異世界でも使えた節約生活~ドケチライフ~

つよけん

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節約生活1章「どうしてこうなった!」

ともおと魔女と剣士【4】

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「あ、あれ?全然魔法っぽい事が起きひんやんけ…。やっぱり、その帽子の表示ミスか、潰れてとるんちゃうの?」
「ともおが、魔法のセンスが無さすぎるだけよ…。」

俺は数分前から魔法の使い方を、リッフィーにレクチャーしてもらっていた。
自分の属性が大変めずらしいイレギュラーな物らしく、使ってみたい意欲が俄然がぜん高まったからである。
しかし、結果は全然見えてこないまま、無駄に時間だけが過ぎていった。

「空気中の色別に別れた属性色を…ともおなら白色っぽい物を意識して、一点に集中させる感覚で掴むようにしないと、魔法の発動なんか出来るわけないわよ?」
「そ、そないな事を言われても、色なんか見えへんのやし無理すぎるやろ!!」
「見るんじゃなくて、五感のすべてを使って意識の中で感じるのよ…。」

そんな事を言われても、何を掴めばいいのかがまったく分からず、何をやっていいのかがさっぱりわからん。
俺の属性色は白単色の聖属性というヤツらしく、この異世界に1人居たらたたえられるぐらいの希少種らしい。
その特性も頭5つ分はひいでる特性があるらしい…知らんけど…。
説明によると…治癒魔法を得意とする属性で、極めれば極端な話し肉体のしかばねさえ残っていれば、自分の命を削って人の命を蘇らせる事も可能だそうだ。
人を生き返すなど、自分には無縁の魔法だと思うが…。
リッフィーは俺に教える気があるのかないのか、無表情を貫きながらあおるようにして言葉を投げかけてくる。

「リエッタはともおと違って、短時間で魔法陣形成の段階までいってるわよ?」

俺の属性がレアな物と知ったリエッタは、どことなく不機嫌となり、俺がリッフィーに魔法を教わっている最中に、張り合うかのように横でクロマティを先生にして、黙々と同じようにして魔法を教わっていたのである。
俺とは断然センスが違い、最初に魔法を発現した時よりも、段違いに上達しているのが目で判る程だった。

「私が変態ともおに負けるはずがないじゃない!」

リエッタは相変わらず、俺の事を変態扱いしながら、誰が見ても分かるような不安定感の残る、第一形態の魔法陣を空中に形成をしていた。
その光景をみた俺は、何故か苛立ちを覚えて、自分の考え方を正当化するように、さじを外野からバックホームへと遠投する勢いで豪快に諦める。
そもそも、魔法が使いたかった訳じゃない…簡単に使えると乗せられて使って見たかっただけなのだ。

「あかん!もう無理!!わからん!!!わからん!!!!」

別に意識はしていないはずだが、芸人魂が俺のリアクションに隠し味を勝手に入れて、一発芸を盛り込んでしまった。
持ち芸とかでは無く、ただ頭に思い浮かんだ言葉を一瞬で一発芸にしてしまう、職業病みたいな感覚である。
ウケの程は…ご想像にお任せします…。

「よかったわね…魔法がちゃんと発動したじゃない…おめでとう。」
「は?どう言う事やねん…。」

一番無視しそうなリッフィーから、ギャグの事はともかくとして、意外な言葉を掛けられた。

「辺りを一瞬で、凍り付かせる魔法はピカイチよね…。」
「うっさいわ!」

少し期待した俺が馬鹿だった。
もう魔法なんて絶対にやらないからな!と心に誓いを立てる…。
ふと、窓から外の様子を伺うと、夕刻にはまだ早いが、だいぶ日が沈みかかっている事に気付く。
そろそろ帰らないと、スラム街の子供達が心配する頃だろうか…。
まだ肝心な事が聞けていない事に今更気付き、俺は慌てて話題を本題へと戻そうとした。

「な、なぁ…魔法の事に夢中になりすぎて忘れててんけど…結局、現世に帰る方法の為に、俺は何をすればええんや?」

聞かれたリッフィーは、少し考えた後に、独特の間を作りながら口を開いた。
ほんの少しではあるが、やっとこさ独特の間への対応が追いつき始めている。

「帝国側の内情は、城内に関わりがあるともおなら、大体理解できてると思うけど…?」
「確か…王様に国の物資が不足してるって聞いてたような気がするな…。その関係で共和国側と戦争に発展したとかなんとか…。」

あんな勿体無い生活してたら、物資が無くなるのも当然の事だ。
リッフィーは、淡々と話を続ける。

「意図して戦争を起こさせたのは私が原因なんだけど…帝国側に供給する物資を、何処よりも安価で提供する事を条件に、お互いの情報共有や他国との連携協定などをお願いしたのよ…。」
「その後の展開が、言われなくても分かる気がするわ…。」

自分なりのおおよその見解的には、あの王のやる事だとしたら…もっと安価を求めて、さらに情報共有は拒否して、他国協定などもっての外なのであろう…。

「そこで!」

リッフィーは突然、自分が持っている声量の全てを出して、全身を表現に使うようにアクションをとった。
声量の全てと言っても、俺の普通の声量に、毛が生えた程度だけど…。

「ともおには、スラム街の人々を味方につけて、帝国側の内側から内乱を起こして欲しいの…。」
「………はぁ?」

予想だにしていない、突拍子も無い事を発言されて、思考が一時的にフリーズする。

「そないな事は俺に頼まんでも、自分らでやればええんちゃうの?」
「残念ながら…私達は完全に帝国側に顔割れしているわ…。それにリエッタは、帝国の攻撃を国境ラインで抑えてもらう事を優先にしてもらっているし、動くに動けない状態なの…。それに、コソコソ動く事は出来ても、表立って行動が出来ないのは、相当な時間と労力がかかってしまうわ…。」
「それで、まだ陰が薄いであろう自由に動ける俺に、白羽の矢が立った訳か?」

リッフィーは静かに首を縦に振った。
自分が現世に帰りたい気持ちは強いとは言えども、リスキーな事に首を突っ込みたく無い気持ちもある…。
俺の心は、積み木が抜かれた後のジェンガのように、不安定に揺れ動く。

「俺は少しだけスラム街で生活をしてたけど…あそこの連中は、一部を除いてみんな腐ってる連中ばっかりやぞ?それをどうやって、まとめ上げたらええねん…。」

俺の悩む姿に対して、やはり無表情なリッフィーが自信満々に答えた。

「根拠は無いけど…ともおなら出来るわよ!」

俺の不安は、ますます募るばかりで、間の抜けた顔でリッフィーを見つめる…。
少しだけ時が止まったかの様な、静寂の時が続いた…。

「…ちょっと…。ボケたんだから、突っ込んでくれないの…?」
「ボケが、わかりにくすぎるわ!!」

リッフィーの分かりくすぎるボケに対して、ちゃんとした突っ込みを入れる。
その後、ツッコミに対する安定のスルーを決め込み、満足そうな雰囲気で、急に次の話題を喋り出す。

「スラム街の人々は、元を辿れば王族に使える者が、大半を占めているわ…。先代の王が帝国での権力を失い、今の王に変わってから、全てが狂い出していったのよ…。今の王に逆らった者は、問答無用で武力と権力を駆使され、スラム街へと引きずり落とされたていったわ…。腕が立つ者が反逆をこころみるも、今の王の魔力には一切歯が立たなかったとも聞くわ…。そして、スラム街から這い上がろうと努力をしても、武力により這い上がる事さえ許されない彼らは、無法者になる事を強いられる事となり、生き残る為の最終手段として、仕方なく悪の道へと浸っているだけなのよ…。」

理由は何と無く理解できた。
しかし、協力をしてもらう為には、決定的に不足しているものが存在する…。

「でも…どないしてスラム街の人々を味方にするねん?」
「ちゃんと理由を話せば、変態ともおでも、協力してくれるんじゃない?」

いつの間にか、魔法の修練を終えていたリエッタが、話に参戦をしてきた。
相変わらず嫌味な言い方だ…。

「無理やな…。」

俺は即答した。

「あんまり例えとし言いたくはないんやけど、リエッタが俺を変態と呼ぶように、スラム街の人々には、俺に対する信頼も実績もないやろ?多分、話を持ち出しても、門前払いされるだけやで…。」
「それも、一理あるわね…。」

そのように述べると、リッフィーは考え込みながら、しばらく上の空になっていた。
話が進まない事を察したリエッタは、ちょっとした疑問を投げ掛けてくる。

「さっきに会話の中で変態ともおが言ってた事に、引っかかった言葉があるんだけど…。『一部を除いて腐ってる奴ばかり』と言う感じで喋ってたと言う事は、悪い人じゃない人間も中には居たって事になるよね?」

変態、変態と言われる事も慣れてきてしまい、自分の感覚がおかしくなったのかと錯覚を覚えてしまう…。

「せやな…。子供達は生意気やけど、ええ奴らばっかやで…。」
「えっ!?それ本当!?」

上の空状態のリッフィーが、突然地上へ戻ってきた。

「スラムの子供達って、大人以上に信用が出来ないわよ…」
「そんな事あらへんで!現に食料の取り方を教えてもらって、この森までたどり着けたのは、子供達のおかげやねんからな!」
「それは…ともおを落とし入れようとして、この森に案内をして…モンスターに後処理を任したからじゃないの?」

そこまで批判的に物を申されると、少し自信がくなってきた。
いや…それでも俺は、子供達を信じてやろう。

「なんで信用でけへんのや?そこまで信用でけへん理由があるんやったら、過去に子供達となんかあったんかいな?」

リッフィーは無表情のまま血相を変えて、ガクガクと身を震わせながら、嫌な事を思い出すかのように、額に薄っすらと汗をかいていた。
これ以上理由を聞いて欲しく無いオーラが漂っていたので、気になるがそっとしておこう…。

「と、ともかく!仲良くなったのは事実やさかい、俺にとってはええ奴らやねん…。」
「それじゃぁ、仲良くなった経緯とかあるんじゃない?」

リッフィーがダウンしてしまったので、質問親であるリエッタが次の質問を投げ掛けてくる。

「俺は綺麗な水の作り方を子供達に教えてあげただけやで?」
「綺麗な水?」

リエッタは水なんて何処にでもあるかのように、疑問形で問い返してきた。

「お前達が当たり前のように使用している水の結晶は、水分をまかなう為の大切な資源だと思うが、スラム街の人々は水の結晶などを買う事が叶わず、代わりに川に流れている汚水を水分の源として飲んでいるんや…。さすがの俺も川の汚水を飲んでまで生活をする事が考えられずに、落ちぶれたく無い一心で、昔の記憶の片隅にあったうろ覚えの『ろ過装置』を作りあげて、試行錯誤の末に透き通った水を作り出した訳だ…。」

リエッタは納得した顔を俺に向ける。

「なるほど…その光景を見ていた子供達に、『ろ過装置』の作り方を教えてあげたら、変態ともおの好感度が上がった訳ね?」
「せ、せやな…。」

リエッタの好感度も上げるために、ろ過装置の作り方を教えてやろうか…。
そんな無駄な事を考えていると、突然、リッフィーが恐怖のドン底から返り咲き、何かを思いついたように言葉を発した。

「それよ!それは、使えるわ!」

とても掴み所がない、無表情だが感情の起伏が激しい子だと、改めて思わされる。

「スラム街の水の水準を上げる事によって、ともおの名声をあげれば問題が解決するんじゃない?…そうすれば、信用に至る存在として認められるようになって、話も通じやすくなるはずよ…。」
「ちょ、ちょっと待てや!」

俺の了承も得ないまま、ズカズカと勝手に決めていくリッフィーに、歯止めをかける…。

「俺が作った『ろ過装置』で、大量の水を一気に浄化することは不可能やないか…。」
「別に水を綺麗にする方法は、一つじゃ無いわよ…?」

確かに『ろ過装置』以外にも色々と方法があるとは思うが、それ以外の知識をどこから引っ張り出そうと言うのだ…。

「電気分解を応用させて、魔法を上手く融合させた浄水場を作りましょう…。」

電気分解?
魔法の応用?
リッフィーの話が大きくなり過ぎて、不可能と言う文字が頭の中で、どんどんと巨大化していく気がする。

「あ、あのなぁ…。俺にそんな事を求められても、でけへんもんは…」

リッフィーが俺の言葉を最後まで言い切る前に、被せてるようにして発言をした。

「私が出来る…。」
「ほなら!勝手にやればええやろが!」

俺は壁を叩き、激情をあらわにした。
リッフィーはビクッと反応を見せる。
俺に対する恐怖が、ひしひしと伝わってきた。
他の2人も、驚きの色を隠せないでいる。

「お前らが顔割れしてるから、手伝う事が出来へん言うてるし、こっちはどうやって1人で動くか真面目に考えとるんや!俺が出来へんから自分でやるとか、矛盾にも程があるやろが!!!」

リッフィーは無表情のまま悄気しょげた恐怖の感情を言葉に乗せて話し始めた…。

「…もっと冷静に考えて…。言い方が分からなかったのかも知れないけど…何も全部が全部ともお1人に背負い込んでやって欲しいとは言ってない…。…表立って行動は出来ないだけであって、私達は協力はしていくつもりよ?…だって現世に帰りたいのは私達も同じだもの…。…だから、計画や設計は私が担当するから、判断と行動はともおにやって欲しかっただけよ…。」

俺は完全に早とちりをして、勘違いをしていたらしい…。
年齢を重ねると頭が硬くなると言うが、今回がいい例だったのかもしれないな…。

「そ、それやったら…や、やったってもええで…。」

俺は冷静さを取り戻そうと、深呼吸をしながらもう一度状況を確認し直す。
涙目になっているリッフィーに対して、素直に謝ることが出来ない自分が嫌になっていた…。
そこへ、背筋を凍らせるような冷徹な視線と共に、突然の突風が顔に吹き付けてくる。

「あーあっ、泣かしちゃったねー…。」

リッフィーを泣かした代償として、怒りの感情を表に出していたリエッタが、俺の元へ瞬く間に移動して来た突風だったらしい…。
彼女は伝説の剣(ナイフ状態)を鞘から抜き出し、俺の首元へと突き付けている。
俺は知らぬ間に頭をグッと上に反らされて、息が詰まり言葉を発することが出来なかった…。
このまま首をき切られれば、俺の人生は終了を告げるだろう…。
リエッタの剣は徐々に力を込めていき、俺の喉元に喰い込み始める。

「それだけは、ダメよ!!!」

リッフィーは涙を必死になって、顔をくしゃくしゃっと腕で拭い、リエッタにかすれ声で訴えかけた。

「私は…大丈夫だから…。ともおから手を放して…。ともおが死んじゃったら、私達の苦労も全て水の泡になっちゃう…。」
「…ただの脅しのつもりよ…。本気で殺しはしないわよ…。」

俺はリエッタの拘束から、乱暴に解放された。
頭を反らされていて苦しかった肺に、急に大量の空気が侵入した為、少しむせ返る…。

「今度、リッフィーを泣かしたら、次は無いと思いなさい…。」

俺とリエッタとの溝は、相当深いもを刻まれた気がする。
こんな奴の事など、現世に帰ってしまえば別にどうと言う事も無いのだから、気にしない事にしよう…。

「私、先に帰るから!!!」
「あっ、ちょっと待って!」

リッフィーの制止を無視して、リエッタは外へと飛び出していく。
部屋には変な空気感が残り、嵐の去った静けさだけが空間を支配していた。

「これは、両方に非がありますね…。」

今までだんまりしていた、クロマティが空気を切り裂くように喋りだした。
その発言に対して、何も言えない自分が、とても…もどかしく感じる…。

「ごめんね…ともお…。」
「いや、俺の方こそ…早とちりして、すまんかった…。」

リッフィーが謝ってくれたことにより、俺もやっと謝ることが出来た…。
もっと早く謝ることができれば、この空気は無かったのかもしれない…。
これ以上リッフィーが語れそうに無いと判断した、クロマティが代わりに代弁を語りだす。

「私の発言は、主人あるじの言葉だと思って聞いて下さい。今日の所はもう遅いので、スラム街へとお戻り下さい。帰るとして、寝泊りする場所はあるのですか?」
「今のところじゃ、野宿しか方法がないわ…。」
「そうですか…。でしたら、野宿も不便でしょうから、私の知り合いにスラム街でをやっている者がいます。私も護衛として付いていきますので、そこに泊まらせてもらうように、一緒にお願いしに行きましょうか。」

寝る所があるだけでも、ありがたい話だ。
ダメ元でもいいから、お言葉に甘えておこう…。

「今日の所は、主人あるじもこんな状態ですし…また後日、浄水場の計画については、改めて話しましょう。」
「せ、せやな…。」

俺は改める事を頷き…リッフィーの落ち込む顔を横目に映しつつ、クロマティにうながされるまま、家の外へと出たのであった。
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