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再建の香り
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王都に、再び朝が訪れた。
崩壊した宮殿の瓦礫の間から、初恋草が芽吹いている。
風が吹くたび、その花が揺れ、かつての狂気と支配の香りを穏やかに上書きしていった。
クラリッサは瓦礫の丘に立ち、扇子で風を仰いだ。
「……やっぱり、この街には香りが似合いますわね」
背後から、年老いた声が響いた。
「君のおかげで、王都は救われた」
振り向けば、そこに立っていたのは元監察官――ラザール卿だった。
「ラザール様……お帰りになっていたのですのね」
「君の報告を受けて、再建委員会が発足した。
そして――君を“王国顧問香師”として任命することに決まった」
クラリッサは目を瞬かせた。
「顧問……香師、ですの?」
「王家直属だ。香りを通じて国の文化を再興してもらう。
香りが狂気の象徴だった時代を終わらせるためにな」
クラリッサはゆっくりと頷いた。
「……あら、面白そうですわね。
香りを権力のためではなく、“人の誇り”のために使えるなら」
ラザールは満足げに笑う。
「その言葉が聞きたかった」
⸻
昼。
王宮の大広間は修復作業で賑わっていた。
クラリッサは指揮を執りながら、香りの設計図を広げている。
“記憶の回廊”――王城の空気を人々の心に安らぎとして残す、新しい香りの循環装置。
「もっと光を入れて。香りは闇を嫌いますの」
職人たちが動き、光の粒が舞い込む。
その中で、彼女の白いドレスが風に揺れた。
そこに現れたのは、王国騎士団の紋章を肩に掲げた男。
レオンだった。
「……お前らしいな。戦場よりも、こういう現場の方が似合ってる」
クラリッサは微笑む。
「あなたも剣ではなく、風を護る騎士になりましたのね」
「任務で来ただけだ」
「まあ、相変わらず素直じゃありませんのね」
互いに短い沈黙。
だが、その沈黙はもはや気まずさではなかった。
彼らの間に漂うのは、心地よい“約束の香り”――焚き火の夜に交わした誓いの残り香。
⸻
王都再建は進む。
しかし、宮廷の奥では、また別の風が吹き始めていた。
王太子が退位し、臨時の評議会が設置された。
貴族たちは新しい秩序を奪い合い、“香り”を再び権力の象徴に戻そうと動き始めていた。
クラリッサは夜、王宮のバルコニーで星を見上げながら呟いた。
「……人の欲は、香りよりもしつこいですわね」
ラザール卿が背後から現れる。
「それでも、香りがある限り人は立ち直る。
君がそうだったようにな」
クラリッサは扇子を閉じ、静かに笑った。
「わたくし、また“図太く生きますわ”。
王都でも、辺境でも、どこにいても――わたくしの香りは消えませんの」
風が吹いた。
その香りは、柔らかく、確かに“再生”の匂いを運んでいた。
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「……やっぱり、この街には香りが似合いますわね」
背後から、年老いた声が響いた。
「君のおかげで、王都は救われた」
振り向けば、そこに立っていたのは元監察官――ラザール卿だった。
「ラザール様……お帰りになっていたのですのね」
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そして――君を“王国顧問香師”として任命することに決まった」
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クラリッサはゆっくりと頷いた。
「……あら、面白そうですわね。
香りを権力のためではなく、“人の誇り”のために使えるなら」
ラザールは満足げに笑う。
「その言葉が聞きたかった」
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その中で、彼女の白いドレスが風に揺れた。
そこに現れたのは、王国騎士団の紋章を肩に掲げた男。
レオンだった。
「……お前らしいな。戦場よりも、こういう現場の方が似合ってる」
クラリッサは微笑む。
「あなたも剣ではなく、風を護る騎士になりましたのね」
「任務で来ただけだ」
「まあ、相変わらず素直じゃありませんのね」
互いに短い沈黙。
だが、その沈黙はもはや気まずさではなかった。
彼らの間に漂うのは、心地よい“約束の香り”――焚き火の夜に交わした誓いの残り香。
⸻
王都再建は進む。
しかし、宮廷の奥では、また別の風が吹き始めていた。
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貴族たちは新しい秩序を奪い合い、“香り”を再び権力の象徴に戻そうと動き始めていた。
クラリッサは夜、王宮のバルコニーで星を見上げながら呟いた。
「……人の欲は、香りよりもしつこいですわね」
ラザール卿が背後から現れる。
「それでも、香りがある限り人は立ち直る。
君がそうだったようにな」
クラリッサは扇子を閉じ、静かに笑った。
「わたくし、また“図太く生きますわ”。
王都でも、辺境でも、どこにいても――わたくしの香りは消えませんの」
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