱いで、エプロンのポケットに入れていた携帯を取り出して調べようとしたら、母が「それはキュウリグサだね」と教えてくれた。

「小さい子はそういうのに興味持つからね。あんたもライターなら、そのくらい知っときなさい」
「へいへい」

 そこで「ライターらしく」いろいろ調べてみたら、ワスレナグサと同じムラサキ科の植物で、葉をもむとキュウリのようなにおいがすることが名前の由来だということだ。

 地方によってはタビラコ(田平子)と呼ぶこともあるらしいけれど、こちらは「コオニタビラコ」「ホトケノザ」などととも呼ばれるキク科の植物に使う方がポピュラーな名前らしい。

 ややこしいけれど、「ほうじ茶」のことを「番茶」と呼ぶ人もいる、そんな感じの呼称なのかな。

 芽久美はキュウリグサを1本だけ手に取ってちぎるように抜くと、それをじっと見て、「ワスレ…ワスレ…?」とブツブツ言い出した。

「ワスレナグ?」
「それ。どういうお花か見たい」
「うーん…」

 母はプランターや植木鉢でさまざまな植物を育ててはいたが、たしかワスレナグサはなかった。
 とりあえず携帯で画像検索をして写真を見せると、「わー、きれー。そっくりー」と大はしゃぎだった。
 こうなると、ちょうどいい季節だし、ホームセンターの園芸コーナーにでも連れていって、実物も見せてあげたくなる。

***

「かわいいお花。ちいちゃんと、メグみたいね」
 智也ともやさん(亡夫)は私のことを、名前の千弦から取って「ちい」と呼んでいたので、当時は芽久美もふざけて私をそう呼ぶことがあった。

 悪意のある呼び方ではないので本当は構わないのだが、一応けじめはつけなければと思い、「ママのことは、ママかおかあさんって言おうね」と注意した。
 すると、「はあい、ゴメンナサイ」とぺこっとするしぐさが私の両親に大うけだった。そこで調子に乗ってまた「ちいちゃん」と呼び、私に同じことを注意され、謝る――を3度ほど故意に繰り返した。
 謝りつつも「ちいちゃん」と呼ぶ顔が、いっちょ前に誘い受けのような表情なので(考え過ぎかな)、私としてもノってしまう。
 子供って、本当にこういうの好きよね。娯楽の一環としてやっている感じ。
 「あんただって小さい頃は、こんな感じだったわよ~」と母は言うが、はてさて、全く覚えがない。

 そして、「形が似ている大きいものと小さいもの」を見ると「ちいちゃんとメグみたい」というのも、マイブーム(古いか)的にはまっているようだ。
 おやつに100円ショップで買った「タマゴボーロ」の袋に、大きいひよこと小さいひよこの絵が描いてあったのを見たときも、「これ、ママとメグ!」とか、「こっちがちいちゃんで…」とか言って大はしゃぎだったけど、「そもそもひよこは大きくなったらニワトリになるのでは…」と突っ込むのは野暮な行為だろうか。

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