僕らの青春は、光と影のグラデーション(完結)

甘塩ます☆

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 冬休みを経て、悠真と律の関係はさらに親密になっていた。
 そして、周りの友人たちもそれを温かく見守ってくれていた。
 悠真と律が二人で話していると、他の寮生たちは自然と距離を空けてくれる。

「みんな気を使わせちゃって、ちょっと悪いな」

「そうだね。アキラや陸斗、祐介と瑞輝にまで気を使わせちゃって……」

 最近、アキラや陸斗、祐介と瑞輝も朝食や昼休みを一緒に過ごすことはなくなり、律と悠真は二人きりの時間を過ごさせてもらっている。
 もちろん、四人の輪へ律と悠真が入れば快く迎え入れて楽しく会話をしてくれるので、避けられているわけではなかった。

「みんな、俺たちを応援してくれてるんだ」

 悠真はそう言って、律の手を優しく握った。





 一方、陸斗はアキラと二人きりになりたい気持ちと、瑞輝が祐介にちょっかいを出すのではないかという心配の間で揺れ動いていた。

「アキラ、昼飯、一緒に食おうぜ。祐も一緒にな」

 陸斗はそう言って、いつも祐介を誘う。
 アキラは陸斗と二人きりで話したいと思っていたが、陸斗がいつも祐介を連れてくるので、少しモヤモヤしていた。

(俺より、やっぱり弟が大事なんだな。弟といる方が陸斗は楽しいんだ……)

 そんな風に祐介に嫉妬心を抱いてしまう自分自身もアキラは嫌である。

 学食で昼食を食べ、終われば三人で音楽室に向かう、そして陸斗とアキラは二人の世界だ。
 それを祐介はウンウンと頷きながら見ている。
 祐介からしたら(何なんだろうかこの時間は)だ。
 兄と友人の友達以上、恋人未満みたいな関係を見せつけられる訳の分からない時間である。
 そんな陸斗の行動に、祐介もまたイライラし始めていた。
 朝食、昼食、夕食を一緒に取りたがり、昼休みも、放課後も一緒にいようとする過保護な陸斗に、祐介は息苦しさを感じていた。
 そして、陸斗もアキラも二人っきりになりたいのに、自分という異質な存在が側にいて邪魔をしてしまっているのも居た堪れない。
 兄は何を考えているのか。
 アキラと二人っきりになるのが、怖いのだろうか。
 欲望が抑えられず、アキラに変なことを言ったりしてしまって関係が崩れるのを恐れているのかもしれない。
 そう考えて我慢して付き合ってやっていたが、さすがに祐介もかなりストレスである。


「お兄ちゃん、もういい加減にしてよ!」

 ある日の夕食時、陸斗がまた「祐ちゃん、僕の隣に座って」と言った時、祐介の我慢は限界に達した。

「もう何なの!? お兄ちゃんしつこい、嫌い!!」

 祐介はそう叫び、席を立って食堂を飛び出した。
 食堂にいた他の寮生たちも、突然の出来事に驚き、静まり返ってしまう。

「祐くん!」

 陸斗は呆然と立ち尽くす。
 アキラは何も言えず、ただその場にいた。
 近くにいた瑞輝がすかさず祐介を追いかけるのが見えた。
 陸斗はハッとして祐介を追いかけようとする。

「待てよ。今追いかけるのは余計に祐介を怒らせる。少し落ち着いてから……」

「アキラには関係ないだろ!」

 引き止めるアキラの手を陸斗は振り払ってしまった。

「……そうかよ。確かに関係ないよな」

 アキラは眉間にシワを寄せて溜息を吐く。
 陸斗はやってしまったと後悔した。
 しかし、祐介が変態に追いかけられているのは心配だ。
 だが、ここでアキラを置いていっては取り返しのつかない溝になりそうだった。

「アキラ、僕はアキラが好きだ!! しかし、弟が変態に追いかけ回されているのを見過ごせない! すまん!! 話は後で、愛してる!!!」

 陸斗はもはや我を忘れて叫ぶと、祐介を追いかけて行った。

 残されたアキラはポカーンとしてしまう。
 周りにいた寮生達もポカーンとしていた。

 男子寮ではよくあることなのだろうか。
 律と悠真に加え、アキラと陸斗まで……。
 うちの学校はどうなっているんだと思いながらも、みんな見て見ぬふりをすることにした。





 あてもなく走った祐介は、近くの公園にいた。
 ハァハァと息を切らす。

「祐介くん」

 祐介の名前を呼んだのは瑞輝である。

「瑞輝くん……見てたんだね。驚かせてごめん。心配して追いかけて来てくれたんだね」

 振り向いた祐介は困ったような表情を瑞輝に見せた。
 瑞輝は申し訳ない気持ちでいっぱいである。
 陸斗と祐介を仲違いさせる気なんて一切なかったのだ。
 それもこれも全部自分が祐介のストーカーをしてしまう変態なのが悪い。

「祐介くんごめん。陸斗くんは悪くないんだよ。全部、僕のせいなんだ……」

 瑞輝は今にも泣き出しそうな表情で、祐介に頭を下げる。
 祐介は意味が分からない。

「何で瑞輝くんのせいなの??」

 祐介が発したのはもっともな疑問である。

「僕は祐介くんを変な目で見ていて、実は君のストーカーなんだ。写真をいっぱい撮ってコレクションしている変態野郎なんだよ」

「え??」

 唐突な瑞輝の告白に祐介は驚いてしまう。

「だから陸斗くんは君を守ろうとしていただけなんだ」

「そ、そうなんだ?」

 必死に説明してくれる瑞輝であるが、祐介は頭が追いついていない。


「祐くーーん!!!」

 そこへ追いかけてきた陸斗が合流する。

「瑞輝! 祐くんに変なことしてないだろうな!!」

 すぐに祐介を庇う陸斗。

「お兄ちゃん、僕は別に瑞輝くんに変なことされてないよ」

 変なことは言われたが。

「良かった祐くん。ごめんね。でも、お兄ちゃんは祐くんが心配なの」

「うん、分かった。でも、僕はもう高校生で自分の身ぐらい自分で守れるから、お兄ちゃんも自分のことを考えて欲しいな」

 陸斗は泣きながら祐介にしがみついている。
 祐介は苦笑して陸斗の肩を叩いた。

「えっと、瑞輝くんもよく分からないけど、僕のストーカーさんなんだね。えっと、普通にお話して欲しいな。僕は瑞輝くんも友達だと思ってたんだけど、違う?」

 祐介は瑞輝に対してまだ戸惑っていた。

「僕、祐介くんの友達なんだね! 嬉しいな。君は僕の天使だ!」

「僕、普通に人間なんだけど……」

 祐介はとりあえず、握手でもと手を差し出す。
 瑞輝は嬉しそうに祐介の手を優しく両手で握り締めるのだった。

 陸斗は複雑な様子で瑞輝を睨む。

「絶対に変なことしたり言ったりするなよ!」

 そう、牽制するのだった。
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