おにぎりレシピ

帽子屋

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まだまだ開かない世界

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――引き続き4月。都内某所。社屋ドア前。

え? なんで? なんで開かないの?
鍵がかかっているからだよね。それはわかります。なんで鍵が?
ああそうか。昨日の夜の業務が終わって、鍵を閉めたわけですね。でも朝が来て今日はまた業務が始まりますよね。 え? 今日って会社お休みですか?

へっぽこ潜入捜査員、ナル、現在ここでの姿は鳴海月なるみるな(♀)はテンパっていた。

施錠されたガラスドアの向こう、会社内フロアをよく見れば、確かに照明がまばらにしかついていない。ここへくる手前のエレベーターホールが明るかったのは、ビルの管轄だからだろうか。廊下の左右を見れば、どちらも薄暗く、遠くに非難口誘導灯のいつもダッシュなミドリくんが見える。

お、落ち着け。
ちょっと僕、今、すごい焦ってる。冷静に。冷静に。情報局局員たるもの、いつでもどこでも冷静に……。

肩にかけた鞄からクリアファイルに入れてある初出社の場所日時が書かれたペラ紙を取り出して、記載事項を確認する。

まずは場所だよね……出社場所間違いとか、ないよね……。
スマホを取り出してGPSで位置を確認する。間違いない。場所は間違えていない。住所も建物の階数も、何より面接のときにくぐったこのドア、そして正面に書かれている社名も間違いない。よし。
次。日時。日付、時間、間違いない。スマホの日付日時の設定も、この世界のこの国の標準時間で間違いない。
念の為に腕時計も確認するが出社時間と書かれた時刻より、15分ほど早い時間。
この世界時間換算15分前には現着って基本じゃなかったっけ……。
なんで、開いてないんだろう。電気すらついてないってことは誰もいないってこと……?
……。
これってもしかして……緊急事態?
え? 緊急事態?! うそ? いきなり何かの妨害工作?! それって、僕、初日からバレてるってこと?!
すっごいまずくないですか??!!

やはりテンパっていた。

いきなりエマージェンシーコールの発動も気が引けるし、何しろ、初の潜入捜査でようやく訓練期間を終えて望んだ実戦初日。いきなり実践開始前に助けを求めるのも、いかに自分がヨリナシで能力がないとわかっていてもかなり寂しい結果な気がするし、何より期待して任務を任せてくれた皇帝陛下や長官に申しわけない。

……た、多分ね。期待されてる、と思うんだけど。出発前の謁見では皇帝陛下「期待してる」って仰られてましたし、そこはかとなく笑いをこらえていらっしゃるようなお顔に見えなくもありませんでしたが、いつも笑ってらっしゃるようなお顔ですし……。長官は……なんとなく不機嫌そうな、不満そうな、心配そうな複雑不思議な顔されてましたけど「まぁがんばってこい」って言ってくださいましたし。

……。
僕、がんばります!
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