サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

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最終章 半端でも仙人

第144話 行く者と残る者

「こんなに早く別れると思ってなかったな」
「こういう時って唐突ですね」

 2人を見送りに首都の大門へ来ている。
 イツキとアオイの両方とも、笑顔でこれからの旅を楽しみにしているようだ。
 その2人の奥では、エリンや妖精族の仲間達が、馬車に荷物を積み込んでいる。何十羽と魔鴨を引き連れる大所帯は、他の人たちからみても不思議な光景。さらにハイエルフが先導しているとわかって、野次馬が増えて来た。

「散れ! 散れ! 入りたい奴らの邪魔するんじゃないわい」
「ノーリも見送りか?」
「エリン様の出立じゃろ? こんな機会は2度と来んからのぉ」

 エリンが出発する時は、常に唐突で見送りなんてすることは無いそうだ。そう言われるとイメージにマッチする。

「若い2人に次会うた時は、もう大人じゃろうな」
「立派になって来ます!」
「おうよ!」

 次かぁ。
 何十年後になるか。何百年後になるか。

「あー。2人に言うておくが、こいつに会いたきゃ来い。こいつから行くことは無いからの」
「はい!」
「そうだよな」

 そんなに薄情か?
 確かに、会いに行くってあまり無いな。
 カオルも挨拶しなくて良いのか聞くと、ゆっくりと話出した。

「召喚されて、まだ1年も経ってないのに、長く一緒にいた気がする。寂しいけど、2人とも元気でね」
「色々助けられた。ありがとう」

 イツキとカオルが握手し終わると、アオイがカオルにだけ聞こえるよう小声で話す。

(僕も彼らのことは許せない。だけど、どうこうするのは辞めたよ。そういう選択もあるとだけ言っておくね)
(今はそんな風に考えられない。でも、覚えておく)

 去り際に、アオイがこちらに向かって笑う。

 耳が良いから話は聞こえたけど、そういう表情を読み取るのは専門外だっつーの。下手に何か言える状況でも無いから黙っておくけどさ。

「じゃあねー! ノール達ならいつでも来て良いよー!」
「はいよー!」

 魔鴨の脚力で進めば、あっという間に米粒サイズ。ここ数日は、嵐のようだったな。

「ところでのう。ノールは儂らやエルフの里だが」
「うん」
「場所は知っておるのか?」
「知るわけ無いじゃん。聞いてないんだし」

 ノーリのため息が周辺に響き渡る。

「それなら、場所を知らないと言えば良いじゃろ」
「そういう流れだと思ったんだよ。あの状況じゃ知らないって言えないじゃないか」

 今度はカオルがため息をつくが、少しスッキリした顔になる。

「まぁ、似たもの同士だから良いのかなと思います」
「それは言えるな! がっはっは!」

 ノーリの笑い声が合図となり、遠巻きに見ていた野次馬達が帰り始めた。

「儂らも帰るぞ!」



 都の端っこは、人通りも少ない。
 人によって感じる違いはあるだろうけど、今は長閑《のどか》ではなく、閑散《かんさん》としている気がした。

 無言で歩くカオルと、その後ろをゆっくりついてくるペロ。

「私は、アオイ君達と積極的に話して無かったと思うんですけど」
「そうか」
「やっぱり、ここまで一緒だった2人は仲間だったのかと思います」

 ん?

「仲間と離れるって寂しいですね」

 今まで仲間と思ってなかったのかと、ツッコミ入れたかったが、ここはシリアスな部分だろう。グッとこらえて一言だけ。

「そうだな! ぶへぇ」

 急にペロがのしかかって来て、その巨体に押しつぶされた。

「ちょ! ペロちゃんやめて!」

 俺の頭上からモシャモシャする音と、若干《じゃっかん》頭を引っ張られる感覚。

「ま、まさかお前。髪の毛はやめろ!」
「ペロちゃん! はーなーれーてー」

 何度か揺さぶられる感覚があった後、背中が軽くなった。

「俺の髪生きてる? クソトカゲが!」

 トカゲ独特の舌を出し入れを見せつけつつ、前足でタンタン地面を叩いている。
 時折、こんな風にアピールしてくることがる。飯を催促する合図だ。

「あー、もうお昼でしたね。早く戻ってごはんにしましょう」

 頭部のぬっちゃり感を残しつつ、家路に着くと、カオルが肉を準備する。
 俺は当然洗髪だ。




「さて、これからの訓練だけど」
「はい」
「今日からクラゲ君にも参加してもらう」

 俺の後ろでふよふよ漂っている奴は、カオルが以前使役していたやつだ。

「私から使役を解除したのに、訓練に付き合ってくれるんですか?」

 確かにそれはあるな。
 だけど彼らにとって、そんなことはどうでもいいこと。

「彼には報酬が出るからね」

 俺の言葉に反応して、触腕を天に突き上げる。
 彼なりに「そうだ」と言いたいのだろう。
 そう思い込むことにして、ニンニクを1粒放り投げる。

「ニンニクもそうだが、カオルからも報酬を出してもらう」
「報酬と言っても物によりますよ」
「そんなに難しいことじゃないし、訓練と同時にやるから問題ないよ」




 森に響く甲高い絶叫を聞き流しつつ、指示を出す。

「ペロ君。ちょっと遅いんじゃないか? 賦活が弱いの?」

 口を広げて噛み付くフリをすると、足を早め出す。

「きゃぁぁぁぁ! ちょ、ちょっと待って!」
「クラゲ君も弾幕弱いよ」

 水を弱めに出すのは良いが、弾数が少ない。
 ちっ。報酬をケチりすぎたか。

「そういえば、この間毒キノコみつけたっけなぁ」

 触手にピシピシ叩かれて痛い。

「欲しいならちゃんとやってよ!」

 やっとやる気になったか。
 縦横無尽に飛び交う水鉄砲と、それをギリギリで躱し続けるペロ君。
 カオルはすでにビチャビチャだ。
 グロッキー状態のカオルだが、たまに生えている毒草は気合いで摘んでいた。


 それから昼過ぎまで森を駆け回り、家に戻るとカオルは倒れ込む。

「うぅ。気持ち悪い」
「いや。自分に賦活かけなよ」

 言われて思い出したかのように、賦活を使い始める。
 ペロ君にだけかけて、自分に賦活を使わないからそういうことになるんだ。
 と言っても、まだ同時に出来ないんだろうな。
 そこら辺も早いうちに覚えないと、強くなれないぞ。

「先に言っておくけど、ドラちゃんみたいな強さは手に入らないぞ」
「わかってます」

 残酷なまでに才能の世界だからな。
 俺が出来るのは、長年掛けて覚えた凡人の強さだ。
 カオルも従魔士という才能はあるけれど、本人の力では無いからねぇ。

「従魔増やすんでしょ?」
「それしか無いかなと思ってます」

 単体で弱かったら、数で補うしか無いよね。
 でも、弱すぎても意味無い。

「どいつを仲間にするか……。傭兵団に相談してみたら?」
「ドワーフの方のですか?」
「いや、他の人でも良いよ。どんな魔物が強いか、扱いやすいか。多くの人に聞いた方が良いんじゃ無い?」

 ここから先は現地の人に聞いた方が早い。
 ということで、午後はフリーにした。
 カオルは、クラゲ君に先ほど摘んでいた毒草を渡すと、さっそく傭兵団へ行く。

 そして、俺は森で調査。

「すぅぅぅ。はぁぁぁ。やっぱり森って良いよね」

 近隣の植物から動物まで、夜まで見続けた。
 少し離れた場所には面白い生物がいる。そこでは、吸血する生物が多く、狼や熊まで血を啜っていた。植物も赤い茎に血を溜め込み、若干の鉄臭さを漂わせている。
 近隣だったら嫌だけど、たまに来る分には面白い場所だな。

 家に戻ると辺りは暗くなっており、食事の準備を忘れていたことに気づく。

「もう戻ってたか! すまん。飯の準備を忘れてた」
「おかえりなさい。帰りに面白い料理を見つけたから、買って来ちゃいました」

 カオルが見せてくれたのは、キャベツに包まれて煮込んだ物。

「ロールキャベツなんて久しぶりですよね?おいしそうだなぁ」

 知らずに買ったのか。

「これがサルマーレだぞ」
「へぇ。首都の名前と一緒なんて、奇遇ですね。ここの発祥なんでしょうか?」

 過去に戻れたらルーマニアの料理本を見せつけてやりたい。
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