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44話
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「殿は交わる方法を知らず、それで恐がっておいでなのでは?」
先日、友好的な城の城主から贈られて来た有理がそんな事を言い出す。
有理も殿に気に入って貰える事は無く、追い返された。
今は千代のお手伝いをさせている。
「春画等は買い与えたぞ」
「殿は頭の良い方なので知識は有るでしょうが、実戦経験が無く、怯えておいでなのでは無いですか?」
「なるほど……」
有理の言葉に一理有る様に思えた。
何処の城の殿も、初めては乳母に手取り足取り教えてもらうと言うが、そうなると教しえるのは俺の母と言う事になるか。
それだって幼い頃から面倒を見て気心知れているから安心して身を任せられるというものだろう。
殿には生憎そういう女性は居ない。
やはり、もう少し様子を見た方が良いのだろうか。
「何方にしろ、嫌がる殿に無理強いするのは悪手ですね。より嫌悪感が増してしまう気がします」
「そうだな。解った。暫く殿にそう言った話をするのは避けよう」
「それが宜しいかと」
「助言、助かったぞ」
伊吹は有理の頭を撫でる。
何だか可愛い妹がもう一人増えた様で、伊吹は嬉しい。
「伊吹様どうなんでしょう?」
「俺?」
まさか矛先が此方に向くとは思わず、伊吹は驚く。
「伊吹様も色小姓を閨に呼ばれませんよね?」
「ああ、殿がなさらないのに俺がすると言うのも……」
「それがどうかと思います」
「そ、そうだろうか?」
主がやらない事を自分がするのは変だと思ったのだが、そもそも遊びでそう言う事をするのは好かんのだ。
「ええ、そうですよ。よく考えて下さい。自分の事は棚に上げで殿にばかり女や色小姓と遊べと言われるのはどうなんでしょうか」
「う、うむ……」
「寧ろ伊吹様が率先してし、こんな風に良かったので殿もどうかと薦めた方が、殿も乗り気になるのでは?」
「な、なるほど……」
確かに、それも一理有るように思える。
自分は遊びで女や色小姓と交わりたくないと言いつつ、殿には遊べ遊べと言うのは、確かおかしな話であった。
それに自分も女との経験や色小姓との経験は無い。
確かに、これで殿にばかり言うのもどうなんだ。
「伊吹様はご自分にも恋文が届いておりますが、それも突っぱねておいでではないですか」
「そうだな……」
それも殿が妻を娶らないうちに自分が妻を娶ると言うのもどうかと思ったのだが……
同じ事だったかも知れない。
「では、俺が率先して色小姓を閨に呼び、恋文等を遣り取りした上、妻を娶れば良いのか?」
「まぁ、そちらの方が、棚上げには成らないので良いかと思いますね。不躾に意見してしまい、申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる有理。
「そうか有理。よく言ってくれた。目から鱗だったぞ」
もう一度有理の頭を撫でる伊吹だ。
よく言ってくれた。
伊吹に意見をくれる他の家臣は珍しいので、意見をくた有理は有り難く、それに的確な事を言ってくれたと思う。
伊吹は有理に感謝した。
先日、友好的な城の城主から贈られて来た有理がそんな事を言い出す。
有理も殿に気に入って貰える事は無く、追い返された。
今は千代のお手伝いをさせている。
「春画等は買い与えたぞ」
「殿は頭の良い方なので知識は有るでしょうが、実戦経験が無く、怯えておいでなのでは無いですか?」
「なるほど……」
有理の言葉に一理有る様に思えた。
何処の城の殿も、初めては乳母に手取り足取り教えてもらうと言うが、そうなると教しえるのは俺の母と言う事になるか。
それだって幼い頃から面倒を見て気心知れているから安心して身を任せられるというものだろう。
殿には生憎そういう女性は居ない。
やはり、もう少し様子を見た方が良いのだろうか。
「何方にしろ、嫌がる殿に無理強いするのは悪手ですね。より嫌悪感が増してしまう気がします」
「そうだな。解った。暫く殿にそう言った話をするのは避けよう」
「それが宜しいかと」
「助言、助かったぞ」
伊吹は有理の頭を撫でる。
何だか可愛い妹がもう一人増えた様で、伊吹は嬉しい。
「伊吹様どうなんでしょう?」
「俺?」
まさか矛先が此方に向くとは思わず、伊吹は驚く。
「伊吹様も色小姓を閨に呼ばれませんよね?」
「ああ、殿がなさらないのに俺がすると言うのも……」
「それがどうかと思います」
「そ、そうだろうか?」
主がやらない事を自分がするのは変だと思ったのだが、そもそも遊びでそう言う事をするのは好かんのだ。
「ええ、そうですよ。よく考えて下さい。自分の事は棚に上げで殿にばかり女や色小姓と遊べと言われるのはどうなんでしょうか」
「う、うむ……」
「寧ろ伊吹様が率先してし、こんな風に良かったので殿もどうかと薦めた方が、殿も乗り気になるのでは?」
「な、なるほど……」
確かに、それも一理有るように思える。
自分は遊びで女や色小姓と交わりたくないと言いつつ、殿には遊べ遊べと言うのは、確かおかしな話であった。
それに自分も女との経験や色小姓との経験は無い。
確かに、これで殿にばかり言うのもどうなんだ。
「伊吹様はご自分にも恋文が届いておりますが、それも突っぱねておいでではないですか」
「そうだな……」
それも殿が妻を娶らないうちに自分が妻を娶ると言うのもどうかと思ったのだが……
同じ事だったかも知れない。
「では、俺が率先して色小姓を閨に呼び、恋文等を遣り取りした上、妻を娶れば良いのか?」
「まぁ、そちらの方が、棚上げには成らないので良いかと思いますね。不躾に意見してしまい、申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる有理。
「そうか有理。よく言ってくれた。目から鱗だったぞ」
もう一度有理の頭を撫でる伊吹だ。
よく言ってくれた。
伊吹に意見をくれる他の家臣は珍しいので、意見をくた有理は有り難く、それに的確な事を言ってくれたと思う。
伊吹は有理に感謝した。
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