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47話

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 一度お風呂で逆上せ、倒れた失態が尾を引いていた。 
 湯殿では、お守りとして中に入れて様子を伺わせてはくれるが、戸口に立たせて近寄らせて貰えない伊吹である。

 春岳は自分で身体を清めてしまう。
 
「伊吹」
「はい?」

 お話し相手はしてくれるので、嬉しい。

「今日も城内で変わった事は無かったですか?」
「ええ、今日も雪囲いや冬の準備に忙しい一日でした」
「そうですか。雪が降る前に皆で紅葉狩りに行きましょう」
「城からも紅葉なら見放題ですよ?」
「この前、ちょっと温泉を見つけてしまったんですよ。疲れを癒やすのに良いと思いまして」
「温泉ですか?」

 この山、温泉が湧いていたのか。知らなかった。

 自分が知らなかったと言う事は……

「殿、あれ程知らない場所に立ち入ってはいけないと言っておいたのに、入ったんですね!」
「あ、まぁ、気になったので……」
「迷われたらどうするおつもりですか」
「私、迷いませんし……」
「滑落なども心配です」
「どんな崖でも登り降りできますよ」
「ああ、もう! ああ言えばこう言いますね!」
「伊吹もああ言えばこう言います」

 ムスッとしてしまった伊吹に、春岳もムスッとしてしまう。

「私は、ただ紅葉狩りして温泉に入って、皆でお弁当でも食べられたらと思っただけなのに」
「それは…… お気遣い有り難いのですが。未踏の場所で有れば、恐らく殿しか行けませんよね」
「あ……」
 
 伊吹の指摘にハッとする春岳。
 確かに道無き場所であったし、足場も悪い。
 皆で行くのは厳しいか。

「じゃあ二人で行きませんか? とっても良い場所だったので伊吹にも見てほしいですし、疲れも取れると思うので……」
「そうですね…… 殿がそこまで言われるのでしたらお供致します」
「良かった」

 フフっと微笑む春岳につられ、伊吹もフフっと微笑み返すのだった。

 こうやっていつも流される伊吹だ。



 湯殿を上がると、夕餉を取る。

 夕餉は既に用意されていたので、猪鍋は明日にする事にした。
 夕餉が済んだら猪の処理をして、今夜は寝ようかなと、春岳は考えていた。

 本当ならば毎夜でも伊吹の所へ行きたいが、主が側付きの部屋に毎夜通うと言うのも目に付き過ぎる。
 その為、客人が来る日の夜や、七日程は我慢していた。
 あんまり頻繁に行って、性欲の抑えが効かないだらし無い下半身だと思われたくも無かった。

 伊吹が買ってくれた春画で伊吹を妄想して抜くのも割と楽しかったりする。
 伊吹が迷って薦められるままに買ってきてしまい、変な性癖だったり、獣姦なんて普通なら気持ちが悪くなる様なやつまで有ったりするのだが、伊吹で妄想すると何もを見ても興奮してしまうから困ったものだ。

 伊吹のせいで変な性癖に目覚めてしまいそうである。

 さて、今日は何で楽しもうかなぁ。なんて、考える春岳だった。
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