追放された最強剣士〜役立たずと追放された雑用係は最強の美少女達と一緒に再スタートします。奴隷としてならパーティに戻してやる?お断りです〜

妄想屋さん

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第三章 ゼフス

26 轟音

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アーリス視点

「ここが市場か、随分と人が多いのう」

「あれ?クロノスは市場に来るのは初めて?」

 俺が乗っている車椅子を押してくれているクロノスが落ち着かないようにキョロキョロとしている。

 アーリス自殺未遂事件(エルミス命名)の数週間後、俺の体はすっかり回復し、もう自分で歩けるようにもなっているのだが、過保護なクロノスが

『万が一のことがあるやもしれん』

 と言って俺は半ば無理やり車椅子に乗せられてしまった。その際

『バカに軽いのう』

 と、鼻で笑われてしまった。ハイハイ、どうせ筋肉なんてありませんよ。
 一様、一流企パーティの荷物持ちやってたんだけどな……?

 ちなみにアフロディーティはその後から、妙に俺を避けるようになってしまった。

 今日も一人のでダンジョンに潜り、一人で攻略を進めてるんだとか。

 エルミスは相変わらず騎士団のお仕事をしているはずだ。

「ああ、初めてじゃ。こんなに人が多いと、尾行や暗殺も一苦労じゃの……」

 クロノスが面倒くさそうな顔をする。

「ク、クロノス?」

「すまん。職業病みたいなもんじゃ」

 そっか、この子も他の人の言いなりだったんだもんな。

「なんか、親近感が湧いたよ」

「どんな親近感じゃよ」

 クロノスが苦笑している。

「さて!今日は何を買いに来たんじゃったかの?」

「今日の晩御飯の具材だよ」

 俺達は魚屋さんに入って何匹か魚を注文する。

「これと、これと……これを下さい」

「毎度あり!夫婦で仲良く買い物とは、アツアツだねぇ、お客さん!」

「ワ、ワワワワシらは夫婦などではないぞ!」

 クロノスは顔を真っ赤にして否定する。

「そんなに全力で否定しないでよ。傷つくじゃん……」

「あ、そ、その……別に嫌というわけじゃないんじゃぞ!ないんじゃが……」

 クロノスはモジモジとしながら俯いてしまう。

 可愛いな。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 騎士団の本部にて、エルミスは今日も街の見回りのための準備をしていた。

「……エルミス様」

 エルミスは気まずそうに話しかけて来る少女、ゼフスの方を見る。

「……おはよう」

 エルミスは冷たく挨拶するとその場を立ち去ろうとする。

「あ、あの――」
「もうあなたと話すことはない」

 そう言ってエルミスは立ち去ってしまう。
 ゼフスは悔しそうに歯を食いしばり舌打ちをする。

(全部……全部あのアーリスとかいうくそ虫のせいで、アイツ――)

「――必ず殺してやるっす」

 ゼフスは小声でそうつぶやくが、周りの人には聞こえていなかったらしい。

 ゴオオオオオオオオオオオオオ!

 急に耳が割れるような轟音が街中に響き渡る。

「あああ!うるっさい!!なんなんすかもぉ!」

 イライラしていたゼフスの機嫌はさらに悪くなり、周りのものを手当り次第剣で叩き切っていた。
 しかし、ふと窓から外の様子が目に入った瞬間、ゼフスの顔が真っ青になる。

「え!?冗談っすよね……」

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 時を同じくして、本部から外に出ようとしていたエルミスは急に頭が割れるような轟音がして、思わずその場にうずくまる。

「……なによ。これ……」

 音が収まったあと、エルミスは慌てて外に出る。

 しかし、ここからだと何が起きているか、エルミスには分からない。しかし、何かが起きている。エルミスには直感的にそれがわかった。

 音の聞こえた方向に目をこらすと、何かが浮いているのがぼんやりと見える。

「あれは……人……?」

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 優秀な雑用係を失ったフェンガーリパーティのメンバー達は今日も今日とて代わりのサポーターを探して街中のギルドを回っていたが、悲しいかな、今日もアーリスを超えるサポーターを見つけることは出来なかった。

「やっぱアーリスを奴隷にするしかねぇみたいだな」

 フェンガーリは諦めたようにため息をつく。

「そうね、もうここまで見つからないのならあのクズで我慢するしかないわね」

 ギーもフェンガーリの意見に嫌そうに同意する。

「しょうがないなー」

「まあ、フェンガーリが言うなら……」

 他の少女達も納得した様子でため息をつく。

「よし!そうと決まれば善は急げ!!今もアーリスに騙されている未来の嫁……じゃなくて仲間が俺達を待ってい――」
「Aランク特権を発動!!」

 フェンガーリの言葉をかけ消す様に、パーティメンバーの一人が叫び出す。

 フェンガーリ達の周りに光の壁が出現する。

 その直後、轟音と共に辺り一面が更地になる。

「おいおい、なんだよこれ!」

 フェンガーリとその仲間たちとは軽くパニックになっている。

 ふと上を見上げると、何者かが空に浮きながらこちらの様子を見ているのがわかる。

 橙色の髪をしたその男はフェンガーリ達のことをまるで虫けらでも見るような冷ややかな目で見下ろしている。
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