未完成な僕たちの鼓動の色

水飴さらさ

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第二章(改正版)

そして夜…… ※

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「グ~~、キュルル~」
 盛大に腹が鳴った音で由人は、ぱっと目が覚める。
 瞼を開ければ、ドーム型テント内は照明がしっかりついていて明るい。
 起きようとすれば、体がずしりと重い……主に下半身が鉛を詰め込まれたように重い感じがする。
 由人は眠ってしまった前の記憶を一瞬で思い出し、咄嗟に布団を掴み頭から被った。
『え? えっと、えっと……あ、……僕……久場と……どうしよう……わー、わー、どうしたらいい? どんな顔すればいい?』

「グ~~」由人の腹がまた鳴る。

「おはよう」久場の声がする。
「……お腹減ったんだよね、由人が寝てる間にバーベキュー焼いといたんだ、ちょっと待ってて温めてくるね」
 そういえば、テントの横のデッキスペースでバーベキューが焼けると、久場に聞かされていたことを由人は思い出す。
 二人でバーベキューをしたいとも、久場は言っていた。
「ごめんなさい、寝ちゃった……」
 由人の喉から出た謝罪の声は、掠れていた。
 なぜこんなに掠れ声になってしまったのか。前後不覚、天と地も分からなくなるほど甘やかされたからだ。
 寝てしまったのではない。散々翻弄され泣かされ、挙句に気絶をしてしまったのだ。
 居た堪れない気持ちになり布団を握りしめ体を隠そうとするけれど下半身がズキリと痛む。
 より一層恥ずかしくなる。
「ここ、レンジがないからセンターハウスで温めてくるね、少し待たせるけど急いで戻ってくるから、あと、バスローブ置いとくね」
「……うん」
 小さな声で返事をすると、久場が由人の頭をポンポンとしてテントを出て行く。

 とにかく久場が居ないうちにしゃんとしようと、布団をめくり身を起こせば、明るいライトに平べったい胸の赤い跡が点々と照らされた。
「うわ……」
 声にならない声を出して、布団をめくり全身を出すと、赤い跡が数えきれないほどついている。
「ああ……」
 肉厚の舌の感触、感じ過ぎる首筋、体の中の感じる場所、甘ったるい痺れ、苦しいのに気持ちよくて幸福感に満たされる事を教え込まれた記憶と感覚が鮮やかに蘇ってくる。
 枕元に置いてあるバスローブに手を伸ばして羽織り、ため息をつきながらテント内を見渡す。
 脱がされた服は畳まれてソファの上に置かれていた。
 そういえば、体は綺麗に拭かれているようだ。
 由人の脳裏に、甲斐甲斐しく体を拭いてくれている久場がすぐに浮かんだ。
 羞恥より、じんわりと幸せに包まれる。
 
 去年の五月、久場におんぶをされ、弟のように可愛いと保健室で言われた。
 自分なんかとは違って誰とでも仲良く話せ、何でも器用にこなしてしまう久場。
 そんな久場に激しく求められた。
 痩せぽっちの体を可愛いと言い、体の中も外も開かれてたくさん愛された。
 大きな体を擦り付けて、キスマークを体中につけて……甘く噛まれもした。
 
 なんだか可愛くて、愛おしいと思ってしまう。

 気絶までさせられて、こんな風に思うのはおかしいのかもしれないけれど、いつも爽やかな久場の切羽詰まった表情も、僕ことが好きだと言う顔も、獰猛な顔も、全部僕だけに見せるのだから可愛いに決まっている。
 
 由人はベッドの上でぼんやりと久場を待った。

「ただいま、お持たせー」
 久場がバーベキューの美味しそうな匂いとともに帰ってきた。
 途端に由人の腹がまた盛大になる。
 ローテーブルに温めたものを置き、久場が由人を見る。
 ベッドで大人しくじっとしている由人は白いバスローブを羽織っている。
 細い首筋に自分がつけた赤い跡がいくつも見える。
「……立てる?」
 久場が聞けば、由人はふるふると首を振りじっと見上げてくる。
 
 我慢していた期間が長かったとはいえ、体格差、体力差もあるのに由人に無理をさせてしまった自覚はある。
 そんな自分を由人はつぶらな瞳でじっと見上げてくる。
 久場は罪悪感と申し訳なさでいっぱいになる。
 居た堪れず、目を逸らして由人を横抱きに抱えてローテーブルまで運んだ。
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