クロスロード

つよけん

文字の大きさ
56 / 93
第一部ルート5「つばさ」

侵入6

しおりを挟む
く、苦しい…。

私は訳も分からない無意識の中、何かを掴むかのようにもがき続ける。

次第に視界が暗闇から光を集め始めて、だんだん色付き出した世界がふわっとクリアに浮かび上がってきた。

「ごっほっ…ごっほっ…。」

水を吸い込んでむせ返る。
苦しかった思いをしていたのは、溺れている一歩手前だったからだ…。
人が3人ぐらいすっぽりと入るぐらいの大きな試験管内に私は入れられていた。
その内部に上から大量の水が注がれてきている。

「意識を戻してしまったんですね。そのまま無意識のままだったら苦しまずに済んだのに…。」

誰かが話しかけてきた。
試験管越しに見える人物は私を捕らえた機人とは明らかに違う…。
私もよく知っている種族の部類だが、何故こんな場所に居るのかは理解不能である。

試験管の水は私の腰辺りまで迫ってきていた。
このまま水が溜まり切ったら私は苦しみながら溺れ死ぬことになるだろう。
目の前の人物が言っていたように、死ぬなら意識がないままの方が余程マシだろう。

「ここからだして!」

私は必死にガラスを全力で叩き前の人物に訴えかける。

「無駄ですよ。そんなやわな力じゃ壊れませんから…。ご主人様の力があれば別の話しですけどね。」

冷静に目の前の人物は私に語りかけてくる。

試験管の水が私の胸あたりを通過する頃。
少し興味が沸いてきた私は抗う事をやめて、この子と話してみたいと思い問い掛けてみる。

「あなた、故人のメスよね?」
「私に興味あるのですか?天人はオスにしか興味が無いと思っていましたけど。」

どうやら正解のようだ。
質問に質問で答えられたのは、少し癪だけど質問を続けてみる。

「養殖場のメス豚が何故知識を持って、こんな所にいるわけ?」
「…答える義務はありません。」

そう簡単に口は割らないか…。
試験管の水が肩まで上がって来た時、故人は機械の操作を一旦やめて少し私に対しての疑問を口にした。

「死ぬのが怖くないのですか?」
「そりゃ怖いわよ…。でもここで暴れても無駄な体力使うだけだから。」

私は何の根拠もない自信に満ちた表情でこの後どうにかなるような言いぶりをする。
試験管の水が顔付近まで近づき呼吸をする事が困難になり始めた頃。

「もう助かりませんよ。諦めて抗ってください…。」
「残念だけどここ数日の私は悪運に好かれているみたいで、自分でも何故だか解らないんだけど根拠のない自信から死ぬ事はまだ出来ないと思うわ…。」

そして試験管の水が私を全て呑み込み、呼吸ができなくなった。
目の前の故人は辛そうな哀れんだ表情で最後に

「さようなら…。」

と悲しそうに言ったその数秒後の事。
私は意識が朦朧としている最中、笑顔を不気味に浮かべる。
目の前の故人は、不思議そうに首を傾げる。
そして故人の更に後方で床が少し盛り上がった事に私は気づいた。
大きな音と異変が故人にもわかり後ろを振り向くと、盛り上がった床が更に盛り上がった。
床のコンクリートが轟音と共のぶち抜かれて、底からハクシが勢いよく飛び出してきた。

「待たせたな!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

処理中です...