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1章
第2話 新しい妹と、魔力の暴走
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「安心しろ、俺が救ってやる。だから泣き止めよ、ナナ」
そう言うとナナは目を見開いた。
「何で……貴方がナナとミヨコお姉ちゃんが2人で決めた名前を知ってるの?」
やべっ。ゲームに出て来ていたから思わず呼んでしまったが、彼女が正式にその名前で呼び出されるのは、この研究施設を出た後だった。ナナの方もそれまで泣いていたのに、泣きやむ位びっくりしてる。
「あー、1077だからナナって呼んだんだが、マズかったか?」
そう聞くとナナは何故か一瞬落胆の顔を見せた後、首を横に振った。
「ううん、別に良い……」
そう言ったきりナナは黙り込んでしまう。助けてほしいとは言ったものの、物心がついた時にはこの研究施設に入れられていたナナには、どうすれば逃げられるか検討も付かないのだろう。
……そして、俺が知ってる情報では、ナナが使徒化させられる日に、外部の警察組織――騎士団がこの研究施設を襲撃するはずだった。
「さっき1075番が連れて行かれて、今日中に1080番までやるって言ってたから……」
長くとも後半日ほど生き残れば、俺達は無事救出されることになる――が、俺達が助けられた上で、ミヨコさんも助ける必要がある。
ミヨコさんはゲーム通りだと、一部逃げ延びた研究員に連れられ、より過酷な実験を受けたとシナリオには有った。
なんとしてでも今日、見つけて助ける必要が有る。しかも俺の今の体――1076番はゲーム中だと死んだことに成っていたはずだ。
夢であると思っているのに、自分が死ぬ事に恐怖を覚えながらも気持ちを奮い立たせる。
――今、彼女たちを救えるのは俺しかいない
「とりあえず、この部屋から出るぞ。ナナ」
「どうやって?扉は鍵がかかってるよ?」
そう聞いてきたナナに、俺はニヤリと笑う。主人公たちが数年後にこの部屋を訪れた時、誤って閉じ込められてしまったが、その時部屋の中に研究員が残した暗号のメモを見つけて、扉を開けるというイベントがある。
……まぁそのイベントを見た時は、主人公のチート能力使って扉壊せよ!と思ったものだが、今は有り難く使わせてもらうことにする。
「確か、1140番のベッド横にある戸棚の、上段から2番目だったから……」
頭の中にある記憶を思い出しながら、ベッドの横にすえ付けられた棚に手を伸ばそうとして、身長が足りない事に気づく。
「っ、っ――」
何回かジャンプして手を伸ばしてみるも、後10cmは身長が足りない。
「……その棚に何かあるの?」
ベッドから起き上がったナナがそう言いながら手を伸ばすが、それでもやはり届きそうにない。しかも周りには子供の力で動かせそうなものも無いし――ってああ、そうだ。
「ナナ、俺が肩車するから取ってくれ」
「肩車?」
この世界には肩車の概念が無いのか、単純にナナが知らないのか分からないが、その場でしゃがみ教えてやる。
「俺がこうやってしゃがんでるから、肩に足を乗せて……そうそう。持ち上げるぞ?」
「えっ、ま、待って……」
「いてっ、髪掴むな、髪っ」
持ち上げられるとは思わなかったのか、慌てたナナに髪の毛を思いっきり引っ張られたが、今はそれ所じゃない。
「上から二番目の棚、に、赤い本があるだろ?それ、取って……」
この体が非力なせいで、小さいナナ一人持ち上げるだけでも足がプルプル言うが、必死に耐える。
「取ったよ?って、うわっ」
「いった……って、うおっ」
本を取った時に棚が良く見えてなかったのか、ナナが一緒に落としたナニカが俺の頭に直撃し、それにより体制を崩した俺たちは、2人してその場で尻餅をついた。
「いたた、一体何が……ってコレ、魔法の杖?」
俺の頭に直撃して、赤い本と一緒に転がっていたのは、俺の前腕ぐらいの大きさの、先端に宝玉が付いた杖だった。
「こんなんシナリオに出て来たか?」
思わず疑問に思いそう呟くが、考えてみれば主人公がこの部屋に来るのはシナリオ後半なんだから、こんな取るに足らなそうな杖はアイテムとして表示されなかったのかもしれない。
「お兄ちゃんが欲しかったのは、それ?」
そうナナに聞かれて、俺は思わず自分の耳が正常であるかを疑った。
「ナナ、今何て言った?」
「えっと、欲しかったのはその本なのかなって…」
そう聞かれるが、俺が聞きたかったのはそこじゃない。
「ナナ、今俺のことなんて言った?」
「お兄ちゃんの方が1個番号少ないからそう呼ぼうかなって……ダメ?」
そう言って首をかたむけて不安げに聞いてくるナナに、俺は思わず鼻の穴を大きくしながら首を横に振った。
こんな10歳位の美少女にお兄ちゃんなんて言われて喜ばないゲーマーは居る筈がない……ちなみに俺はロリコンじゃないからな?
「いや、俺は今日からナナのお兄ちゃんだ」
夢の中とは言え、妹ではないキャラからお兄ちゃんと呼ばれるのもまた素晴らしいものだな……と考えながら、当初の目的だった赤い本を拾い上げると、しおりの様に挟まれてたメモを引き抜き、男たちが先ほど出て行った扉に近づいていく。
「ナナは危ないから離れてろ」
そう言うと、転がっていた杖を拾い上げて握ったナナは、首を横に振った。
「ううん、ナナも一緒にいる」
「そか……」
正直扉を開けた瞬間連中に気づかれる可能性がある以上、ナナには大人しくしていて欲しかったが、今は問答をするよりも扉を開けることに専念した。
「3、2、4、7、6……」
メモの記載通りに数字を打っていく度に、手汗をかいていくのを感じながら打ち込み終わると、祈るようにEnterキーを押す。
――ピーッ
甲高い電子音が鳴ったかと思うと、扉が音を立てて開き……前方の廊下には人が居ない事を確認できた。
「ふぅっ……」
まずは第一段階を突破したことに安堵の息をもらしながら振り返って見れば、ナナは呆気に取られた様に扉を見ていた。
本当に空くとは思ってなかったんだろう。
「本当に開いた……」
「はは、兄ちゃんは凄いだろ?」
ゲームの知識を使って開けただけだが、そう言ってどや顔をすると、ナナは目を輝かせた。――だがそれも、次の瞬間曇ることになる。
「おい、何か音聞こえなかったか?」
「あん?こっちにはガキどもの収容施設しかねぇぞ」
聞こえて来たのは大人たちの――研究員たちの声。まずいっ。
「ナナ、逃げろっ!」
「お姉ちゃんを……みよこお姉ちゃんをかえせっ」
俺は背後に居たナナに逃げる様に支持するが、ナナは杖を構えながら俺の脇をすり抜けると、研究員たちの方に走っていく。
「あのバカっ……」
急いでナナを追いかけて止めようとするが、追いついたのは研究員たちの目の前に着いてからだった。
「おい、今日は実験体に杖なんか持たせる予定あったか?と言うか、監視官は何をやってるんだ?」
そう言って研究員の男がナナに手を伸ばした時、それは起こった。
「オマエラなんか、シンジャエッ」
ナナの体が青い光に包まれるのを見た次の瞬間には、研究員の男が吹き飛ばされて向かいの壁に叩きつけられていた。
「貴様っ、なにをしたっ……ぐっ」
そう叫んだ男も、同僚の男同様に壁に叩きつけられる。
「はぁっ、はぁっ……」
「大丈夫かっ、ナナ?」
肩で息をしながら目の焦点が合っていないナナを支えてやると、ぐったりともたれかかって来たため、体制を変えてナナをおんぶしてやる。
「何であんな無茶した?」
「お姉ちゃん……お姉ちゃんを……」
うわ言の様にそう呟くナナを背中に感じながら、俺はうかつだった自分を思わずぶん殴りたくなる。
自分が武器を持っていてかつ、憎い相手が目の前に立っていた時、引き金を引かずに納められる人間がどれだけいるのか俺には分からないが、少なくともナナが感情のまま動きやすいタイプである事を俺はゲームで知っていたはずだ。
「俺がミヨコさんを絶対に連れて帰って来るから、お前は大人しく待ってろ」
そう言ってナナを元居たベッドに寝かしてやると、ナナが持っていた杖を取り上げると強く握りしめ、元来た道を引き返す。
「おにいちゃ……いかないで……」
廊下に出る直前に、ナナの声が聞こえたが、俺は彼女たちの為にも足を止めず、前に進むことに決めた。
そう言うとナナは目を見開いた。
「何で……貴方がナナとミヨコお姉ちゃんが2人で決めた名前を知ってるの?」
やべっ。ゲームに出て来ていたから思わず呼んでしまったが、彼女が正式にその名前で呼び出されるのは、この研究施設を出た後だった。ナナの方もそれまで泣いていたのに、泣きやむ位びっくりしてる。
「あー、1077だからナナって呼んだんだが、マズかったか?」
そう聞くとナナは何故か一瞬落胆の顔を見せた後、首を横に振った。
「ううん、別に良い……」
そう言ったきりナナは黙り込んでしまう。助けてほしいとは言ったものの、物心がついた時にはこの研究施設に入れられていたナナには、どうすれば逃げられるか検討も付かないのだろう。
……そして、俺が知ってる情報では、ナナが使徒化させられる日に、外部の警察組織――騎士団がこの研究施設を襲撃するはずだった。
「さっき1075番が連れて行かれて、今日中に1080番までやるって言ってたから……」
長くとも後半日ほど生き残れば、俺達は無事救出されることになる――が、俺達が助けられた上で、ミヨコさんも助ける必要がある。
ミヨコさんはゲーム通りだと、一部逃げ延びた研究員に連れられ、より過酷な実験を受けたとシナリオには有った。
なんとしてでも今日、見つけて助ける必要が有る。しかも俺の今の体――1076番はゲーム中だと死んだことに成っていたはずだ。
夢であると思っているのに、自分が死ぬ事に恐怖を覚えながらも気持ちを奮い立たせる。
――今、彼女たちを救えるのは俺しかいない
「とりあえず、この部屋から出るぞ。ナナ」
「どうやって?扉は鍵がかかってるよ?」
そう聞いてきたナナに、俺はニヤリと笑う。主人公たちが数年後にこの部屋を訪れた時、誤って閉じ込められてしまったが、その時部屋の中に研究員が残した暗号のメモを見つけて、扉を開けるというイベントがある。
……まぁそのイベントを見た時は、主人公のチート能力使って扉壊せよ!と思ったものだが、今は有り難く使わせてもらうことにする。
「確か、1140番のベッド横にある戸棚の、上段から2番目だったから……」
頭の中にある記憶を思い出しながら、ベッドの横にすえ付けられた棚に手を伸ばそうとして、身長が足りない事に気づく。
「っ、っ――」
何回かジャンプして手を伸ばしてみるも、後10cmは身長が足りない。
「……その棚に何かあるの?」
ベッドから起き上がったナナがそう言いながら手を伸ばすが、それでもやはり届きそうにない。しかも周りには子供の力で動かせそうなものも無いし――ってああ、そうだ。
「ナナ、俺が肩車するから取ってくれ」
「肩車?」
この世界には肩車の概念が無いのか、単純にナナが知らないのか分からないが、その場でしゃがみ教えてやる。
「俺がこうやってしゃがんでるから、肩に足を乗せて……そうそう。持ち上げるぞ?」
「えっ、ま、待って……」
「いてっ、髪掴むな、髪っ」
持ち上げられるとは思わなかったのか、慌てたナナに髪の毛を思いっきり引っ張られたが、今はそれ所じゃない。
「上から二番目の棚、に、赤い本があるだろ?それ、取って……」
この体が非力なせいで、小さいナナ一人持ち上げるだけでも足がプルプル言うが、必死に耐える。
「取ったよ?って、うわっ」
「いった……って、うおっ」
本を取った時に棚が良く見えてなかったのか、ナナが一緒に落としたナニカが俺の頭に直撃し、それにより体制を崩した俺たちは、2人してその場で尻餅をついた。
「いたた、一体何が……ってコレ、魔法の杖?」
俺の頭に直撃して、赤い本と一緒に転がっていたのは、俺の前腕ぐらいの大きさの、先端に宝玉が付いた杖だった。
「こんなんシナリオに出て来たか?」
思わず疑問に思いそう呟くが、考えてみれば主人公がこの部屋に来るのはシナリオ後半なんだから、こんな取るに足らなそうな杖はアイテムとして表示されなかったのかもしれない。
「お兄ちゃんが欲しかったのは、それ?」
そうナナに聞かれて、俺は思わず自分の耳が正常であるかを疑った。
「ナナ、今何て言った?」
「えっと、欲しかったのはその本なのかなって…」
そう聞かれるが、俺が聞きたかったのはそこじゃない。
「ナナ、今俺のことなんて言った?」
「お兄ちゃんの方が1個番号少ないからそう呼ぼうかなって……ダメ?」
そう言って首をかたむけて不安げに聞いてくるナナに、俺は思わず鼻の穴を大きくしながら首を横に振った。
こんな10歳位の美少女にお兄ちゃんなんて言われて喜ばないゲーマーは居る筈がない……ちなみに俺はロリコンじゃないからな?
「いや、俺は今日からナナのお兄ちゃんだ」
夢の中とは言え、妹ではないキャラからお兄ちゃんと呼ばれるのもまた素晴らしいものだな……と考えながら、当初の目的だった赤い本を拾い上げると、しおりの様に挟まれてたメモを引き抜き、男たちが先ほど出て行った扉に近づいていく。
「ナナは危ないから離れてろ」
そう言うと、転がっていた杖を拾い上げて握ったナナは、首を横に振った。
「ううん、ナナも一緒にいる」
「そか……」
正直扉を開けた瞬間連中に気づかれる可能性がある以上、ナナには大人しくしていて欲しかったが、今は問答をするよりも扉を開けることに専念した。
「3、2、4、7、6……」
メモの記載通りに数字を打っていく度に、手汗をかいていくのを感じながら打ち込み終わると、祈るようにEnterキーを押す。
――ピーッ
甲高い電子音が鳴ったかと思うと、扉が音を立てて開き……前方の廊下には人が居ない事を確認できた。
「ふぅっ……」
まずは第一段階を突破したことに安堵の息をもらしながら振り返って見れば、ナナは呆気に取られた様に扉を見ていた。
本当に空くとは思ってなかったんだろう。
「本当に開いた……」
「はは、兄ちゃんは凄いだろ?」
ゲームの知識を使って開けただけだが、そう言ってどや顔をすると、ナナは目を輝かせた。――だがそれも、次の瞬間曇ることになる。
「おい、何か音聞こえなかったか?」
「あん?こっちにはガキどもの収容施設しかねぇぞ」
聞こえて来たのは大人たちの――研究員たちの声。まずいっ。
「ナナ、逃げろっ!」
「お姉ちゃんを……みよこお姉ちゃんをかえせっ」
俺は背後に居たナナに逃げる様に支持するが、ナナは杖を構えながら俺の脇をすり抜けると、研究員たちの方に走っていく。
「あのバカっ……」
急いでナナを追いかけて止めようとするが、追いついたのは研究員たちの目の前に着いてからだった。
「おい、今日は実験体に杖なんか持たせる予定あったか?と言うか、監視官は何をやってるんだ?」
そう言って研究員の男がナナに手を伸ばした時、それは起こった。
「オマエラなんか、シンジャエッ」
ナナの体が青い光に包まれるのを見た次の瞬間には、研究員の男が吹き飛ばされて向かいの壁に叩きつけられていた。
「貴様っ、なにをしたっ……ぐっ」
そう叫んだ男も、同僚の男同様に壁に叩きつけられる。
「はぁっ、はぁっ……」
「大丈夫かっ、ナナ?」
肩で息をしながら目の焦点が合っていないナナを支えてやると、ぐったりともたれかかって来たため、体制を変えてナナをおんぶしてやる。
「何であんな無茶した?」
「お姉ちゃん……お姉ちゃんを……」
うわ言の様にそう呟くナナを背中に感じながら、俺はうかつだった自分を思わずぶん殴りたくなる。
自分が武器を持っていてかつ、憎い相手が目の前に立っていた時、引き金を引かずに納められる人間がどれだけいるのか俺には分からないが、少なくともナナが感情のまま動きやすいタイプである事を俺はゲームで知っていたはずだ。
「俺がミヨコさんを絶対に連れて帰って来るから、お前は大人しく待ってろ」
そう言ってナナを元居たベッドに寝かしてやると、ナナが持っていた杖を取り上げると強く握りしめ、元来た道を引き返す。
「おにいちゃ……いかないで……」
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