【完結】皇子に迫られて困っています。悪役令嬢ポジとか言われても、私は田舎で暮らしたいので

甘塩ます☆

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17話

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 今日から夏休みであるが、リリーは朝早く学園に来ていた。  
 花壇の水やりをしなければならないからである。
 リリーがしなくても学園の職員等がしてくれるであろうが、花壇の花は自分が植えたので、責任を持ちたい。
 夏休みでも同好会や、お茶会等は頻繁に開かれるので、学園の庭はわりと賑やかである。
 今も向こうでお茶会が開かれているとカロリーナに誘われていた。
 花の水やりを終えたら少しだけ顔を出そうと思う。

「おはようリリーちゃん」

 花の水やりしようとジョーロに水を入れていると声をかけられた。

「おはようございますサラスさん。サラスさんも同好会か何かですか?」
「ううん。リリーちゃんのお手伝い」

 サラスはそう言うと、水で一杯になったジョーロを持ってくれる。

「リリーちゃん手首を怪我してたでしょ」

 サラスはリリーが手首を怪我した事に気づいていた。ジョーロを花壇まで運び、水をかける。

「有難うございますサラスさん」

 本当は手首が痛くて水が入ったジョーロが持てるかあやしかったので、サラスが撒いてくれてリリーは助かった。

「リリーちゃんは頑張りやさんだね。でも無理はしないでね」

 水を撒き終わったサラスはジョーロを置くと、リリーの手首を掴む。

「えっ!?」

 急に痛めた手首を掴まれ驚く。強く握られた訳では無いので痛くはない。何だかポカポカして暖かい。
 
「私、実は少しだけ魔法が使えてね。ちょっとした怪我なら治癒魔法で治せるんだ。あまり頻繁には使えないんだけど……」
「え!? 魔法? 凄いです。え? 私、初めて見ました」
「どうかな?」
「わー、全然痛くないです! 凄い」

 サラスが手を離すと痛みは全く無くなっていた。

「僕が魔法を使える事は秘密だよ」
「はい、秘密ですね!」

 魔法が使えるなんて凄過ぎて、知られたら大変な事になってしまいそうだ。
 昔は魔法使いがそれなに居たと聞いた事は有る。サラスにはその血筋が流れているのだろうか。
 何方にしろ今では珍し過ぎる。
 人に知られると実験対象にしようと思う危険な輩に狙われる事も有りそうだ。
 だからこうしてひっそり隠れる様にしているのだろうか……

「私の事を信頼して下さっているんですね」

 こんな重大な秘密を暴露してまで私の手首の傷を直してくれるなんて。
 何だか感動して涙が出そうだ。

「私、リリーちゃんが好きみたい」
「え?」
「初めての感情でまだ良く解らないけど、多分好き」
「えっと、友人としてですか? それとも……」
「変な事言ってるね。リリーちゃんを困らせてしまってごめんね」
「いえ、私は凄く嬉しいです」

 戸惑いながら話しかけてくれるサラスに、リリーまで照れてしまう。
 まだ良く解らないと言うが、いつか答えが出るのだろうか。
 それが友人としてではない好きだったら……
 私は嬉しいかも。
 リリーは、自分の気持ちに気づいて顔を赤くしてしまう。

「そうだ。リリーちゃんはお茶会に顔を出すんだったね。ジョーロは私が片付けておくから。行って」
「えっ、えっと…… あの……」

 意識したら急に緊張しだしてしまうリリー。

「明日は空いてる?」
「はい、空いてます」
「明日も水やりするよね?」
「ええ」
「じゃあ、その後で私をお茶会に誘ってくれる?」
「はい、勿論です!」
「約束ね」
「はい、約束しました」

 フードで隠れているが口元が笑顔である。リリーもニコリと微笑んだ。
 
「じゃあ、また明日」
「はい、また明日」

 そう約束し、ジョーロを持っていくサラスを見送った。
 何か、急にドキドキしだす。
 私、サラスさんに恋をしてしまいました。
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