バッドエンドのその先に

つよけん

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第2章「伝説の剣の行方」

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 俺はウィルに何事もなく右腕を再生してもらい、色々と考えながらナナの部屋を片付けた。

「ふう、やっと終わったね」
「お、おう」

 ナナが額の汗を腕で拭いながら、微妙な顔をしている俺へと話かけてくる。
 急に話しかけられたので空返事しか返す事が出来なかった。
 時間は丁度昼頃を回ったあたりだろうか、お腹の中に何か食べ物が欲しいぞと訴えかけられている気がする。
 そういえばナナとクレアはさっきの俺達の会話を聞いて何か思わなかったのだろうか?
 俺とウィルの話がぶっ飛び過ぎていて内容について来れていない様子だったので、何か情報を聞いてくるかと思ったのだが2人は片付けに必要な事以外は一切なにも雑談さえもしていなかった。
 こちら的にはあまり知られたくない内容ではあったので、聞いてこないのであれば有難いのだが……。
 そんな事を少し考えているうちに、突然と自分の下腹部が唸りを上げて叫びだす。
 しばらくの間、部屋に静寂が訪れた。その間に俺達3人は目を丸くしながら交互に目を合わす。
 そして、程なくして部屋いっぱいに朗らかな笑い声が広がった。
 最近、張り詰めた空気ばかりだった気がするので、こんな感じで和む時間がとても心地いいな。

「ひと段落したからセカン街まで行って食事してその後に伝説の剣の情報収集でもしようか」

 その後、率先するようにナナがこの後の方針の案にして喋ってくれる。
 その案には賛成だ。2人は気づいていないだろうが、なにせ俺の腹が頷くように軽く唸ったのだ。異論はない!
 俺とクレアは深く頷くと、全員でナナの部屋を後にしようとした時だった。
 バタッ……。
 後方で何かが倒れる音がして、振り向くとその場にクレアが倒れ込んでいた。
 突然の事にかなり焦る。

「クレア!」

 俺とナナは同じトーンでクレアの事を呼び、同じタイミングで傍に駆け寄った。
 心配そうに見つめて、俺は彼女の肩を抱きかかえる。

「大丈夫か!?」
「ご、ごめんね……ただ立ち眩みが起きただけ。まださっきの疲れが残ってるみたいなの……だから街へは2人で行って来て」

 力なさそうにクレアは呟いた。
 無理もないか……先程、門左衛門との一件があったばかりだと言うのに、何事もなく部屋の片付けをしていたのだ。
 クレアは責任感が強く自分が関わった事だと、休めと言っても大丈夫だと一点張り。
 やはり無理にでも休ませるべきだったな。
 俺は彼女の体を抱きかかえると、そのままナナのベッドへと寝かせた。
 流石にクレアを置いてナナと2人で行くのは何か違う気がする。
 俺は一言補足するように喋りだしたのだが。

「いや、ここは3人で行く方が……」

 ぐぅ~。
 俺が発した声と共に、空気を読まない俺のお腹の音がハーモニーを響かせる。
 おいおい、いくらお腹減っていても今ぐらい空気を読んでくれよ……俺のお腹。
 それを聞いたクレアは、少し微笑みながら優しい口調で喋りだした。

「それに少しでも伝説の剣の情報があった方がいいでしょ?私なら大丈夫だから2人で行って来て」
「じゃぁ、私も残るよ。だからトモキ兄ちゃんは、安心して情報を仕入れてきて!」

 クレアの言葉に被せるようにしてナナは、私に任せてと自信満々に言葉を投げかけてきていた。
 それなら心配はいらないと思うが俺は3人で行きたいんであって1人で行きたいわけじゃ。
 すると突然、クレアは壁に指を差してナナに言葉を掛ける。

「ねぇさん……あそこの壁に仕込みましたね」

 その瞬間にあからさまに表情が読み取れる程、ナナが動揺を始めた。
 ん?どういう事だ?
 俺は純粋にナナに問い掛ける。

「どうした?」
「い、いや、何もないよ?」

 ナナの動揺している回答に、クレアがニコっと微笑みを掛けていた。
 何だろうか、少し悪意がある微笑み方だな。気になる。
 それにしてもあの壁に何があると言うのだ。とても興味が湧いてくる。
 俺はその壁に引き付けられるように無意識に歩いていた。
 それを見たナナは血相を変えて俺の腕を掴むと、そのまま俺を引き連れて部屋を出ようとしている。

「お、おい!ナナ?」
「やっぱりトモキ兄ちゃんとセカン街に行く事にした!クレア!無理せず私のベッドで安静にしとくのよ!」

 ナナは部屋を出る数秒間でクレアにとてつもない早口を言って、さらっと要件を伝えると俺と一緒に廊下へと出た。
 廊下をスタスタと走る俺達の後ろから、クレアのいってらっしゃいと言う声が聞こえていた。
 俺は突然のナナの行動に戸惑う事しか出来ない。

「おい!急にどうしたんだよ」
「べ、別に何もなかった!何も見てない!何も気にしちゃだめだからね!」

 そんなにあの壁の向こうに、見られてはいけない物があるのか。
 個人的にはすごく気になるから、後で調べてみようかな。
 などと考えていると、俺の考えなどお見通しとナナは釘を刺してきた。

「この手は使いたくなかったけど、あの中の物を見たらお父様に今朝の事を言うから!絶対見ちゃだめだから!」

 そう言われるとぐうの音も出ないのだが。
 だが気になる。俺は渋々と言った表情を作り。

「わかったよ!」

 ナナは俺の顔を疑いの目で見ながら、徐々に走るスピードを落としていった。
 そのまま歩くスピードまで落ちて、自然にその場に止まる。

「じゃぁ、指切り」
「お、おう」

 俺とナナは小指と小指をつなぎ合わせて、約束の契りを交わしたのである。

 その後、俺達は成り行きとは言えど半強制的にセカン街に行く事となったので、アジトの外へと繋がっている抜け道までたどり着いた。
 ナナから移動途中に抜け道は誰にも見つからないようにと、速やかに移動する事を言われているがどんな場所か想像が出来ないままだった。
 そろそろ出口も近いみたいだ。
 百閒は一見に知かず!と一本のロープをよじ登って警戒しつつ外に出ると。
 予想の遥か上をいっていた目の前の光景に、思わず自然と声が出てしまった。

「マ、マジかよ……」

 しかも出てきた場所は、何の意図もなく自分がここに設置していたただの井戸だった。
 なんの策略もなく設置した井戸がこんな風に使われているとは、思いがけない事である。
 いや、そこに驚いたわけじゃないのだが。
 俺の様子を先で見ているナナが、手招きしながら小声で呟いていた。

「何を立ち止まってるの!確かに驚くかもしれないけど、早く行かないと敵に悟られちゃうよ」
「あ、あぁ……」

 俺はナナに促されるままその場を移動をした。
 敵に悟られないように足音を極力抑えつつ全力でその場所から走りだす。
 何故、予想を遥かに超えて驚いてしまったかと言うと、アジトを出た先がサド王国と目と鼻の先だったからである。
 昔はアンティエーゼ家が納めていた王国だったが、2年前の大事件が起こってから直ぐに魔王の手によって瞬く間に国は滅ぼされたと聞く。
 そりゃ急いでここを離れないと魔王配下の者に見つかってしまう訳だな。
 そんな事を思いながら俺は少し首だけ振り返って城をチラっと脇見する。
 そこは昔も今も変わらない立派な外装が目に入ってきた。
 本当に変わらないな……。
 脳裏には楽しかった城内の記憶がポツポツと蘇る……しかし、今は魔王ディスガスが支配している城。
 噂では国王や女王は生かされているらしいと聞いたが、酷い扱いをされているのは魔王が支配している現状を見れば何となく察しが付いた。
 すべて自分が犯した過ちだと思うと、心にナイフが突き刺さったような痛みが込み上げてくる。
 俺は心臓の辺りを手でグッと握りしめて、耐えるようにして唇を噛みしめ、無意識的に移動速度が上がっていく。
 そのまま下を向きながら走っていると、俺はナナをいつの間にか追い越していた。

「え?ちょっ、ちょっとトモキ兄ちゃん?」

 俺は無心のまま……ナナは俺に追い付こうとしながら、俺達はセカン街へ向かったのである。
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