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節約生活1章「どうしてこうなった!」
魔女
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俺はスラム街で飲み水を確保する事が出来たのだが、さすがに飢えには逆らう事が出来ず、食料を何とか入手出来ない物かと考えていた。
「はらへった…。」
その様子を見ていた子供達が、声を掛けてくる。
「ともおっさん!綺麗な水の作り方を教わったお礼に、僕達が普段から利用してるスラム街の食料庫に案内するよ!」
そんな場所があるのか!
ともおっさんと言う呼び名は、完全に定着してしまい、今更変更は出来なさそうだ…。
食料庫の事を聞いた俺のお腹の虫が、物欲しそうに催促を掛けて引っ切り無しに鳴り響いている。
何でもいいからお腹に物を入れて空腹感をどうにかしたかったので、ここはひとつ子供達に甘えてみる事にした。
そして、子供達に案内されるがままに、しばらく歩いた先にその場所があった。
「着いたよ!」
「ちょ、ちょっと待てや!」
俺のブサイクな顔が、もっとひん曲がってしまう程、驚いてしまう。
いや、そうじゃない…この感情は、驚きを通り越していて、呆れの感情の方が強く前に出ていた。
確かにそこには、大量の食べ物があったのだ。
ただ一点だけ、おかしな点を除けば、食べ放題のパラダイス状態なので、スラム街で生きる人々ならば大切なエネルギー源と言えるだろう。
「ともおっさん!今日はラッキーだよ!お城でパーティでもあったのか、お城の料理が沢山あるよ!」
子供達は嬉しそうにして、食べ物の山へと駆け寄っていった。
「ともおっさんは、もう僕達が済むスラム街の仲間として僕達が勝手に認定したよ!だから遠慮なく、気が済むまで食べていってね。」
無邪気な顔をして、食べ物の山を勧めてきた。
だが俺は、しばらくの間その光景を見て絶望をして、言葉を発する事が出来なかった。
実際は数秒間だけ止まっていただろうが、体感的には5分ぐらい止まった後に、我に返り咄嗟に言葉を吐き出した。
「ちょ、ちょっと待ってくれっ!」
食料の品定めに夢中だった子供達は、俺の声に手を止めてこちらを見る。
「どうしたの?ともおっさん?」
「すまんが…俺にはここにある貴重な食べ物を口にする事が出来なさそうやわ…。」
それもそのはず、子供達が選別している食べ物は、全て異臭を放っている生ゴミみたいな物なのだ…。
おかしな点とは、ここが裕福層が利用する生ゴミ処理場と言える場所であろう。
そして、俺が城で見覚えのある食べ損ねた朝ご飯が、何の輪廻かは知らないが運命に導かれ再開を果たし、散乱している光景が勝手に目に飛び込んできた。
「大丈夫だよ!腐っている物と見分けを付けられれば、無料で豪勢な食事に有り付ける究極の贅沢だから!」
「いやいや…そう言う問題やあらへんねん…。」
本当に異世界での生活で、人生に追い込まれて廃人になってしまった時に、お世話になるかも知れないが、まだそこまで俺は追い込まれた状況じゃ無いと信じたい…。
「お前達の行為は、ホンマに有り難くうけとったるわ…でも今の俺には、まだこれを食す資格?…がまだ無い気がするんや…。」
「で、でも、お腹減ってるんでしょ?とっても美味しいよ?」
素手で掴んだ料理を俺の口元まで運んでくる。
このまま口を開けて、まだ傷みきれてない食べ物を食べられれば、どれだけの開放感があるのだろうか…。
俺は人間の常識枠に留まる為に、必死の形相で目の前の物を押し退けて、差し出された物を拒否する。
「せっかく、教えてあげたのに…。」
子供達は暗い顔をして俯き、落ち込む様子が自分の心に深く突き刺さった。
無理にでも食べてあげた方が良かったのだろうか…。
いやいや…やっぱあれは、無理や…。
「せ、せや!この他にも食料の入手方法はないか?場合にもよるけど、それなら食べれるかもしれへんし…。」
俺はフォローのつもりで、別の話題を必死に提案してみた。
食べ物を選別しながら食事中の子供達は、真剣な表情を浮かべながら考え始めてくれた。
ちょっとは淀んだ空気を払拭出来た気がする…。
ちょっと経った頃、その中の1人が浮かない顔をしながら、こちらへ回答を返してくれた。
「別の方法を使って食料を入手する方法があるけど、今は危険地帯になってるし、あまり美味しい物も取れないからオススメはできないよ…。」
「そうか!危険でもなんでもいいから、その方法を教えてくれ!」
俺は興味津々に食い入るように話を聞き出そうとする。
「元々、僕達スラム街の人間は、この食料庫を見つける前までは、自然に生えている物が主食だったんだ。キノノやモリナって言う物をよく食べてたよ。でも、しばらく森に採取へ行かなくなったせいで、モンスターの住処になっちゃったみたいで、迂闊に森に近づけなくなったんだよね。」
「そうか…分かった。だったら要するには、モンスターに隠れて採取すれば、問題ないやろ!」
俺は自信満々に答えた。
「でも、それは危険だし、もし見つかりでもしたら確実に死んじゃうよ?…ともおっさん弱そうだから、やめといた方がいいと思うよ…。」
「誰が、弱そうやねん!こう見えても戦場で生き抜いた過去があるんや!大丈夫や!任せとけ!」
ついこないだの情け無い出来事を、良い内容へと解釈して、自慢げに子供達に話をした。
「それってスゲーじゃん!」
「ともおっさん、英雄なん?」
「勇者だったの!?」
すごい食い付きようで、子供達が引っ切り無しに俺を質問責めしてくる。
盛って話をしていたが、ここまで言われると少し気分が良くなってきて、さらに調子にのって天狗になってしまった。
これ以上言うと、何か取り返しの付かない所まで話をしてしまいそうなので、無理矢理に話を変えて自重をする。
その後、俺はスラム街から森に抜けれる道を子供達に教えてもらい、その入り口付近まで案内してもらった。
「ここから、まっすぐ草原を抜けると、キノノとモリナの採取できる森に入れるよ。」
「おう!サンキューな。ここまで案内してくれれば、後は何とかなると思うわ。」
子供達は俺が盛って戦場を生き抜いたと話しをしたが、ちょっとは心配してくれているようで、浮かぬ顔でこちらを見送ろうとしている。
水生成の時よりは可愛げがあると、今では思えるような仲になっていた。
「道案内をする途中で話してたけど、キノノとモリナには毒がある物があって、見分けるのがとても困難な食材だよ。」
「茶色い丸に細い棒が付いたのがキノノで、濃い緑色をしたクルッと巻いてる細い草がモリナやろ?」
「そうそう、形の特徴は今言ってくれたように簡単な物だけど、毒入りかどうかは専門知識が無いと見分けられないからね。採取した後に無闇に食べずに、持って帰ってきてくれれば選別は、僕達がしてあげるよ。」
「選別はして貰うが…俺が取ってくるもんやから、欲しい言ってもやらんからな!!!」
「い、いらないって…。」
苦笑いしている子供達を横目に手を振って、俺は食料を確保するべく森へと出発をする。
しばらく道なき草原をまっすぐ進んでいると、その森は直ぐに姿を現した。
「なんか想像以上に、中は暗いねんな…。」
中に入れば迷ってしまい後戻りが出来ないんじゃないかと思うぐらいの薄着味悪い森は、俺達人間を拒むようにして木々が無数に生い茂っていた。
恐怖心を捨てて、生きる為だと心を奮い立たせ、食料をなんとしても入手すると言う一心で、危険を覚悟して中へと足を踏み入れる。
少し躍起になっている部分もあるが、人生捨ててまで腐っている物を食べるよりか、自分で自給自足したほうが人間性は保てるはずだ。
お腹が減り頭がおかしくなっていると言われれば、あながち間違いでは無い気もするが、やはりまだまだプライドは歪ませたくないのである。
と言うよりも、そう言う考えを引っくるめて思い込まなければ、こんな場所に飛び込む勇気など、俺には毛頭無かった。
「大丈夫!大丈夫やで!」
自分に自分で問いかけて、自問自答しながら奥に進んでいく。
意外にも森の奥へと入ってみると、もっとモンスターがウジャウジャとはびこっている事を想像していたのだが、周りには風と木々の揺れる音だけが静まり返って、この空間を支配していた。
トントン拍子に事が運び、辺りを警戒しつつどんどん奥へと進んでいく。
すると一面に沢山のキノノとモリナらしき物が生えた場所へとたどり着いた。
「これやな!一杯とったるで!」
俺は意気込みを吐き捨てて、一気に緊張の糸を緩め、スラム街から持って来てきたカゴ一杯になるまでキノノとモリナを詰め始めた。
気を緩めた反動で、食料を夢中で採取していたようで、奥へ奥へと吸い込まれるようにして迷い込んでいく。
気がついた頃には、時既に遅し…。
「あ、あれ?ここどこや?」
普段から慣れている人でも、この森は厄介な場所として有名で、別名『迷いの森』とも言われているらしい。
その事を今更になって子供達に言われていた事を思い出した。
「しまった!奥に入り過ぎると、方向感覚が麻痺するから気を付けろ言われてた気がするな…」
食料の事にしか興味が無く、他の注意点を耳に入れていなかった事が原因の一つだろう…。
とりあえず、来たであろう道を帰ろうと思った瞬間、突然目の前の木が動き始める。
「うわっ!なんやこいつ!」
大木が二足歩行で立ち上がった事を確認した。
突然の出来事に体が動く事が出来ず、木のモンスターはこちらへ不意打ちのように攻撃を仕掛けてきた。
反射的にその攻撃は避ける事に成功したが、そのまま腰が抜けてしまって一切体を動かす事が出来ない。
「も、もう、おしまいやぁ!!!」
俺の叫びも虚しくブサイクな顔面に目掛けて、木のモンスターの触手が襲いかかってくる。
反射的に目を瞑り、死を覚悟した。
…。
しかし衝撃はいつまで経っても訪れず、しばらくの間、静寂が流れる。
「…。って、あれ?痛く?ない?」
俺はゆっくりと恐る恐る目を開けてみる。
すると目の前には、ギリギリで木の触手がピタリと止まって動かなくなった木のモンスターが佇んでいた。
その後、モンスターは何事も無かったかの様に、その場で灰となり視界から散り散りに消え失せていく。
「まったく…。こんな危険な森の奥に、一人で入るとか、頭おかしい…?」
森の奥の少し距離がある場所から、女性の声がボソボソとした口調で風に乗ってふんわりと聞こえてくる。
その声のする方向へ体を向けて、しばらく待っていると、奥の方から黒紫のローブに包まれた魔女っぽい子が歩み寄ってきた。
「だ、だれやねん!お前!」
「命の恩人に向かって、その態度はひどくないかな?ともお。」
「え?今のお前が助けてくれたんか?」
俺の言葉に軽く頷き、自分の要件を淡々と無表情で勝手に話し始めていた。
「こっちから会いに行く手間が省けたわ…。ともお、ちょっと私の家に来なさい。」
「おい!呼び捨てとは、聞き捨てならんな!お前の親はどういう教育しとるねん…まったく最近の若いもんは………って、なんで俺の名前しってるねん!!!」
その質問に対しては、ぶっきらぼうに回答を返してくる。
「私はあなたを、一方的に知っているだけ。ただ、それだけ…。」
何か意味深な言い方をされて、何とも言えないモヤモヤが一層と深まるばかりだった。
そんな時に、思い当たる節がある事を思い出して口にしてみる…。
「わかった!お前俺の熱狂的なファンやろ!」
「…。」
無言の静寂が、この場の空気を飲み込んだ。
俺がかなりの見当違いの答えを、さらっと述べたせいか、左右の色が違う瞳を大きくパチクリと瞬きさせて、魔女っぽい子は呆れながら喋りだした。
「ファンではないわ…。あなたは私にとって重要な鍵になる人なの。」
「鍵?」
またしても、よくわからない事を言われ少し混乱した。
だが多少の混乱ぐらいなら、あの日に比べれば何倍もマシである。
そして俺は思い当たる節の2個目の言葉を、ぼそりと口に出してみる事にした。
「使い魔の小柄な男…。」
その言葉を聞いて、魔女っぽい子の無表情な顔が、少しだけムッとした表情になった気がした。
「ともおは、私が守護させた大切な使い魔を見殺しにした…。しかもその命よりも金貨3枚の方が大事だったみたい…。だからムカつくから、呼び捨てで呼んでるの…。」
「あ、あれは、言葉の綾がそう言わせただけであって…。」
もう一度、よくわからない静寂が俺達を包み込んだ。
俺はこう言う間が分かりにくい人間は、少々苦手な傾向にあるのかも知れない。
「…まぁいいわ…。済んだ事をとやかく言う必要は無いもの…。だから、私の家に来なさい。」
「よ、よくわからんが、とりあえずお前の家に行けば、なんか分かるようにちゃんと説明してくれるんやな!」
魔女っぽい子は、静かに頷いた。
「わかった。ほな、家に連れてってもらおうか。」
俺の言葉に反応を示して、後をついて来いと無言で魔女っぽい子は移動を始めた。
その後に続き、俺も一緒に歩き出す。
薄暗い森の中を迷ってる様子もなく、さらに奥へと躊躇なく入っていく。
しばらく進んだ先で、突然何かを思い出したように、その場に急に立ち止まり、一呼吸置いて喋り始めた。
「あ、そうだ。私の名前は『リーゾ・リ・フィールド』って言うの。気軽にリッフィーと呼んでもいいわよ。ともおの名前はもう知ってるから、言わなくていいよ。」
また唐突な自己紹介の仕方だった。
それでも、名前がわからないよりかはマシだな。
リッフィーのペースに押され気味ではあるが、一応確認の念を込めて呼び掛けてみよう。
「お、おう、わかったで…リッフィー…。」
「………気安く呼ばないで…。」
「どっちやねん!」
俺のツッコミに対して、また静寂が包み込んだ。
なんやねん、こいつ。
めっちゃ、やりにくいわ…。
しばらく間を置いて、リッフィーが口を開く。
「…冗談よ…。」
分かりにくい冗談と言う言葉に、またペースを崩されてしまった。
「着いたわよ。」
「へ?いつの間に…」
立ち止まった意味は、他にも到着した事も兼ねていたらしい…。
少し奥に入った所に、暗い森の中に一箇所だけ太陽の光を神秘的に浴びている、木造の小屋が見えていた。
「あれが、私の家…。」
「なんかさっきの木のモンスターとかに、一発で壊されそうやな…。」
「私の結界が貼ってあるから無理…。」
簡素な言葉で淡々と俺の言葉を流された。
そして、リッフィーは自分の家の扉を開けて、俺を中へ入るように案内する。
「はらへった…。」
その様子を見ていた子供達が、声を掛けてくる。
「ともおっさん!綺麗な水の作り方を教わったお礼に、僕達が普段から利用してるスラム街の食料庫に案内するよ!」
そんな場所があるのか!
ともおっさんと言う呼び名は、完全に定着してしまい、今更変更は出来なさそうだ…。
食料庫の事を聞いた俺のお腹の虫が、物欲しそうに催促を掛けて引っ切り無しに鳴り響いている。
何でもいいからお腹に物を入れて空腹感をどうにかしたかったので、ここはひとつ子供達に甘えてみる事にした。
そして、子供達に案内されるがままに、しばらく歩いた先にその場所があった。
「着いたよ!」
「ちょ、ちょっと待てや!」
俺のブサイクな顔が、もっとひん曲がってしまう程、驚いてしまう。
いや、そうじゃない…この感情は、驚きを通り越していて、呆れの感情の方が強く前に出ていた。
確かにそこには、大量の食べ物があったのだ。
ただ一点だけ、おかしな点を除けば、食べ放題のパラダイス状態なので、スラム街で生きる人々ならば大切なエネルギー源と言えるだろう。
「ともおっさん!今日はラッキーだよ!お城でパーティでもあったのか、お城の料理が沢山あるよ!」
子供達は嬉しそうにして、食べ物の山へと駆け寄っていった。
「ともおっさんは、もう僕達が済むスラム街の仲間として僕達が勝手に認定したよ!だから遠慮なく、気が済むまで食べていってね。」
無邪気な顔をして、食べ物の山を勧めてきた。
だが俺は、しばらくの間その光景を見て絶望をして、言葉を発する事が出来なかった。
実際は数秒間だけ止まっていただろうが、体感的には5分ぐらい止まった後に、我に返り咄嗟に言葉を吐き出した。
「ちょ、ちょっと待ってくれっ!」
食料の品定めに夢中だった子供達は、俺の声に手を止めてこちらを見る。
「どうしたの?ともおっさん?」
「すまんが…俺にはここにある貴重な食べ物を口にする事が出来なさそうやわ…。」
それもそのはず、子供達が選別している食べ物は、全て異臭を放っている生ゴミみたいな物なのだ…。
おかしな点とは、ここが裕福層が利用する生ゴミ処理場と言える場所であろう。
そして、俺が城で見覚えのある食べ損ねた朝ご飯が、何の輪廻かは知らないが運命に導かれ再開を果たし、散乱している光景が勝手に目に飛び込んできた。
「大丈夫だよ!腐っている物と見分けを付けられれば、無料で豪勢な食事に有り付ける究極の贅沢だから!」
「いやいや…そう言う問題やあらへんねん…。」
本当に異世界での生活で、人生に追い込まれて廃人になってしまった時に、お世話になるかも知れないが、まだそこまで俺は追い込まれた状況じゃ無いと信じたい…。
「お前達の行為は、ホンマに有り難くうけとったるわ…でも今の俺には、まだこれを食す資格?…がまだ無い気がするんや…。」
「で、でも、お腹減ってるんでしょ?とっても美味しいよ?」
素手で掴んだ料理を俺の口元まで運んでくる。
このまま口を開けて、まだ傷みきれてない食べ物を食べられれば、どれだけの開放感があるのだろうか…。
俺は人間の常識枠に留まる為に、必死の形相で目の前の物を押し退けて、差し出された物を拒否する。
「せっかく、教えてあげたのに…。」
子供達は暗い顔をして俯き、落ち込む様子が自分の心に深く突き刺さった。
無理にでも食べてあげた方が良かったのだろうか…。
いやいや…やっぱあれは、無理や…。
「せ、せや!この他にも食料の入手方法はないか?場合にもよるけど、それなら食べれるかもしれへんし…。」
俺はフォローのつもりで、別の話題を必死に提案してみた。
食べ物を選別しながら食事中の子供達は、真剣な表情を浮かべながら考え始めてくれた。
ちょっとは淀んだ空気を払拭出来た気がする…。
ちょっと経った頃、その中の1人が浮かない顔をしながら、こちらへ回答を返してくれた。
「別の方法を使って食料を入手する方法があるけど、今は危険地帯になってるし、あまり美味しい物も取れないからオススメはできないよ…。」
「そうか!危険でもなんでもいいから、その方法を教えてくれ!」
俺は興味津々に食い入るように話を聞き出そうとする。
「元々、僕達スラム街の人間は、この食料庫を見つける前までは、自然に生えている物が主食だったんだ。キノノやモリナって言う物をよく食べてたよ。でも、しばらく森に採取へ行かなくなったせいで、モンスターの住処になっちゃったみたいで、迂闊に森に近づけなくなったんだよね。」
「そうか…分かった。だったら要するには、モンスターに隠れて採取すれば、問題ないやろ!」
俺は自信満々に答えた。
「でも、それは危険だし、もし見つかりでもしたら確実に死んじゃうよ?…ともおっさん弱そうだから、やめといた方がいいと思うよ…。」
「誰が、弱そうやねん!こう見えても戦場で生き抜いた過去があるんや!大丈夫や!任せとけ!」
ついこないだの情け無い出来事を、良い内容へと解釈して、自慢げに子供達に話をした。
「それってスゲーじゃん!」
「ともおっさん、英雄なん?」
「勇者だったの!?」
すごい食い付きようで、子供達が引っ切り無しに俺を質問責めしてくる。
盛って話をしていたが、ここまで言われると少し気分が良くなってきて、さらに調子にのって天狗になってしまった。
これ以上言うと、何か取り返しの付かない所まで話をしてしまいそうなので、無理矢理に話を変えて自重をする。
その後、俺はスラム街から森に抜けれる道を子供達に教えてもらい、その入り口付近まで案内してもらった。
「ここから、まっすぐ草原を抜けると、キノノとモリナの採取できる森に入れるよ。」
「おう!サンキューな。ここまで案内してくれれば、後は何とかなると思うわ。」
子供達は俺が盛って戦場を生き抜いたと話しをしたが、ちょっとは心配してくれているようで、浮かぬ顔でこちらを見送ろうとしている。
水生成の時よりは可愛げがあると、今では思えるような仲になっていた。
「道案内をする途中で話してたけど、キノノとモリナには毒がある物があって、見分けるのがとても困難な食材だよ。」
「茶色い丸に細い棒が付いたのがキノノで、濃い緑色をしたクルッと巻いてる細い草がモリナやろ?」
「そうそう、形の特徴は今言ってくれたように簡単な物だけど、毒入りかどうかは専門知識が無いと見分けられないからね。採取した後に無闇に食べずに、持って帰ってきてくれれば選別は、僕達がしてあげるよ。」
「選別はして貰うが…俺が取ってくるもんやから、欲しい言ってもやらんからな!!!」
「い、いらないって…。」
苦笑いしている子供達を横目に手を振って、俺は食料を確保するべく森へと出発をする。
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「なんか想像以上に、中は暗いねんな…。」
中に入れば迷ってしまい後戻りが出来ないんじゃないかと思うぐらいの薄着味悪い森は、俺達人間を拒むようにして木々が無数に生い茂っていた。
恐怖心を捨てて、生きる為だと心を奮い立たせ、食料をなんとしても入手すると言う一心で、危険を覚悟して中へと足を踏み入れる。
少し躍起になっている部分もあるが、人生捨ててまで腐っている物を食べるよりか、自分で自給自足したほうが人間性は保てるはずだ。
お腹が減り頭がおかしくなっていると言われれば、あながち間違いでは無い気もするが、やはりまだまだプライドは歪ませたくないのである。
と言うよりも、そう言う考えを引っくるめて思い込まなければ、こんな場所に飛び込む勇気など、俺には毛頭無かった。
「大丈夫!大丈夫やで!」
自分に自分で問いかけて、自問自答しながら奥に進んでいく。
意外にも森の奥へと入ってみると、もっとモンスターがウジャウジャとはびこっている事を想像していたのだが、周りには風と木々の揺れる音だけが静まり返って、この空間を支配していた。
トントン拍子に事が運び、辺りを警戒しつつどんどん奥へと進んでいく。
すると一面に沢山のキノノとモリナらしき物が生えた場所へとたどり着いた。
「これやな!一杯とったるで!」
俺は意気込みを吐き捨てて、一気に緊張の糸を緩め、スラム街から持って来てきたカゴ一杯になるまでキノノとモリナを詰め始めた。
気を緩めた反動で、食料を夢中で採取していたようで、奥へ奥へと吸い込まれるようにして迷い込んでいく。
気がついた頃には、時既に遅し…。
「あ、あれ?ここどこや?」
普段から慣れている人でも、この森は厄介な場所として有名で、別名『迷いの森』とも言われているらしい。
その事を今更になって子供達に言われていた事を思い出した。
「しまった!奥に入り過ぎると、方向感覚が麻痺するから気を付けろ言われてた気がするな…」
食料の事にしか興味が無く、他の注意点を耳に入れていなかった事が原因の一つだろう…。
とりあえず、来たであろう道を帰ろうと思った瞬間、突然目の前の木が動き始める。
「うわっ!なんやこいつ!」
大木が二足歩行で立ち上がった事を確認した。
突然の出来事に体が動く事が出来ず、木のモンスターはこちらへ不意打ちのように攻撃を仕掛けてきた。
反射的にその攻撃は避ける事に成功したが、そのまま腰が抜けてしまって一切体を動かす事が出来ない。
「も、もう、おしまいやぁ!!!」
俺の叫びも虚しくブサイクな顔面に目掛けて、木のモンスターの触手が襲いかかってくる。
反射的に目を瞑り、死を覚悟した。
…。
しかし衝撃はいつまで経っても訪れず、しばらくの間、静寂が流れる。
「…。って、あれ?痛く?ない?」
俺はゆっくりと恐る恐る目を開けてみる。
すると目の前には、ギリギリで木の触手がピタリと止まって動かなくなった木のモンスターが佇んでいた。
その後、モンスターは何事も無かったかの様に、その場で灰となり視界から散り散りに消え失せていく。
「まったく…。こんな危険な森の奥に、一人で入るとか、頭おかしい…?」
森の奥の少し距離がある場所から、女性の声がボソボソとした口調で風に乗ってふんわりと聞こえてくる。
その声のする方向へ体を向けて、しばらく待っていると、奥の方から黒紫のローブに包まれた魔女っぽい子が歩み寄ってきた。
「だ、だれやねん!お前!」
「命の恩人に向かって、その態度はひどくないかな?ともお。」
「え?今のお前が助けてくれたんか?」
俺の言葉に軽く頷き、自分の要件を淡々と無表情で勝手に話し始めていた。
「こっちから会いに行く手間が省けたわ…。ともお、ちょっと私の家に来なさい。」
「おい!呼び捨てとは、聞き捨てならんな!お前の親はどういう教育しとるねん…まったく最近の若いもんは………って、なんで俺の名前しってるねん!!!」
その質問に対しては、ぶっきらぼうに回答を返してくる。
「私はあなたを、一方的に知っているだけ。ただ、それだけ…。」
何か意味深な言い方をされて、何とも言えないモヤモヤが一層と深まるばかりだった。
そんな時に、思い当たる節がある事を思い出して口にしてみる…。
「わかった!お前俺の熱狂的なファンやろ!」
「…。」
無言の静寂が、この場の空気を飲み込んだ。
俺がかなりの見当違いの答えを、さらっと述べたせいか、左右の色が違う瞳を大きくパチクリと瞬きさせて、魔女っぽい子は呆れながら喋りだした。
「ファンではないわ…。あなたは私にとって重要な鍵になる人なの。」
「鍵?」
またしても、よくわからない事を言われ少し混乱した。
だが多少の混乱ぐらいなら、あの日に比べれば何倍もマシである。
そして俺は思い当たる節の2個目の言葉を、ぼそりと口に出してみる事にした。
「使い魔の小柄な男…。」
その言葉を聞いて、魔女っぽい子の無表情な顔が、少しだけムッとした表情になった気がした。
「ともおは、私が守護させた大切な使い魔を見殺しにした…。しかもその命よりも金貨3枚の方が大事だったみたい…。だからムカつくから、呼び捨てで呼んでるの…。」
「あ、あれは、言葉の綾がそう言わせただけであって…。」
もう一度、よくわからない静寂が俺達を包み込んだ。
俺はこう言う間が分かりにくい人間は、少々苦手な傾向にあるのかも知れない。
「…まぁいいわ…。済んだ事をとやかく言う必要は無いもの…。だから、私の家に来なさい。」
「よ、よくわからんが、とりあえずお前の家に行けば、なんか分かるようにちゃんと説明してくれるんやな!」
魔女っぽい子は、静かに頷いた。
「わかった。ほな、家に連れてってもらおうか。」
俺の言葉に反応を示して、後をついて来いと無言で魔女っぽい子は移動を始めた。
その後に続き、俺も一緒に歩き出す。
薄暗い森の中を迷ってる様子もなく、さらに奥へと躊躇なく入っていく。
しばらく進んだ先で、突然何かを思い出したように、その場に急に立ち止まり、一呼吸置いて喋り始めた。
「あ、そうだ。私の名前は『リーゾ・リ・フィールド』って言うの。気軽にリッフィーと呼んでもいいわよ。ともおの名前はもう知ってるから、言わなくていいよ。」
また唐突な自己紹介の仕方だった。
それでも、名前がわからないよりかはマシだな。
リッフィーのペースに押され気味ではあるが、一応確認の念を込めて呼び掛けてみよう。
「お、おう、わかったで…リッフィー…。」
「………気安く呼ばないで…。」
「どっちやねん!」
俺のツッコミに対して、また静寂が包み込んだ。
なんやねん、こいつ。
めっちゃ、やりにくいわ…。
しばらく間を置いて、リッフィーが口を開く。
「…冗談よ…。」
分かりにくい冗談と言う言葉に、またペースを崩されてしまった。
「着いたわよ。」
「へ?いつの間に…」
立ち止まった意味は、他にも到着した事も兼ねていたらしい…。
少し奥に入った所に、暗い森の中に一箇所だけ太陽の光を神秘的に浴びている、木造の小屋が見えていた。
「あれが、私の家…。」
「なんかさっきの木のモンスターとかに、一発で壊されそうやな…。」
「私の結界が貼ってあるから無理…。」
簡素な言葉で淡々と俺の言葉を流された。
そして、リッフィーは自分の家の扉を開けて、俺を中へ入るように案内する。
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私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
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王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
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