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8 アラゴンの初恋
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あの日のことは今でも忘れない。
俺が初めてセレーネと.....あの忌々しいエルリックという青年とであった時のことを。
俺は王族として生まれ、いずれこの国の王になる男だ。両親に名付けてもらった「アラゴン」という名前も神話に登場する最強の王の名前から取られたものだ。
か
俺がこの国を守護する騎士団「ガーディアンズ」の仕事を終えて城に帰る際に、彼女達を見つけた。
初めて彼女を見た時、俺はその子から目が離せなくなった。
長く綺麗なブロンドの髪、透き通るような緑色の瞳、誰もが二度見するようなスタイルの良さ、その何もかもが俺を夢中にさせる。
俺は急いでその少女を追いかけ、声をかける。
「君、少しお時間いいだろうか」
「.....はい?」
彼女は不思議そうに首を傾げる。
「何か用か?」
不意に男の声がする。声の方を見ると黒い髪の冴えない青年が立っている。
「お前には要はない。君、お名前を伺っても?」
男に舌打ちをしながらブロンドの髪の少女に優しく微笑みかける。
彼女は少しムッとした顔でぶっきらぼうに答える。
「セレーネです」
「セレーネ、素晴らしいお名前です。美しいあなたをピッタリだ」
「どーも。行きましょうエルリック」
そう言ってセレーネはエルリックと呼ばれた青年の腕にしがみつきそのまま引っ張っていく。
「どうしたセレーネ、らしくないぞ」
「どうしたじゃないですエルリック。あの人のあなたに対する態度、ちょっと酷かったです」
どうやら彼に対する扱いを謝ると彼女の好感度は下がってしまうらしい。少し注意しなければいけないな。
「待ってくれセレーネ、先程の彼への比例を詫びよう。.....エリック」
「エ ル リ ッ ク です!」
彼女がずいっとこっちに顔を寄せて訂正してくる。
彼女の甘い匂いが鼻をくすぐる。本当に綺麗な人だ。
「エリックでもフリックでもいいよ。お前もどうした。あんまりムキになるなよ」
エルリックがセレーネをなだめる。
「君たち、何か困っていることはないかな?私はこれでも次期国王なんだ、ある程度の望みは聞いてあげれるよ」
「あなたに頼ることなんて何もありま――」
「俺たち、仕事を探してるんだ。しばらくこの国に滞在しようと思っていてな」
セレーネの話を遮るようにエルリックが言う。
「その予定でしたが、あなたみたいな人が次期国王になる国なんて嫌で...むぐ.....!」
セレーネがそこまで言いかけたところでエルリックに身体を引き寄せられバックハグのような体制で口を塞がれる。
「無礼にも程があるだろ!セレーネ、何考えてるんだお前」
「んっ.....ぷはっ!エ、エルリック、急に激しいスキンシップを取るのはやめてください!い、嫌ではないのですがびっくりするじゃないですか.....こういうことは2人きりの時に.....」
この時のセレーネの赤らめた顔を見て俺は悟った。この男は、邪魔だと。
俺が初めてセレーネと.....あの忌々しいエルリックという青年とであった時のことを。
俺は王族として生まれ、いずれこの国の王になる男だ。両親に名付けてもらった「アラゴン」という名前も神話に登場する最強の王の名前から取られたものだ。
か
俺がこの国を守護する騎士団「ガーディアンズ」の仕事を終えて城に帰る際に、彼女達を見つけた。
初めて彼女を見た時、俺はその子から目が離せなくなった。
長く綺麗なブロンドの髪、透き通るような緑色の瞳、誰もが二度見するようなスタイルの良さ、その何もかもが俺を夢中にさせる。
俺は急いでその少女を追いかけ、声をかける。
「君、少しお時間いいだろうか」
「.....はい?」
彼女は不思議そうに首を傾げる。
「何か用か?」
不意に男の声がする。声の方を見ると黒い髪の冴えない青年が立っている。
「お前には要はない。君、お名前を伺っても?」
男に舌打ちをしながらブロンドの髪の少女に優しく微笑みかける。
彼女は少しムッとした顔でぶっきらぼうに答える。
「セレーネです」
「セレーネ、素晴らしいお名前です。美しいあなたをピッタリだ」
「どーも。行きましょうエルリック」
そう言ってセレーネはエルリックと呼ばれた青年の腕にしがみつきそのまま引っ張っていく。
「どうしたセレーネ、らしくないぞ」
「どうしたじゃないですエルリック。あの人のあなたに対する態度、ちょっと酷かったです」
どうやら彼に対する扱いを謝ると彼女の好感度は下がってしまうらしい。少し注意しなければいけないな。
「待ってくれセレーネ、先程の彼への比例を詫びよう。.....エリック」
「エ ル リ ッ ク です!」
彼女がずいっとこっちに顔を寄せて訂正してくる。
彼女の甘い匂いが鼻をくすぐる。本当に綺麗な人だ。
「エリックでもフリックでもいいよ。お前もどうした。あんまりムキになるなよ」
エルリックがセレーネをなだめる。
「君たち、何か困っていることはないかな?私はこれでも次期国王なんだ、ある程度の望みは聞いてあげれるよ」
「あなたに頼ることなんて何もありま――」
「俺たち、仕事を探してるんだ。しばらくこの国に滞在しようと思っていてな」
セレーネの話を遮るようにエルリックが言う。
「その予定でしたが、あなたみたいな人が次期国王になる国なんて嫌で...むぐ.....!」
セレーネがそこまで言いかけたところでエルリックに身体を引き寄せられバックハグのような体制で口を塞がれる。
「無礼にも程があるだろ!セレーネ、何考えてるんだお前」
「んっ.....ぷはっ!エ、エルリック、急に激しいスキンシップを取るのはやめてください!い、嫌ではないのですがびっくりするじゃないですか.....こういうことは2人きりの時に.....」
この時のセレーネの赤らめた顔を見て俺は悟った。この男は、邪魔だと。
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