魔王が転生して来た

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 高瀬は早く帰れる日が続いていた。
 
「今夜、ディナーにでも行きませんか?」

 朝、高瀬に作った弁当を渡すと、マオは何かに誘われた。
 ディナーって何だ?
 ああ、ゲーム用語か。

「どんな所にでも着いていくぞ!」
 
 マオは拳を握ってやる気満々である。
 なんか反応が変だと高瀬は思った。
 
「もしかしディナーは解らない感じですか?」

 昼ドラとかよく見ているみたいなので、知っていると思ったのだけど。

「ゲーム用語だと推測した」
「あ、違います。夜、晩ごはんを食べに出かけましょうと言っています」
「わざわざ晩ごはんを食べに出かけるのか? 夜にするピクニックか? 夜になるとディナーになるのか?」

 マオは頭の中に沢山のハテナが浮かんでいる様子だ。
 マオは本当に物知りになったと思ったり、急に何故これが解らないの? みたいな現象に陥る。

「えっと、お洒落なレストランで夜景でも眺めながらお話しする感じなんですけど……」
「ああアレか! よく男が女に指輪を渡して結婚してくれとか言っている場所!」
「それです」

 マオの昼ドラ知識が炸裂したらしい。

「え、おま、俺に指輪を……」
「ち、違います! 確かにプロポーズの定番ですけど、普通に夜景を楽しみながら食事したいだけですよ!」

 マオにプロポーズする気はない。
 指輪も用意していない。
 
「よく解らんな。お前の部屋から外を見て食事するのと変わらん気がする」

 高瀬の部屋は高層で景色も良い。 
 よくマオはテレビを見て思っていた。
 この飯食べてるお洒落な場所、高瀬の部屋じゃないかって。

「いや、変わりますよ! ここじゃ毎日同じ風景じゃないですか」
「お、おう。解ったよ。何か準備する事は有るのか?」
「いえ、逆に今夜は夕食の準備をせずに待っていて欲しいです」
「うん、解った」

 マオは何が良いのかよく解らなかったが、高瀬がそこまで言うならと頷く。
 マオ的にはそんな畏まった所で飯を食って何が楽しいのだろうと思うのだが。
 どうせならいつもの様に夕食とお風呂を済ませたら一緒にゲームを進めたりしたかった。
 
「じゃあ行ってきます!」
「ああ、気をつけてな。頑張れよ」

 マオは高瀬を笑顔で見送る。
 高瀬も意気揚々と仕事に出るのだった。

 さて、高瀬を見送ったし、昼まで本でも読むかぁと、マオは本棚から高瀬セレクトの小説を手に取る。

 それにしても、なにも用意しなくて良いと言っていたが、フォーマルな服なんかも着なくて良いのだろうか。
 ああ言う場所にはそれ相応の服装が有るのでは無いだろうか。
 昼ドラでも皆同じような服を着ていたような。
 確かあれだ。TPOとか言うやつだ。
 良いのだろうか。
 俺は持ってないし、どうしようも無いのだが、浮くのでは?
 マオはよく解らないが、多分、高瀬に任せておけば間違いないだろう。
 うん。
 マオは読書に集中する事にするのだった。
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