25 / 27
Ch.2
25
しおりを挟む
「ここが一番辛気臭くて人がいなさそうだった」
少年はタンタンとテーブルを指でそう言った。
「他人に聞かれたくない話ときいたら、聞かないわけにはいかないね」
「残念だがそんなたいそうな話じゃない。仕事がらみだ」
男はにっこりと微笑んだが、少年はもう一度テーブルで音をたてその笑顔を遮った。
「仕事……仕事か。きみの仕事はなんでも胡散臭い。なんといっても緑のサンタだからなあ。子供を守る守護者であり、愚かな人間の断罪者、断罪どころじゃないね。こちらの世界でいうところの削除者、現実世界じゃ引越し屋だ。もちろん、ソリで運ぶのは荷物ではなく人間だけど。怖いねえ」
怖い、怖いと男はやはり笑顔で繰り返した。
「辛気臭いよりマシだ。本題に入っていいか?」
笑いだしそうになるのをこらえて、どうぞ、と男は白い手袋をした手を少年の前に出した。
「子供を捜している」
「子供……子供の姿をした死人ってことかな? ここじゃ数百歳の子供や幼体って設定もたくさんあるからねぇ。最近子供の姿のまま葬儀をしたのは……」
男はテーブルの上で組んでいた手をほどき、ベストから懐中時計を取り出すとパチンと音を弾かせて蓋を開く。開いた盤面には男にしか見えないデータが並んでいるに違いなかった。
「ちがう。生きている子供を捜している。現実世界の時間で7歳だ」
「子供のユーザー? 若年層のユーザーは増えているけど、7歳となるとそうはいない。何せここでの生活はそれなりにコストがかかるし、それを自分自身で賄わなくてはいけない。それに、7歳という年齢で我が社を訪れる人間にはいまだ出合ったことがない。きみ以外では」
俄然興味をそそられた男は、時計の上で指を数回躍らせた。
「捜している子供はこの世界の住人じゃない。問合せ済みだ」
「それはそれは。全ユーザー照会済なんて職権乱用に加えてきみじゃなきゃ出来ない所業だね」
にっこりと意味深に笑う男に、少年は鼻を鳴らす。不機嫌そうな顔の前に、唐突に湯気が現れた。男
「きみもどう? 最近気に入ってるんだ。きみがいる国の紅茶だよ」
「いらん」
それは残念。美味しいのに。男は魔法のように、この世界のこのエリアは魔法が存在するから、すべからく魔法で懐中時計から取り出した美しい花をあしらったティーカップを傾けた。
「現実世界の子供本人から捜してくれと連絡をもらった。だが待ち合わせ場所は空っぽの箱で、子供の代わりに花と身元不明の死にぞこないが詰まってた」
「へぇ。そりゃ愉快。箱を送るのはサンタの仕事だろうに。空っぽの箱だなんて随分と意地が悪い。いや、詰まっていたなら空ではないか。箱と言えばたしかにうちの商売道具だが、死にぞこないは、まだうちの領分じゃない」
それで? と、男は紅茶の香りを楽しむように話しを聞く。
「この花は、この世界でしか見たことがない」
そう言ってロクは、無造作に宙で手を振ると空っぽの箱の中で咲いていた、離別要請を受けて赴いた一室の部屋を覆いつくすほど投影されていた花で支配人の前に花畑を創ってみせた。ついでに、男のティーカップの目の前で指を鳴らすと、ティーカップにあしらわれていた花たちまでもが、花畑におりてきた。
男はいつも笑っているような細い目をほんの少し開いて、この魔法好きの天邪鬼チートキャラめと呟いた。
「僕を呼んだ子供の情報と、あんたのとこの契約者の相続の情報に一致するものがないかを調べてくれ。もちろん、あんたの会社だけの話じゃない。この世界の全てのOUTで該当するデータがないか検索してほしい。それからこの花のことも」
「無茶をいうね」
「それでもあんたはやるだろう?僕はあんたが何者かを知っているし、あんたに何が出来るかも知っているんだから」
少年はタンタンとテーブルを指でそう言った。
「他人に聞かれたくない話ときいたら、聞かないわけにはいかないね」
「残念だがそんなたいそうな話じゃない。仕事がらみだ」
男はにっこりと微笑んだが、少年はもう一度テーブルで音をたてその笑顔を遮った。
「仕事……仕事か。きみの仕事はなんでも胡散臭い。なんといっても緑のサンタだからなあ。子供を守る守護者であり、愚かな人間の断罪者、断罪どころじゃないね。こちらの世界でいうところの削除者、現実世界じゃ引越し屋だ。もちろん、ソリで運ぶのは荷物ではなく人間だけど。怖いねえ」
怖い、怖いと男はやはり笑顔で繰り返した。
「辛気臭いよりマシだ。本題に入っていいか?」
笑いだしそうになるのをこらえて、どうぞ、と男は白い手袋をした手を少年の前に出した。
「子供を捜している」
「子供……子供の姿をした死人ってことかな? ここじゃ数百歳の子供や幼体って設定もたくさんあるからねぇ。最近子供の姿のまま葬儀をしたのは……」
男はテーブルの上で組んでいた手をほどき、ベストから懐中時計を取り出すとパチンと音を弾かせて蓋を開く。開いた盤面には男にしか見えないデータが並んでいるに違いなかった。
「ちがう。生きている子供を捜している。現実世界の時間で7歳だ」
「子供のユーザー? 若年層のユーザーは増えているけど、7歳となるとそうはいない。何せここでの生活はそれなりにコストがかかるし、それを自分自身で賄わなくてはいけない。それに、7歳という年齢で我が社を訪れる人間にはいまだ出合ったことがない。きみ以外では」
俄然興味をそそられた男は、時計の上で指を数回躍らせた。
「捜している子供はこの世界の住人じゃない。問合せ済みだ」
「それはそれは。全ユーザー照会済なんて職権乱用に加えてきみじゃなきゃ出来ない所業だね」
にっこりと意味深に笑う男に、少年は鼻を鳴らす。不機嫌そうな顔の前に、唐突に湯気が現れた。男
「きみもどう? 最近気に入ってるんだ。きみがいる国の紅茶だよ」
「いらん」
それは残念。美味しいのに。男は魔法のように、この世界のこのエリアは魔法が存在するから、すべからく魔法で懐中時計から取り出した美しい花をあしらったティーカップを傾けた。
「現実世界の子供本人から捜してくれと連絡をもらった。だが待ち合わせ場所は空っぽの箱で、子供の代わりに花と身元不明の死にぞこないが詰まってた」
「へぇ。そりゃ愉快。箱を送るのはサンタの仕事だろうに。空っぽの箱だなんて随分と意地が悪い。いや、詰まっていたなら空ではないか。箱と言えばたしかにうちの商売道具だが、死にぞこないは、まだうちの領分じゃない」
それで? と、男は紅茶の香りを楽しむように話しを聞く。
「この花は、この世界でしか見たことがない」
そう言ってロクは、無造作に宙で手を振ると空っぽの箱の中で咲いていた、離別要請を受けて赴いた一室の部屋を覆いつくすほど投影されていた花で支配人の前に花畑を創ってみせた。ついでに、男のティーカップの目の前で指を鳴らすと、ティーカップにあしらわれていた花たちまでもが、花畑におりてきた。
男はいつも笑っているような細い目をほんの少し開いて、この魔法好きの天邪鬼チートキャラめと呟いた。
「僕を呼んだ子供の情報と、あんたのとこの契約者の相続の情報に一致するものがないかを調べてくれ。もちろん、あんたの会社だけの話じゃない。この世界の全てのOUTで該当するデータがないか検索してほしい。それからこの花のことも」
「無茶をいうね」
「それでもあんたはやるだろう?僕はあんたが何者かを知っているし、あんたに何が出来るかも知っているんだから」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる