BL同人誌を本人に見つかってしまった

甘塩ます☆

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 お風呂に入り、歯磨きを済ませて玄関を出る。
 雨は止みそうにない。
 傘をさして隣の家まで急いだ。
 風も強くて少しだけだったというのに割とびしょ濡れだ。
 せっかく風呂に入ったのに……

「こんばんわー」
「タマ! びしょ濡れじゃないか!」

 慌てて出てきた月さんはタオルで俺の頭や腕を拭いてくれる。
 月さんも風呂上がりなのかな。
 ホカホカしていて、いい匂いがする。
 シルクのナイトガウン姿がセクシーだ。

「上がって、着替えを用意するよ」
「そんな、直ぐに乾きますよ」

 濡れたと言っても、衣類は気になる程ではない。
 足元と腕や髪が濡れただけだ。

「僕の服を貸すね、あと、ドライヤーしよう」

 月さんは俺の手を引いて月さんの寝室まで連れていく。
 なんだかドキドキしてしまう俺を他所に、予備のだろうか月さんが着ているものと同じナイトガウンを貸してくれた。

「着替えていて」

 月さんはそう言うと、俺を残して一旦部屋を出ていく。
 ドライヤーを取りに行ったのだろう。
 月さんは本当に面倒見が良い。
 お言葉に甘えてナイトガウンに着替えた。
 月さんには似合うだろうが、俺にはちょっと大人すぎる気がする。
 そして大きい。

「よく似合っているよ」

 戻ってきた月さんは取ってつけたような事を良いながら、俺をベットに座らせた。
 やはり、ドライヤーを持ってきてくれた。
 隣に腰掛けると、ワシャワシャと慣れた手付きで髪を乾かしてくれる。
 いままで付き合ってきた女性、もしくは男性にもこんな事をしてあげていたのだろうか。
 不意にそんな事を思うと何だか胸が痛い気がした。

「うん、乾いたかな。タマの服は乾燥機にかけてくるね」
「ご丁寧に、何から何までと有難うございます」

 脱いだ服を抱えていた俺に、月さんはそう言って服を持っていく。
 俺も月さんの後について月さんの寝室を出た。

「ソファーに座ってて」

 月さんは俺をソファーに座らせ、服を乾燥機に入れた後、ココアを入れてくれた。

「歯磨きしてきてしまいました……」
「また磨けばいいよ。歯ブラシの予備ぐらいあるから。体を温めよう」

 月さんは俺が風邪を引いてしまわないか心配してくれている様子だ。
 完璧に子供扱いの気がする。
 何だかムッとなる。

「月さんは本当に俺を恋人にしたいと思ってるんですかねぇ……」

 やっぱりからかわれたのかも。

「僕を振っておいて、そういう事を言うんだ? 悪い子だね」

 耳で囁かれてハッとなる。

「俺、声に出してましたか?」

 思ってるだけのつもりだったのに。
 これじゃあ俺が拗ねてるみたいじゃないか。
 いや、拗ねてるのか? 俺。

「僕、タマの事諦めた訳じゃないからね」
「え?」

 月さんの方を見ると、思いの外すぐ側に月さんの綺麗な顔があってビックリしてしまう。

「僕にだって考えがある」
「考えとは?」
「言えないね」

 フフンと、笑って見せる月さん。
 何か怖いなぁ。
 思わず顔を反らした。
 俺の顔は多分、茹でダコのごとく真っ赤だろう。

「でも、僕は紳士さ。タマにその気が無いのに二人っきりだからってエッチな事をしたりしないよ? したい事は同人誌でさせるから安心してね!」
「全然安心出来ません」

 それに月さん、俺にキスしてたもん!
 キスってエッチな事だよね?
 それに今だって俺を抱きしめているじゃないか。
 嫌じゃないけど。
 むしろ嬉しいけど。

 ランランランラン♪

 月さんの携帯から明るい着信音が流れる。

 月さんが俺から離れて携帯を取った。
 何かちょっと寂しい。
 今の着信音は雪那さんだ。

「もしもし、雪那? え? 泊まるの?
明後日には帰ってくるんだね? 解った。スケジュール調整しとくけど。大丈夫?
なんか、涙声じゃない? タマに替わろうか?」

 月さんの電話の相手ははやり雪那さんの様だ。
 月さんがオロオロしている。
 なんか口調が不穏だ。
 俺も不安になる。

「タマ、雪那を慰めてあげて」

 月さんからスマホが渡される。
 雪那さんはお泊りらしいが、泣いているって?
 俺もオロオロしつつ、スマホを受け取る。

「もしもし、雪那さん?」
『タマ~』

 本当に涙声なんだが、雪那さんどうしたんだ?
 大丈夫なのか?

「ど、どうしたんですか?」
『雷が鳴ってて怖いだけだ。ヒエっ!』

 ゴロゴロと、いう音にビクビクしている雪那さん。
 雪那さん、雷が苦手なのか。
 本当に素顔は幼女みたいな人である。
 ギャツプが凄いな。
 逆に普段スパダリを演じているのか。

『今日は帰れないから、月の事を宜しく頼む。でも、襲われると悪いから家に帰ってくれ~ギャァァァ!!』
「雪那さん大丈夫ですか?」

 雪那さんは月さんと俺を心配してくれている様子だが、どう考えても雪那さんが大丈夫じゃない。
 声がすごく震えているし、すごい悲鳴を上げている。

『停電した。駄目だ怖い~帰りたい』
「大丈夫ですよ落ち着いて下さい」
『今日が俺の命日になるかも知れん』
「そんな訳ないじゃないですか」

 雪那さんはブルブル震えていそうである。
 雷関係なく気絶しそうな勢いだ。

「雪那、大丈夫そう?」
「駄目そうです」
「僕が今から迎えに行こうか」
「今からですか?」

 すごく心配そうな月さん。
 月さんほ方がやっぱりスパダリだよな。
 雪那さんが居る山小屋はここから一時間ぐらいの場所らしいが、雨が凄いし雷も鳴っている。
 夜道だし、迎えに行くのは危険だろう。

『うう、俺、頑張る。二人とも心配しないでくれ。また明日なー』
「ああ、雪那さん……」

 雪那さんは片言の様に言うと通話を切ってしまった。
 本当に大丈夫なのか心配過ぎる。

「雪那、切ったの? やっぱり僕が迎えに行こうか」
「いや、この雨ですし、危険過ぎますよ」

 俺と月さんはオロオロしてしまう。
 雪那さんからメッセージが入った。

『タマが雪月を描いてくれたら頑張れそう』

 なんか、雪月を催促された。
 勿論、描くけど。

 俺は直ぐにPCを立ち上げた。
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