7 / 13
第七話
しおりを挟む
有澤裕也、28歳 独身
--昨日から桃奈咲良が頭から離れません。
◎◎◎
桃奈咲良の配信に出会った翌日、
俺は仕事中も桃奈咲良のことが頭からはなれなかった。
ーといっても、当たり前だと思う。
だって、桃奈咲良は妹にとても…というか本人だろうという声をしていた。
おまけに、アバター越しに妹特有の癖をいくつかみつけてしまったもんだ。
これで、次の日にはさっぱり忘れることができる兄なんて、もしいるのであれば教えてほしい。
「配信をみている感じ、嫌がっている感じはしなかったから大丈夫だと思うけどな…」
幼い頃の妹は、嫌なことがあるとわかりやすく声に出てしまう子だった事を思いだし、クスリと笑う。
まあ、社会人となった今ではなおっている可能性もあるから、それだけで嫌々やっているわけではない、と判断するのは早合点だ。
…って、いかんいかん。さっきから妹の事を考えているせいで仕事が手につかん!
とりあえず俺は気持ちを切り替えようと、コーヒーをがぶ飲みして、再びパソコンとにらめっこをはじめた。
-----
「そうか…もうプレゼン大会の時期か」
仕事中、目についたメールを見て思わず呟いた。
そう、俺の勤めている会社では、一年に一度全社員の中からランダムで選ばれた社員による、自社商品CMのプレゼン大会がある。
…といっても、あくまでプレゼン大会。
過去にはそのプレゼンから実際にCMの放映までいったものがあるらしいが、ここ数年は優秀賞は決められるものの、実現したものはない。
一部の社員からは意味がない、面倒だ、選ばれたくないといったネガティブな意見が囁かれているが、
社長曰く、定期的に自社商品と向き合える大切な機会だからやめるつもりはない、と言っていた。
まあ、でも対象者はランダムということもあって、選ばれるのは相当運が悪い人だ。
ちなみに俺は今まで選ばれたことはない。のだが…
「げ、俺の名前あるじゃん。」
メールの下の方に書かれていた、今年度の対象者欄に自分の名前があるのを見つけてしまい、思わず嫌そうな声が出てしまった。
「でも、そうと決まれば準備しないといけないよな…」
さっきは嫌な声を出してしまったが、決まってしまったものは仕方がない。
諦めて準備にとりかかるのが一番だ。
俺は過去のプレゼンがまとまっている資料を確認することにした。
といっても、そのプレゼン大会は全社員参加のテレビ会議で行われているため、ある程度は知っているのだが。
「そうそう。芸能人とか、動画サイトで活躍している人とかそういうのを使ったプレゼンしている人が多いんだよな~。」
ーここ数年は、どうせ実際にCMにならないだろう、といった気持ちの社員が多いのか、自分の好きな芸能人などを使ったプレゼンをしている人が多く見られる。
まあ、どうせやるなら楽しい方がいいもんな。気持ちはわかる。
「俺も桃奈咲良をつかって作ろうかな~」
社内プレゼンだし、実際にCMになることはないだろうから、妹にばれることだってない。
それに、今はどうしても桃奈咲良が頭から離れない。仕事と称して桃奈咲良の事を考えられるのは悪いことではないはずだ。
「よし、決まりだ。」
俺は、桃奈咲良をつかったプレゼンを作成することにした。
--昨日から桃奈咲良が頭から離れません。
◎◎◎
桃奈咲良の配信に出会った翌日、
俺は仕事中も桃奈咲良のことが頭からはなれなかった。
ーといっても、当たり前だと思う。
だって、桃奈咲良は妹にとても…というか本人だろうという声をしていた。
おまけに、アバター越しに妹特有の癖をいくつかみつけてしまったもんだ。
これで、次の日にはさっぱり忘れることができる兄なんて、もしいるのであれば教えてほしい。
「配信をみている感じ、嫌がっている感じはしなかったから大丈夫だと思うけどな…」
幼い頃の妹は、嫌なことがあるとわかりやすく声に出てしまう子だった事を思いだし、クスリと笑う。
まあ、社会人となった今ではなおっている可能性もあるから、それだけで嫌々やっているわけではない、と判断するのは早合点だ。
…って、いかんいかん。さっきから妹の事を考えているせいで仕事が手につかん!
とりあえず俺は気持ちを切り替えようと、コーヒーをがぶ飲みして、再びパソコンとにらめっこをはじめた。
-----
「そうか…もうプレゼン大会の時期か」
仕事中、目についたメールを見て思わず呟いた。
そう、俺の勤めている会社では、一年に一度全社員の中からランダムで選ばれた社員による、自社商品CMのプレゼン大会がある。
…といっても、あくまでプレゼン大会。
過去にはそのプレゼンから実際にCMの放映までいったものがあるらしいが、ここ数年は優秀賞は決められるものの、実現したものはない。
一部の社員からは意味がない、面倒だ、選ばれたくないといったネガティブな意見が囁かれているが、
社長曰く、定期的に自社商品と向き合える大切な機会だからやめるつもりはない、と言っていた。
まあ、でも対象者はランダムということもあって、選ばれるのは相当運が悪い人だ。
ちなみに俺は今まで選ばれたことはない。のだが…
「げ、俺の名前あるじゃん。」
メールの下の方に書かれていた、今年度の対象者欄に自分の名前があるのを見つけてしまい、思わず嫌そうな声が出てしまった。
「でも、そうと決まれば準備しないといけないよな…」
さっきは嫌な声を出してしまったが、決まってしまったものは仕方がない。
諦めて準備にとりかかるのが一番だ。
俺は過去のプレゼンがまとまっている資料を確認することにした。
といっても、そのプレゼン大会は全社員参加のテレビ会議で行われているため、ある程度は知っているのだが。
「そうそう。芸能人とか、動画サイトで活躍している人とかそういうのを使ったプレゼンしている人が多いんだよな~。」
ーここ数年は、どうせ実際にCMにならないだろう、といった気持ちの社員が多いのか、自分の好きな芸能人などを使ったプレゼンをしている人が多く見られる。
まあ、どうせやるなら楽しい方がいいもんな。気持ちはわかる。
「俺も桃奈咲良をつかって作ろうかな~」
社内プレゼンだし、実際にCMになることはないだろうから、妹にばれることだってない。
それに、今はどうしても桃奈咲良が頭から離れない。仕事と称して桃奈咲良の事を考えられるのは悪いことではないはずだ。
「よし、決まりだ。」
俺は、桃奈咲良をつかったプレゼンを作成することにした。
0
あなたにおすすめの小説
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
殿下は私を追放して男爵家の庶子をお妃にするそうです……正気で言ってます?
重田いの
恋愛
ベアトリーチェは男爵庶子と結婚したいトンマーゾ殿下に婚約破棄されるが、当然、そんな暴挙を貴族社会が許すわけないのだった。
気軽に読める短編です。
流産描写があるので気をつけてください。
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
怒らせてはいけない人々 ~雉も鳴かずば撃たれまいに~
美袋和仁
恋愛
ある夜、一人の少女が婚約を解消された。根も葉もない噂による冤罪だが、事を荒立てたくない彼女は従容として婚約解消される。
しかしその背後で爆音が轟き、一人の男性が姿を見せた。彼は少女の父親。
怒らせてはならない人々に繋がる少女の婚約解消が、思わぬ展開を導きだす。
なんとなくの一気書き。御笑覧下さると幸いです。
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる