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33話
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春岳が直ぐに帰って来たので、予定通りに今日から勉強して頂く事にする伊吹。
「今日は和歌の読み方、書き方を習って頂きます」
伊吹は呼び寄せた講師を春岳に紹介した。
「和歌は、交流にも恋文を送る為にもにも用いるので、必修です」
伊吹はそう説明し、側に控えて二人の様子を伺う事にした。
春岳は講師の話を良く聞いて、和歌を読む。
「殿は字もお上手で、直ぐに和歌をお作りになられますね」
講師は春岳を褒め称えている。
和歌のお勉強は問題な無さそうだ。
午前中は和歌の勉強をし、昼食を取った後は剣術の稽古をつける事になった。
「忍術なら得意ですが、剣術となると触った事も有りませんので扱えるか不安ですね」
「でしたら木刀から」
剣術は伊吹が直接教える事にした。
「脇差しならば扱えますけどね」
目にも止まらなぬ速さで脇差し抜き、手で遊ばせて見せる春岳。
「お見事です。脇差しがそれほど扱えるならば護身は大丈夫ですね」
「私、忍者なので。忍者は戦う事より逃げる事が大事になってくるので護身術は全て身に付けていますよ」
「私が忍術を殿から習うべきでしょうか?」
首を傾げる伊吹。
「忍術は奥が深いですよ。教えて欲しいのならば教えまが、護身術等役に立つと思いますし」
「でしたら後日お願いします。今日は私が剣術の稽古を付けますね」
伊吹は春岳に木刀を持たせると、形のとり方から教えるのだった。
春岳は姿勢も良いし、足の運びも上手い。
剣術も直ぐに形になるだろう。
日暮れまで剣術を教え、伊吹は春岳に湯浴みをさせる。
千代が夕餉を作って待っていてくれた。
伊吹が倒れた事を家臣たちが心配し、早馬を走らせてくれたらしく、実家や村の家に帰っていた小姓や女中達が数人帰って来てくれていた。
「人手が増えて大助かりでした」
千代もニコニコしている。
「殿、色小姓も何人か戻ってまいりましたし、好みの者がおりましたら閨に誘って下さい」
伊吹が春岳に耳打ちする。
「私、色小姓は好きません」
昨夜話したのだが……
やはり覚えて無い様だな。
ホッっとする春岳。
では、なぜちょっと態度がキツかったのだろうか。
虫の居所でも悪いかったのか?
「女中も戻って来ましたので命じればよろしいかと」
「結構です」
春岳はムッとしつつも、夕餉を口に入れる。
伊吹から色小姓や女中を勧められるのは、本当に面白くない春岳である。
毒味もしてない食事をパクパク食べる春岳だが、伊吹は何も言わなかった。
もう言っても聞かないので伊吹も諦めているのだ。
それに伊吹も春岳の能力の高さを嫌と言うほど解らされた。
出来ない事とか無さそうである。
剣術だけでも教えられて良かったが、直ぐに春岳の方が上手くなるだろうと思う伊吹だ。
それにしても……
我が殿は、もしや勃起障害の様な病気が有るのだろうか。
伊吹は心配である。
世継ぎは作れるのだろうか。
心配であるが、おいそれと聞くわけにも行かず、伊吹は大人しく春岳の食事を見守るしか無いのだった。
殿は結構だと言うが、好みの者が解らないだけかも知れないし、適当に選んで送り込んでみるしか無いだろうか。
頭を悩ませる伊吹だ。
「今日は和歌の読み方、書き方を習って頂きます」
伊吹は呼び寄せた講師を春岳に紹介した。
「和歌は、交流にも恋文を送る為にもにも用いるので、必修です」
伊吹はそう説明し、側に控えて二人の様子を伺う事にした。
春岳は講師の話を良く聞いて、和歌を読む。
「殿は字もお上手で、直ぐに和歌をお作りになられますね」
講師は春岳を褒め称えている。
和歌のお勉強は問題な無さそうだ。
午前中は和歌の勉強をし、昼食を取った後は剣術の稽古をつける事になった。
「忍術なら得意ですが、剣術となると触った事も有りませんので扱えるか不安ですね」
「でしたら木刀から」
剣術は伊吹が直接教える事にした。
「脇差しならば扱えますけどね」
目にも止まらなぬ速さで脇差し抜き、手で遊ばせて見せる春岳。
「お見事です。脇差しがそれほど扱えるならば護身は大丈夫ですね」
「私、忍者なので。忍者は戦う事より逃げる事が大事になってくるので護身術は全て身に付けていますよ」
「私が忍術を殿から習うべきでしょうか?」
首を傾げる伊吹。
「忍術は奥が深いですよ。教えて欲しいのならば教えまが、護身術等役に立つと思いますし」
「でしたら後日お願いします。今日は私が剣術の稽古を付けますね」
伊吹は春岳に木刀を持たせると、形のとり方から教えるのだった。
春岳は姿勢も良いし、足の運びも上手い。
剣術も直ぐに形になるだろう。
日暮れまで剣術を教え、伊吹は春岳に湯浴みをさせる。
千代が夕餉を作って待っていてくれた。
伊吹が倒れた事を家臣たちが心配し、早馬を走らせてくれたらしく、実家や村の家に帰っていた小姓や女中達が数人帰って来てくれていた。
「人手が増えて大助かりでした」
千代もニコニコしている。
「殿、色小姓も何人か戻ってまいりましたし、好みの者がおりましたら閨に誘って下さい」
伊吹が春岳に耳打ちする。
「私、色小姓は好きません」
昨夜話したのだが……
やはり覚えて無い様だな。
ホッっとする春岳。
では、なぜちょっと態度がキツかったのだろうか。
虫の居所でも悪いかったのか?
「女中も戻って来ましたので命じればよろしいかと」
「結構です」
春岳はムッとしつつも、夕餉を口に入れる。
伊吹から色小姓や女中を勧められるのは、本当に面白くない春岳である。
毒味もしてない食事をパクパク食べる春岳だが、伊吹は何も言わなかった。
もう言っても聞かないので伊吹も諦めているのだ。
それに伊吹も春岳の能力の高さを嫌と言うほど解らされた。
出来ない事とか無さそうである。
剣術だけでも教えられて良かったが、直ぐに春岳の方が上手くなるだろうと思う伊吹だ。
それにしても……
我が殿は、もしや勃起障害の様な病気が有るのだろうか。
伊吹は心配である。
世継ぎは作れるのだろうか。
心配であるが、おいそれと聞くわけにも行かず、伊吹は大人しく春岳の食事を見守るしか無いのだった。
殿は結構だと言うが、好みの者が解らないだけかも知れないし、適当に選んで送り込んでみるしか無いだろうか。
頭を悩ませる伊吹だ。
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