この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜

妄想屋さん

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15話

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 夕陽が差し込む教室は、すっかり人気がなくなっていた。
 カーテンが風に揺れ、机に長く影を落としている。

 窓際に座る文哉は、頬杖をついたまま外を見ていた。唇を尖らせ、目線はずっと遠く。

 「わ、わざと、かかったフリしたのに……っ」

 ぽつりと落とす声は誰にも聞かせるつもりのないもの。でも、背後のドアがそっと開く気配に、反射的に姿勢がぴしりと固まった。

 「……ふみや、いるー?」

 聞き慣れた明るい声。それだけで、文哉の心が勝手に脈を早めた。

 振り向くこともなく、「……いるけど」とだけ返す。

 梨羽は遠慮がちに一歩ずつ近づいてきた。いつもは元気な足取りなのに、今はどこかおっかなびっくりで。

 「さっきの、あれ……ほんっとに、ごめん……! ちょっとノリすぎたよね、反省してる、ほんとに!」

 言いながら、机の隣にぺたんと座り込む。制服のスカートを気にするそぶりもなく、彼女は文哉の顔をじっと見上げた。

 「……わかってるよ」

 文哉は小さくつぶやいたが、視線はまだ外に向けたまま。頬がほんのり赤いのは、西陽のせいだけじゃない。

 「でも、あそこまで言わなくても……って思ってた?」

 「べ、別に。怒ってないよ。ただ……」

 言いかけて、文哉は言葉を飲み込む。そして、ほんの少しだけ目線を落として梨羽と目が合う。

 「……俺だって、恥ずかしいんだよ。こう見えて」

 それを聞いた梨羽の瞳が、ぱちぱちと瞬いた。

 「……ふふっ」

 思わず漏れた笑い。文哉が睨み返すように口を尖らせると、梨羽は手をひらひらと振って慌てた。

 「ち、違うの! 怒ってるのが可愛いな~って思っただけで……!」

 「か、かわっ……!? 誰がだよ!」

 ぶすっと顔を背ける文哉。その肩に、そっと小さな重みが乗った。

 「えへへ……ありがとね。ちゃんと、私たちのこと、楽しませてくれようとしてたんだよね?」

 梨羽が肩にもたれてくる。距離が近い。文哉の脈拍が跳ねる。

 「……お礼しよっか?」

 「い、いや、いらないから……そういうの、余計恥ずかしいし……!」

 「うそ。ほんとはちょっとだけ、期待してるくせに~?」

 「してないっ!!」

 文哉が一気に顔を真っ赤にして立ち上がろうとすると、梨羽が笑いながらその袖を引っ張った。

 「待って待って! ……ごめん、ほんとに。文哉の気持ち、ちゃんとわかってなかった。だから……拗ねたの、許して?」

 その顔は、いつもの明るさの奥に、少しだけ不安げな影を落としていた。
 それを見た瞬間、文哉の中にあった照れくささも、意地も、ゆっくりとほどけていく。

 「……もともと、怒ってたわけじゃないし。許すも何も、ないよ」

 そう言って、そっぽを向いたままぼそりと付け足す。

 「……あんまりイジワルすんなよ。ほんとに泣かすぞ」

 「えっ、脅し? こわっ!」

 梨羽が笑いながら跳ね起きる。そして唐突に、文哉の背中にぽすんと抱きついた。

 「よーし、これで仲直り完了! 文哉、だーいすきっ!」

 「ば、バカ……声でかいっての……!」

 「聞こえてもいいし~。むしろ聞かせてやろーよ、あたしが“彼女候補No.1”ってとこ!」

 「勝手に決めるなっ!」

 照れ隠しの怒鳴り声が教室に響いたころには、文哉の口元も、いつの間にか笑みに変わっていた。

 西陽が、ふたりの影を優しく包んでいた。

✿✿✿✿

 演習空域に、冷たい電子音が響く。
 無機質な戦闘開始のアラート。その瞬間、空気が変わる。

 文哉の愛機〈アカツキ=バーンブレイカー〉が、機体後部の“ヴェロシティ・スラスター”を微かに噴かせて滑るように前進する。
 対するは、女性用汎用バイオギア〈リファイン=カレント〉×2機。

 黄色と白を基調とした装甲に、艶やかな黒いスーツ地が密着するように覗き、その曲線は戦闘用とは思えぬほどしなやかだ。
 背部から浮遊するドローンアームが光を弾き、空中にホログラムのデータ帯を散らしていく。まるで“技術そのもの”が舞っているかのような幻想的な光景。

 ――が、文哉の視線は冷静そのものだった。

 (数は二機。ドローンユニットの制御範囲は中距離……支援と攪乱が主軸のスタイル。なら……)

 次の瞬間、〈アカツキ=バーンブレイカー〉が疾駆する。

 赤のエネルギーラインが瞬間的に発光し、斜めに切り上げるように突進――左の個体を狙い撃つ。
 だが、敵機は即座にドローンを展開し、バリアフィールドを構築。直撃は防がれる。

 (防いできたか……でも、バリアの再展開には僅かにタイムラグがある)

 その“隙”を、文哉は見逃さなかった。
 反転するようにスラスターを噴かし、敵機の背後へと躍り出る。

 右手のブレードが、ドローンユニットごと敵の防御システムを切り裂いた。

 「あっ――!?」

 通信の向こう、敵オペレーターの驚きが漏れる。
 だが文哉は淡々と動作を完遂し、続くもう一機の照準を瞬時に合わせた。

 中央コアに向けた《紅蓮閃破(バーニング・シンフォニア)》の収束光線が放たれ、敵機は光に包まれて緊急停止。

 ――模擬戦、終了。

 空に漂う粒子の中、文哉は息ひとつ乱さず、愛機を降ろした。



数時間後・文哉の部屋(専用寮)

 戦闘から戻った文哉は、いつも通りシャワーを浴び、バスタオル一枚で部屋に戻っていた。

 バイオギア演習後の疲労感は、身体というより精神の方が大きい。
 それでも、不思議と心は穏やかだった。勝ったからというより――“動ける自分”を実感できたから。

 「さて、着替えるか……」

 そうつぶやきながら、制服のシャツに手を伸ばした、その時だった。

 ――ガチャリ。

 「ふみやー! すごかったよ今の戦っ……」

 入ってきたのは、元気な声とともに飛び込んできた、海里しずく。

 「あっ」

 「あっ……」

 しずくの目が、くっきりと文哉の裸の上半身を捉えた。

 肩から伸びた健康的な筋肉、まだ水滴が残る腹筋のライン、腰にかかるタオル一枚。

 時が――止まった。

 「わ、わわ、わわわわ……っ!!」

 しずくの顔が一気に茹で上がったように真っ赤になり、両手で顔を覆う……が、指の隙間からしっかり覗いている。

 「ちょ、しずく!? ノックは!? ノックって概念、忘れたの!?」

 「わ、わ、忘れてたっていうか! ほ、ほら、普段なら着替え終わってるかなーって……てかてか、やばっ、やばっ、まって!!」

 慌てて背を向けるしずく。その動きはパニックそのもので、まるで誰かに“赤面ハイライト”を描かれているかのようだった。

 文哉はというと、最初は驚いたものの――そこまで取り乱しているしずくを見て、逆に冷静になってしまっていた。

 「……お前、そんなに見られて恥ずかしがるんだったら、来る前に確認しろよ……」

 「それはそうだけどっ! でもでもっ! ちがっ、あたし、別に見たかったわけじゃ――いや、ちょっとは見たかったけど……ってなに言わせるのー!!」

 「……なんでそこで正直になるんだよ」

 呆れと笑いが混ざったような声が漏れる。

 それでも文哉は背を向けたまま、タオルを巻き直し、ゆっくりと制服に袖を通す。

 その間もしずくは完全に固まりっぱなしだった。耳まで真っ赤、口は半開き、目は泳ぎっぱなし。

 ようやく振り返った文哉が「ほら、もう大丈夫」と言った瞬間――

 「うわああああああああ!!!!!」

 しずくが何かを振り払うように部屋を飛び出していった。

 「……おい」

 しばらく静かになった部屋で、文哉は乾いた笑いを漏らした。

 (……まあ、あれだけ動揺されたら、こっちが恥ずかしがってる場合じゃないな)

 タオルを干しながら、彼はぽつりとつぶやく。

 「しずくのやつ……あとでめちゃくちゃ謝ってきそうだな」

 その顔は、ほんのりと笑っていた。
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