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唐突な話に、老婆は動作を止めややあって口を開いた。
「隠れると仰られましても、何からどこへ隠れたらいいのでしょう」
『それは……』
全く当然の問いだった。俺はあの男の残した言葉と、兎の言葉を伝えているだけで具体的なことなど何も知りやしない。無責任にも程があると言えばそれまでだ。
『それは、わからないんですが、兎が旅立つ時に俺に言い残したんです。それにある男の言葉も気になって……』
「兎めはなんと?」
『滅多切りされた人間からの伝言だと……この山から早く出ろと。彼がこの山にいることが、その人間の心残りとなって随分と長い時間旅立てずにいるそうです』
「滅多切りされた人間……」
老婆は思いを廻らせるように目を閉じ、俺の首元に視線を寄せると深く息を吐き「そうですか」と静かに続けた。その様子に、俺は何かを知っているのだと気付いた。
『何かご存知なんですね』
「随分と昔の話になります。あの子は何も覚えてないでしょう。貴方様もお忘れのようですね。あの白い方が仰っていたとおり何もかもお忘れになられている。しかし、やはり白い方が仰られたとおり、その方がいいのかも知れません。何せ貴方様は鬼なのですから。あまりにお優しすぎる鬼でいらっしゃる」
『俺は、鬼と言うわけでは……』
「耐え難い、埋まることのない、その空腹が何よりの証拠。全てを喰らってしまえば良いものを、それが出来ない貴方様はいつまでもその空腹に苛まれ続けていらっしゃる。ばばには、貴方様はやはり白い方のそばを離れるべきではないと思いますが。これは余計なお節介でしょうか。ばばは、この先、今よりもう少し先でしょうが、それでも貴方様はいつか全てを飲み込んでしまうように思うのです。さすれば貴方様はたった一人になってしまわれる。この何百年かで勢力を増してきた愚かな人間どものせいで、いつしか貴方様は御一人に。その時白い方がお側にいらっしゃればよいが」
「隠れると仰られましても、何からどこへ隠れたらいいのでしょう」
『それは……』
全く当然の問いだった。俺はあの男の残した言葉と、兎の言葉を伝えているだけで具体的なことなど何も知りやしない。無責任にも程があると言えばそれまでだ。
『それは、わからないんですが、兎が旅立つ時に俺に言い残したんです。それにある男の言葉も気になって……』
「兎めはなんと?」
『滅多切りされた人間からの伝言だと……この山から早く出ろと。彼がこの山にいることが、その人間の心残りとなって随分と長い時間旅立てずにいるそうです』
「滅多切りされた人間……」
老婆は思いを廻らせるように目を閉じ、俺の首元に視線を寄せると深く息を吐き「そうですか」と静かに続けた。その様子に、俺は何かを知っているのだと気付いた。
『何かご存知なんですね』
「随分と昔の話になります。あの子は何も覚えてないでしょう。貴方様もお忘れのようですね。あの白い方が仰っていたとおり何もかもお忘れになられている。しかし、やはり白い方が仰られたとおり、その方がいいのかも知れません。何せ貴方様は鬼なのですから。あまりにお優しすぎる鬼でいらっしゃる」
『俺は、鬼と言うわけでは……』
「耐え難い、埋まることのない、その空腹が何よりの証拠。全てを喰らってしまえば良いものを、それが出来ない貴方様はいつまでもその空腹に苛まれ続けていらっしゃる。ばばには、貴方様はやはり白い方のそばを離れるべきではないと思いますが。これは余計なお節介でしょうか。ばばは、この先、今よりもう少し先でしょうが、それでも貴方様はいつか全てを飲み込んでしまうように思うのです。さすれば貴方様はたった一人になってしまわれる。この何百年かで勢力を増してきた愚かな人間どものせいで、いつしか貴方様は御一人に。その時白い方がお側にいらっしゃればよいが」
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