おっぱいSS

北野

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おっぱいSS

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「紅蓮って乳のデカい女が好きだよな」
 テレビに映っていた爆乳アイドルに釘付けになっていた紅蓮が、「お?」ととぼけた顔で振り向いた。
「デカければいいってもんじゃないぞ」
「君にも流儀があるんだな」
「まあ、ないよりはあるほうが好きだけどな」
「だよな」
 冬弥は? 聞き返されていることにも気付かない。紅蓮の視線がテレビに戻ったのを確認して、冬弥は自分のひらぺったい胸をスウェットの上からひと撫でした。
「なあ、冬弥は?」
「何が」
「巨乳派か、貧乳派か」
「僕は大きくも小さくもないのがいい」
「そういう奴に限ってこだわりが強かったりするんだよなあ」
 筋トレ趣味で生来体格にも恵まれている紅蓮は、それなりにふくよかな乳を持っている。寄せて上げたら谷間ができるくらいの立派な乳を持っていて、冬弥は疲れてどうしようもないときにそれに顔を埋めさせてもらったりする。
 その紅蓮に「筋肉がつくとエロくなりすぎて公然わいせつ罪で逮捕されるからダメ」という理不尽極まりない理由で筋トレを禁じられている冬弥は、生来もやし体型なのも相まって、乳と呼べるものはまったくといっていいほどない。形が透けて見えるようなあばら骨の上には、薄い皮膚が張られているだけで、肉と呼べるほど肉はなく、どこまでも平原な胸の端に控えめな乳首がちょっと凹凸を作っているだけだ。
「デカければいいってもんじゃないって、例えば?」
 この乳を大きく育てられる可能性は限りなく低いが、それ以外の要素なら努力できる可能性がある。
「形だろ」
「垂れてないとか?」
「ロケットランチャーみたいとかな」
「ロケットランチャーが好きなのか?」
「乳首のサイズや色もこだわりたい」
「どんなのが好きなの?」
「難しい質問だな……」
 テレビを見たまま腕を組み、紅蓮は真面目に考えているが、聞いて損したな、と冬弥は思った。乳をデカくする以上に、乳首のサイズや色を変えるのは難しい相談だ。真っ黒な乳首が好きだと言われればもしかしたら対応できるかもしれないが、淡い桜色のぷるぷるつやつやの乳首が好きだと言われたら、紅蓮に散々舐られた自分の乳首は、もう取り返しがつかないところへいきかけている。
「それこそ、大きすぎず、小さすぎず……」
「あ、あとは……?」
「何の話してたんだっけ」
「だから……おっぱいの好きなところ」
 紅蓮の後ろでベッドに腰掛けて、ぺたんこの胸をなでさすりながら、不安の面持ちで冬弥は問う。
 紅蓮は背を向けたまま考えて、答えた。
「見せ方も大事だよな」
「見せ方か」
 それなら努力できるかもしれない。紅蓮の好みのストライクゾーンから見たら完全に暴投の自分の胸の、それでも彼がバッドを振ってくれそうな、見せ方。見せ方……。


 爆乳アイドルの乳ばかり見ている自分に冬弥が嫉妬していることは察していた。察していたが、どうすれば自分の乳で気を引けるか考えている様子の冬弥があんまりにもかわいかったので、紅蓮は気付かないフリをしていた。果たして彼は自分の気を惹くためにどんな答えを出すだろうか。ちょっと意地悪している自覚もありつつ、まあ控えめな自分の恋人がそんな大胆なことはしてこないだろうとも思いつつ、色々と妄想を膨らませる。どんな見せ方をしてきても、冬弥の胸はかわいいし、冬弥は何をしてもかわいいのだった。どんなグラビアアイドルの豊満な乳房より、冬弥の薄くてひらぺったい胸がいっとう愛おしいことは、毎日伝えても分かってくれないので、紅蓮の秘密ということになっている。
「……紅蓮」
「ん?」
「……んっ」
 準備が整ったらしい。紅蓮はちょっとウキウキして、緩みそうになる目や口元をがんばってシャキンとさせて、振り向いた。
 そこに、冬弥がいる。
 たくしあげたスウェットのすそを、唇ではむと咥えて、ほんのり桜色にも見える愛らしい右乳首を外気に触れさせている恋人がいる。
 いかにも恥ずかしそうな、ちょっと不安げな、悩ましい顔つきで、「ん……?」と評定を求めながら小首を傾げる、俺のかわいい恋人がいる。
 がんばってシャキンとさせていた目や口元が、勝手に真顔になる。あまりに可愛いものを見ると一周回って真顔になるのだった。爆乳アイドルの映ったテレビを叩きつけるような勢いで消し、驚いてちょっと身を引いた冬弥を逃がすものかと抱きしめて、ひと思いに。
 平らな胸に顔を埋め、ぢゅううっと吸い上げて、思いきし頭を叩かれた。(終)
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