辺境令嬢は追放されても気にしない

オイモ

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「エルイース様!おはようございます!今日はどんなお話をしてくださるの」

朝の支度をしていると、リーリアが部屋に飛び込んできた。

「おはようリーリア。今日も元気ですね」

「昨日は途中で寝ちゃったんですもの。今日は最後まで聞くわ。ねーピッピ」

リーリアの言葉に使い魔はキュイキュイ返事を返した。

「そうだわ、朝食が出来たってエルイース様を呼んでくるように言われたの。一緒に行きましょう」

リーリアは私の手を掴んで引っ張っていった。

昨日はボルコフ卿の誘いに乗り、そのまま逗留している宿に泊まることになった。

夕食後、リーリアは頑張って私のこれまでの道中の話を聞いていたのだが、さすがに眠気には勝てず、途中で寝てしまった所を父のボルコフ卿に部屋まで運ばれていったのだった。

豪華な調度品の並ぶ部屋を抜けて行くと、
テーブルの上には朝食が並べられている所だ。
昨晩の夕食もそうだが、今日の朝食も豪勢でパンのいい匂いがしている。

ボルコフ卿とローレンスはもう席についていた。

「おはようございます、エルイース様。早速ですが、昨日大公に連絡した所、明後日お会いするそうです」

ローレンスほ私の顔を見るとにっこり笑って言った。

「本当ですか?!大公は多忙な方だと聞いていたが、そんなに早く会っていただけるとは…。ありがたい」

私は席に着きながら言った。
やはりこの男は大公と親しいのは本当のようだ。
昨晩の内にどうやってやり取りをしたのか気になるが、その知らせはありがたかった。

「大公閣下も気の早い、もう少し後でもよかろうに」

ボルコフ卿が読んでいた新聞から目を上げて言った。

「すぐに行動に移すところが大公の良いところですよ。ですのでこの後、ドレスの採寸を呼んでます。エルイース様、よろしいですか」

私は木苺のジャムとバターをのせたパンにかぶりついていたので返事が遅れた。

「…ド、ドレス?!ですか?いやいや、私は鎧姿で……、いや、あの皮の鎧ではなく、ちゃんとしたものを買っていきますので!ドレスは不要かと」

着慣れていないドレス姿で大公に会うのは気が引ける。

「いけません、大公は執務時間ではなくプライベートでお会いなさるそうですから。その時に鎧姿ですと失礼でしょう」

「そう…なのか??」

ドレスの採寸と聞くと気が重いが、朝食はどれも素晴らしく美味しかった。
私は籠に盛られたパンを制覇するのをあきらめ、腹八分目を心がける。
なにせこの後はドレスの採寸だ。いくら私がガサツとはいえ膨らんだお腹で採寸を受けるのは避けたいところだ。

「おや、ここにもあるのですね、この爆弾のような果物は」

卓上の器に盛られた果物の中に、出店で見かけたトゲトゲの果物を見つけた。

「それパイナップルって言うのよ。南の島で採れた果物なんですって」

リーリアが名前を教えてくれた。

「へぇ、パイナップルと言うのですか」

この山に囲まれたオルドアに、なぜはるか南の島で採れた果物があるのだろう、

「こちらにあるバナナもマンゴーも南の島から来た物たちですよ。さて、エルイース様はなぜこのオルドアに南の島の物がこれだけあるか疑問に思いませんか」

「ああ、それは思う。私の知っている限りオルドアにはそんな遠方のものは届かないはずだが」

大陸でもっとも険しい山に近いオルドアで
は、南の島の物が仮に届いても腐ってしまうか、とんでもなく高価になるだろう。

「大公が腐海を抜けられたのです」

「まさか、あの腐海を!?」

腐海はオルドアに唯一面した海だ。
その名の通り、魚など生物の住めない腐った海と、船を片っぱしから沈めてしまう恐ろしい魔物が巣くっているで有名だ。
それなので、今までは船を出すことはもちろん、そこから航海などできたはずはなく、ただ腐った海が広がっているだけだったのだ。

そこから船を出せるようになったとすれば、このオルドアの豊かな食材の多さにも合点がいく。

「腐海だけではなく、今やオルドアは様々な国と交易を結んでます。昔の最貧国と言われたオルドアとは訳が違いますよ」

最貧国オルドア、クレイシウス帝国と街道
で結ばれた7カ国の内、もっとも貧しかったのがこのオルドアだ。
険しい山脈が国の国土の大半を占め、農地は少なく、貿易しようにも大半の国からは遠いという場所の恵まれていない国だった。
私が、知っているオルドアとはそういう国だったのだが、

「パレードといい、栄えた街並みといい、私の知っているオルドアとは随分違うようです」

「その辺りのことは、大公に詳しくお聞きください。きっと貴女になら喜んで話してくれると思いますよ」

ローレンスが確信めいて言う。

「それは…どうなんだろう。腐海のあの魔物をどうやって倒してのかはぜひ聞いてみたいが…」

大船も沈めるという巨大な魔物が昔から腐海には巣食っていて、これまでオルドアはそれを倒そうと何人もの勇者を送り込んだが、ことごとく失敗していた。

(やはり噂されるドラゴンの力を使ったのだろうか)

その力とはどんなものだろう。大公のあの人間離れした髪と目の色を思い出す。

あの目に見つめられるのかと思うと、私は震えがくるのを感じた。

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