47 / 79
46話
しおりを挟む
一方、春岳はと言うと、自分の預かり知らぬ所で伊吹と千代と有理の三人で初めてから乱交しようなどとブッ飛んだ話をしてるとは露にも思わず、一人で薬草つみに出かけていた。
秋にもセンブリや柿、ドクダミ等、色々な薬草が摘める。
紅葉も楽しめ、春岳はルンルン気分で散策を楽しんでいた。
一応、田方城の持ち山で有っても、広い山なので、手つかずで人が踏み入った事の無い場所は多い。
伊吹には立ち入ってはいけないと注意はされているが、好奇心旺盛である春岳が言う事を聞く訳がなく、未開の土地散策するのが日課になってしまった。
そろそろ初雪の頃である。
冬は何処の城でも忙しいので、客人は来ないし、田方城も雪囲いや冬の準備で忙しい。
春岳の面倒を見るより適当に散歩でもしてもらった方が気が楽なのか、最近は「薬草積みに行ってきます」と、伝えれば、伊吹は着いて来ると言う訳でもなく「お気をつけて」と、見送ってくれるだけになった。
言っても聞かない春岳にもう諦めていると言う方が正しいだろう。
特に、この前の戦の時に活躍した事や、つい最近、山で熊に出くわしたが、素手で倒して持ち帰ったりしたので、伊吹も、もうコイツは化け物だなって思ってたりするのかもなぁ。
なんて思う春岳だ。
採れたての熊肉は美味しいから喜ぶと思ったのだが、熊肉は美味しく食べてくれたけど、結構引かれていた。
熊肉なんて珍味なんたぞ!
めったに食べられるものじゃないんだぞ!
そう伊吹に聞いたら「私はやはり猪が良いですね」なんて苦笑されてしまった。
猪ならいくらでも取ってやるけどな。
「あ、凄い!」
春岳は立派な猿の腰掛けを見つけ、目を輝かせるのだった。
春岳は薬草やら、キノコやら、たまたま見つけた猪を手土産に城に戻る。
ちゃんと門限は守っているぞ。
「おかえりなさいませ殿。これまた大量ですね」
フフっと笑う伊吹。
「はい、いっぱい取れました。この猪は伊吹へのお土産です。あとで鍋にして食べましょう」
「あ、有難うございます……」
迂闊に猪が良いなんて言ってしまった事を、伊吹は後悔していた。
嬉しいが、猪も好きだが、最近は散歩に出かける度に猪を捕まえて来ては手料理して下さる。
薬味等をつけてくれて、本当に美味しいのだが、これでは何方が主で何方が家来なのか解ったものでは無い。
殿が楽しそうにしているので、良いのだけど……
「湯浴みなさいますか?」
「そうですね。これを台所に置いてきます」
「はい、私はお着替えの準備をしておきます」
伊吹はそう言うと、春岳の着替え取りに向かう。
以前までは荷物も私が私がと言っていたが、最近では分担を受け入れてくれる伊吹。
こっちの方が春岳としても気が楽なので有難たい。
だけどちょっと構ってくれる回数が減って寂しかったりする。
自分でも我儘だよなとは思うものの、自分を構わない分、千代や有理を構ってしまうのも嫌なのだ。
台所に行くと、千代と有理が夕餉の支度をしていた。
最近は朝も昼も夜も千代と有理で作っている様子だ。
「殿、おかえりなさいませ。これはまた立派な猪とキノコですね」
千代が此方に気付いて寄ってくる。
有理は頭を下げるだけで留めた。
千代は慣れた様子だが、有理にはまだ怖がられているのだろう。
此方としても、千代は伊吹のお気に入りでは有るが節度を持っているのでまだ可愛げがあると思えるが、有理は来たばかりだと言うのに伊吹に甘えまくりだし、伊吹もまた猫可愛がりしているので憎たらしく見える。
「後で鍋にしようと思います。ここに置いておいてください」
「はい、私も流石にこのままの猪をさばく事は出来ませんので殿にお任せします」
「ええ、頼みます。あ、そうだ自然薯を取ってきましたので、好き様に使って下さい」
「え!? 私達にですか? 有難うございます」
まさか春岳が自分たちの為に自然薯を取ってきてくれるとは。
ビックリする千代。
頭を下げて受け取る。
春岳はフフっと微笑んでからお風呂に向かうのだった。
この時は割と機嫌が良かった春岳である。
秋にもセンブリや柿、ドクダミ等、色々な薬草が摘める。
紅葉も楽しめ、春岳はルンルン気分で散策を楽しんでいた。
一応、田方城の持ち山で有っても、広い山なので、手つかずで人が踏み入った事の無い場所は多い。
伊吹には立ち入ってはいけないと注意はされているが、好奇心旺盛である春岳が言う事を聞く訳がなく、未開の土地散策するのが日課になってしまった。
そろそろ初雪の頃である。
冬は何処の城でも忙しいので、客人は来ないし、田方城も雪囲いや冬の準備で忙しい。
春岳の面倒を見るより適当に散歩でもしてもらった方が気が楽なのか、最近は「薬草積みに行ってきます」と、伝えれば、伊吹は着いて来ると言う訳でもなく「お気をつけて」と、見送ってくれるだけになった。
言っても聞かない春岳にもう諦めていると言う方が正しいだろう。
特に、この前の戦の時に活躍した事や、つい最近、山で熊に出くわしたが、素手で倒して持ち帰ったりしたので、伊吹も、もうコイツは化け物だなって思ってたりするのかもなぁ。
なんて思う春岳だ。
採れたての熊肉は美味しいから喜ぶと思ったのだが、熊肉は美味しく食べてくれたけど、結構引かれていた。
熊肉なんて珍味なんたぞ!
めったに食べられるものじゃないんだぞ!
そう伊吹に聞いたら「私はやはり猪が良いですね」なんて苦笑されてしまった。
猪ならいくらでも取ってやるけどな。
「あ、凄い!」
春岳は立派な猿の腰掛けを見つけ、目を輝かせるのだった。
春岳は薬草やら、キノコやら、たまたま見つけた猪を手土産に城に戻る。
ちゃんと門限は守っているぞ。
「おかえりなさいませ殿。これまた大量ですね」
フフっと笑う伊吹。
「はい、いっぱい取れました。この猪は伊吹へのお土産です。あとで鍋にして食べましょう」
「あ、有難うございます……」
迂闊に猪が良いなんて言ってしまった事を、伊吹は後悔していた。
嬉しいが、猪も好きだが、最近は散歩に出かける度に猪を捕まえて来ては手料理して下さる。
薬味等をつけてくれて、本当に美味しいのだが、これでは何方が主で何方が家来なのか解ったものでは無い。
殿が楽しそうにしているので、良いのだけど……
「湯浴みなさいますか?」
「そうですね。これを台所に置いてきます」
「はい、私はお着替えの準備をしておきます」
伊吹はそう言うと、春岳の着替え取りに向かう。
以前までは荷物も私が私がと言っていたが、最近では分担を受け入れてくれる伊吹。
こっちの方が春岳としても気が楽なので有難たい。
だけどちょっと構ってくれる回数が減って寂しかったりする。
自分でも我儘だよなとは思うものの、自分を構わない分、千代や有理を構ってしまうのも嫌なのだ。
台所に行くと、千代と有理が夕餉の支度をしていた。
最近は朝も昼も夜も千代と有理で作っている様子だ。
「殿、おかえりなさいませ。これはまた立派な猪とキノコですね」
千代が此方に気付いて寄ってくる。
有理は頭を下げるだけで留めた。
千代は慣れた様子だが、有理にはまだ怖がられているのだろう。
此方としても、千代は伊吹のお気に入りでは有るが節度を持っているのでまだ可愛げがあると思えるが、有理は来たばかりだと言うのに伊吹に甘えまくりだし、伊吹もまた猫可愛がりしているので憎たらしく見える。
「後で鍋にしようと思います。ここに置いておいてください」
「はい、私も流石にこのままの猪をさばく事は出来ませんので殿にお任せします」
「ええ、頼みます。あ、そうだ自然薯を取ってきましたので、好き様に使って下さい」
「え!? 私達にですか? 有難うございます」
まさか春岳が自分たちの為に自然薯を取ってきてくれるとは。
ビックリする千代。
頭を下げて受け取る。
春岳はフフっと微笑んでからお風呂に向かうのだった。
この時は割と機嫌が良かった春岳である。
0
あなたにおすすめの小説
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
【完結済】スパダリになりたいので、幼馴染に弟子入りしました!
キノア9g
BL
モテたくて完璧な幼馴染に弟子入りしたら、なぜか俺が溺愛されてる!?
あらすじ
「俺は将来、可愛い奥さんをもらって温かい家庭を築くんだ!」
前世、ブラック企業で過労死した社畜の俺(リアン)。
今世こそは定時退社と幸せな結婚を手に入れるため、理想の男「スパダリ」になることを決意する。
お手本は、幼馴染で公爵家嫡男のシリル。
顔よし、家柄よし、能力よしの完璧超人な彼に「弟子入り」し、その技術を盗もうとするけれど……?
「リアン、君の淹れたお茶以外は飲みたくないな」
「君は無防備すぎる。私の側を離れてはいけないよ」
スパダリ修行のつもりが、いつの間にか身の回りのお世話係(兼・精神安定剤)として依存されていた!?
しかも、俺が婚活をしようとすると、なぜか全力で阻止されて――。
【無自覚ポジティブな元社畜】×【隠れ激重執着な氷の貴公子】
「君の就職先は私(公爵家)に決まっているだろう?」
全8話
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
王弟の恋
結衣可
BL
「狼の護衛騎士は、今日も心配が尽きない」のスピンオフ・ストーリー。
戦時中、アルデンティア王国の王弟レイヴィスは、王直属の黒衣の騎士リアンと共にただ戦の夜に寄り添うことで孤独を癒やしていたが、一度だけ一線を越えてしまう。
しかし、戦が終わり、レイヴィスは国境の共生都市ルーヴェンの領主に任じられる。リアンとはそれきり疎遠になり、外交と再建に明け暮れる日々の中で、彼を思い出すことも減っていった。
そして、3年後――王の密命を帯びて、リアンがルーヴェンを訪れる。
再会の夜、レイヴィスは封じていた想いを揺さぶられ、リアンもまた「任務と心」の狭間で揺れていた。
――立場に縛られた二人の恋の行方は・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる