バッドエンドのその先に

つよけん

文字の大きさ
24 / 34
第2章「伝説の剣の行方」

額の傷3

しおりを挟む
 俺は集中して魔力を高めながら詠唱準備に取り掛かる。

『地上に存在するすべての生命の灯の中に存在する聖霊よ……今ここに力を震わす事を願う……』

 初期起動は完璧だ。失敗する事が、まずありえない事なのだがな。
 そういえば以前に使用した時に、これ以上使わないだろうと啖呵を切ったはずが、結局使用している事を思い出す。
 色々巻き込まれてしまった分、これからもお世話になりそうだわ。
 そうこう考えている内に、魔力量が増幅し安定した状態になる。
 テンプレートを見ているように、俺はそのまま一気に魔力を放出させた。

『……我の前へ顕現せよ……ウィル・オ・ウィスプ!!』

 目の前は魔法瓶に閉じ込めたフレイムボールの光を軽く塗り替える光を放ち、以前と変わらぬ輝きを俺達の目の中に届けてくれる。
 やっぱ眩しいわ。
 クレアもナナも目を手で覆い瞼を細めながら、空中にゆらゆらと漂うウィルを見つめている。

「……お呼びでしょうか、トモキ殿」

 あれ?いつもの元気なウィルじゃ無い気がする。
 高音域の声は健在だが召喚されてからのノリと声のテンションが落ち込んでるように聞こえた。
 理由は後だ!まずはクレアの事を聞いて俺の腕を再生させてもらおう。
 順序を間違えるとクレアの事を聞けずに、すぐに消えてしまうからな。

「ウィルに聞きたい事がある」
「して……その内容とは?」

 やはりいつものウィルじゃないような喋り方だ。これでは俺の調子も狂ってしまうじゃないか。

「あ、あぁ。以前にクレアの傷を完治させてもらった件なんだが、額の傷だけ残っているみたいなんだ」

 ウィルは無言のままゆらりと空中を滑空して、クレアの額を見に行く。
 クレアは眩しそうに瞼を閉じた。
 しばらく確認するように近くを左右に動くと、答えが出たように俺の方向へ戻ってくる。

「これは……」

 ただ俺の目の前に光の玉が漂っているだけで表情などわかるはずもないのに、何故だろうか門左衛門戦でルナが見せた表情と瓜二つの感情を自分に向けている気がする。
 俺はその感覚に息をのんだ。
 しばらくしてからウィルは慎重に言葉を選びながら語りだす。

「ルナから情報は聞いていて、我々聖霊達も困惑を隠しきれていない事をご理解ください……」
「わかった」

 何かただならぬ空気を感じ取ったようで、クレアとナナも固唾を呑んでいた。

「私の魔法でクレア様の額の傷が治らなかった正体は『エラー』によるものです」
「ルナが最後に残した言葉と同じ原因か」
「そうです。あの後こちら側の世界へ帰ってきたルナが凄く怯えている事に驚きました」

 こっちの世界でも違和感しか残らない消え方をしたから無理もないか。
 俺は更に真剣な顔をしてこの後のウィルによる話に耳を傾けた。

「トモキ殿が我々聖霊を生み出してくれた事は覆りようのない事実です。どのような事が起ろうとも大抵は我々に被害が及ぶ事はありません。しかし、その予想を超えた遥か先の不測の事態に陥りました」
「それがエラーだと」

 俺の言葉にウィルは頷くように、浮遊している体を上下に動かした。

「その後にルナが落ち着いて我々に話をしてくれたのは、トモキ殿が目覚める2日前の事です。ルナが重い口を開いて語ってくれました。トモキ殿が構成された設定なら、ルナが持つ絶対効力のある魔力が優勢に働くはずでした。しかし、その魔力が跳ね返された……その正体こそがエラーだと言っていました」

 俺は頭の中で整理しながら聞いていたつもりだが、ウィルの話に自分自身もついていけない部分がある。
 結局エラーとは何なんだ……確かに俺が作った魔法はこの世界には絶対効力だったはず。
 それがどうして?
 その答えを導き出すように、ウィルは話を再開した。

「エラーの正体はプログラム上に発生しているバグです」
「バグ?待て待て!ここは俺が完成された世界の中だろ?」

 俺の言葉は思いのほか大きく出てしまい、クレアとナナがびっくりしている。
 状況を判断して我に返ると、咳払いをしてウィルに落ち着いて問い掛けた。

「じゃぁ、どうしてバグが発生しているんだ?」
「そうですね……我々にも詳細は分かりません。しかしですね……」

 ウィルは含みのある言い方をして、次の言葉を紡ぎだした。

「エラーコードの正体は、普通ならこの世界に存在していないオブジェクトが何らかの理由で出会って干渉し、それによって引き起る物だと言う事だけは分かっています」

 俺はその言葉を聞いてある事を思い出した。
 門左衛門と戦っているときに俺以外の【創造者】がいると言う仮説。
 今から思う事も仮説の範囲内になってしまうのだが……もしも、その【創造者】がこの世界と相反する世界の設定を持っていたとするならば、門左衛門にルナがフルムーンドロップを使いキャンセルされた事も、門左衛門にかけた魔法が影響してエラーが発生したと判断が出来るはず……。
 それにクレアの額の傷と門左衛門との拒否反応の正体も何となくだが理解が出来る。
 自分の中で一通り整理をつけて、頭の中で今後の方針について少し考えてみた。
 もし、そいつがナナを陥れた元凶だったと思うと、非常に腹が立ってきた。許せん……。
 Xキャリバーの情報もそうだが、見つけたら程度にしか思っていなかった元凶の奴を確実に探しに行くことも視野に入れよう。
 俺は数秒間考えた後に言葉を発した。

「ある程度の事は理解した。ありがとな!」

 ウィルは表情こそ読めないが、空中で八の字を描きふわふわと少し喜んでいる感じで飛びまわっていた。
 しばらくするとピタッと静止して、ウィルは言葉を発する。

「して……トモキ殿……ご用件を……」

 エラーの事に気を取られていて、本来の使い方を完全に忘れていた。
 俺は慌てながら右腕を前へ出して、ウィルに治療してほしいと頼んだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...