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全く油断した状態、不意をつかれて転倒し、したたかに打ちつけた身体のあちこちをさすりながら、俺は神田の後ろをついて歩いていた。
「もう~ 遅いから迎えにきたよ~ どれだけお茶飲んでるの~? 油売るにも程があるでしょ~」
「痛(い)ててて…… あー…… スマン……」
俺はあの縁側に案内されてから、神田のことをすっかり忘れていたことは内緒にして、大人しく首を垂れて謝った。
「まったく~」
しかしそんなに長居したつもりはなかったが、たしかに太陽はだいぶ傾いていた。田んぼの上を朝の色とはまた違う濃い金色をした光が風に乗って流れていくようだった。穏やかな景色の中、田んぼの一本道を、山へ向かったときと同じように、大きな麦藁帽子をかぶった大の大人二人が、子供の頃の夏休みスタイルで歩いていく。だが負傷した俺が、神田の虫取り網まで持たされているのはなぜだろう。前にいる神田と言えば虫が詰まった箱とさくらさんから渡された土産を大事そうにぶら下げているだけで身軽にのほほんんと歩いている。
そういや、昔、こんな風に誰かの後をついていったような。その時も、俺、網を渡されて。それは虫取り網だったか、魚捕りの網だったか。どっちだったかな。俺はでこぼこした土の地面を眺めながら遠い昔、子供の頃の夏の記憶を思い返していた。
「で~ あんなに~ 長い時間~ さくらさんと何してたの~?」
「は?」
「油を売るだけじゃないんじゃないの~?」
「バカか!」
俺は神田の挑発的からかいにまんまとのって、勢い良く首を、背中を起こした。そしてその衝撃と体の内なる鈍い音と痛みに声を上げた。
「いってぇぇぇぇ!!」
転んだ拍子の損傷は、思ったより深いらしい。
「バカはきみでしょ~」
神田の呆れた冷ややかな視線、とは言っても目が開いてないんでどんな視線かはわからないが、目の周囲の雰囲気だけでも十二分に冷ややかなものと同時に溜息が吐き出された。
「もう~ 遅いから迎えにきたよ~ どれだけお茶飲んでるの~? 油売るにも程があるでしょ~」
「痛(い)ててて…… あー…… スマン……」
俺はあの縁側に案内されてから、神田のことをすっかり忘れていたことは内緒にして、大人しく首を垂れて謝った。
「まったく~」
しかしそんなに長居したつもりはなかったが、たしかに太陽はだいぶ傾いていた。田んぼの上を朝の色とはまた違う濃い金色をした光が風に乗って流れていくようだった。穏やかな景色の中、田んぼの一本道を、山へ向かったときと同じように、大きな麦藁帽子をかぶった大の大人二人が、子供の頃の夏休みスタイルで歩いていく。だが負傷した俺が、神田の虫取り網まで持たされているのはなぜだろう。前にいる神田と言えば虫が詰まった箱とさくらさんから渡された土産を大事そうにぶら下げているだけで身軽にのほほんんと歩いている。
そういや、昔、こんな風に誰かの後をついていったような。その時も、俺、網を渡されて。それは虫取り網だったか、魚捕りの網だったか。どっちだったかな。俺はでこぼこした土の地面を眺めながら遠い昔、子供の頃の夏の記憶を思い返していた。
「で~ あんなに~ 長い時間~ さくらさんと何してたの~?」
「は?」
「油を売るだけじゃないんじゃないの~?」
「バカか!」
俺は神田の挑発的からかいにまんまとのって、勢い良く首を、背中を起こした。そしてその衝撃と体の内なる鈍い音と痛みに声を上げた。
「いってぇぇぇぇ!!」
転んだ拍子の損傷は、思ったより深いらしい。
「バカはきみでしょ~」
神田の呆れた冷ややかな視線、とは言っても目が開いてないんでどんな視線かはわからないが、目の周囲の雰囲気だけでも十二分に冷ややかなものと同時に溜息が吐き出された。
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